教科書の短歌

髪五尺ときなば水にやはらかき少女ごころは秘めて放たじ/与謝野晶子解説

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髪五尺ときなば水にやはらかき少女ごころは秘めて放たじ

与謝野晶子の『みだれ髪』から有名な短歌代表作品の現代語訳と意味、句切れと修辞、文法や表現技法などについて解説、鑑賞します。

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髪五尺ときなば水にやはらかき少女ごころは秘めて放たじ

読み: かみごしゃく ときなばみずに やわらかき おとめごころは ひめてはなたじ

作者と出典

与謝野晶子『みだれ髪』

現代語訳

五尺もあるこの髪を解いて水にひたすと、それはやわらかに水に漂う。そのように柔らかなおとめ心の恋の思いは、深く心に秘めて打ち明けまい

文法と語の解説

・五尺・・・約151.5センチのことだが、正確な長さではなく、長いことだろう

・ときなば… 完了の助動詞「ぬ」の未然形+接続助詞「ば」
連語 「…てしまったならば。…たならば。」
ここでの意味は「解いたならば」

「髪五尺」の後には「を」の助詞が省略されている

・「水にやわらかき」

・「少女」…「をとめ」と読ませているが、少女、子どもではなく、若い女性を差す

・はなたじ…「放つ (はなつ)」の未然形+接続助詞「じ」

・「じ」…《接続》動詞型活用語の未然形に付く。
〔打消の意志〕…するつもりはない。…ないようにしよう。するまい。

表現技法

・句切れはないが、「髪五尺を」の助詞を省いて、初句切れに似たインパクトを与える

・「髪五尺ときなば水に」までは、やわらかきをいうための、序詞(じょことば)で、水に解いた髪の柔らかさから、柔らかい乙女心を連想させるためのもの。

序詞は、和歌の古い技法のひとつ

・「ときなば水にやわらかき」は言葉がやや足りないが、水にうかんだ髪がふんわりとして流動的である視覚的な像を与えることで、「こころ」を比ゆ的に表している

・「じ」は打消しの意志なので、この歌に主語の「われ」はないが、作者自身のこころ、つまり胸の内の恋愛感情を指している

 




解説と鑑賞

この歌集のタイトルは『みだれ髪』である通り、黒髪を題材にした歌はいずれも強い印象を残すものとなっている。

「秘めてはなたじ」とストイックな心持ちと意志の強さを示しながら、同時に自身の髪の長さと美しさを誇示しているところがまず目につく。

「柔らかき少女ごころ」とはどのようなものかは想像するしかないが、上句に表現されているものは、むしろ秘められるがゆえに激しい恋愛の熱情だろう。

髪を解くということは、「放つ」とも同義であり、頭部に固く結い上げられていた髪が水に放つことで、放恣に広がってその豊かさを表すことになる。

「秘めてはなたじ」と最初に言いながら、実は、髪の解かれて水に浮くこのイメージは、奔流のような恋心そのものであり、「解く」や「放つ」の言葉が、恋心の情熱の過多を十分に思わせるものとなっており、「はなたじ」の否定形は、一つの逆説でしかない。

歌を詠む人は、作者与謝野晶子の髪の描写に、「はなたじ」の禁止のストイシズムとは真逆のものを感じ取るだろう。

当時の女性の髪の長さは、誇るべきものであり、髪は(女性の)命」とも言われた。

黒髪を題材にした歌には、他に

その子二十歳櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな

がある。

与謝野晶子は、髪の長い女性であって、それを誇りとしていたこともうかがえる。

自身ではなかなか「うつくしきかな」とは言えないものだが、このような強烈な与謝野晶子の自負心が、作歌においては大きく作用したことは疑えないだろう。

そのような特徴があふれた歌が、与謝野晶子の歌が人々の心をとらえる所以であるといえる。







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