長からむ心も知らず黒髪の乱れてけさは物をこそ思へ 待賢門院堀河の百人一首の恋の和歌。
黒髪を詠み込んで印象的な、有名な恋歌として広く知られた和歌です。
この歌の現代語訳と、文法や語の意味を含めて、解説・鑑賞します。
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長からむ心も知らず黒髪の乱れてけさは物をこそ思へ
読み:ながからん こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもえ
作者と出典
待賢門院堀河(たいけんもんいんのほりかわ)
百人一首 80 他「千載集」「久安百首」
現代語訳と意味
あなたの心が末永く変わらないかどうか、別れた今朝は黒髪が乱れているように、心が乱れて物思いに沈んでいます
語句と文法
各語の解説です
長からむ
長からむ・・・「長からむ」は「心」にかかる。「末永く変わらないであろう、あなたの心」の意味
「む」は推量の助動詞 「かわらないだろう」の意味
「長い」は「みだれ」と共に、「髪」の連語
黒髪の乱れて
「みだれ」は「黒髪」の乱れのことであるが、それがそのまま下句の「心の乱れ」にもつながる
物をこそ思へ
・「こそ・・・へ」は係り結び
・「思へ」は「思いなさい」ではなくて、基本形「思う」のそのままの意味に訳す
係り結びの解説
係り結びとは 短歌・古典和歌の修辞・表現技法解説
解説と鑑賞
その一つ前の79番目の歌「秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ」左京太夫顕輔の歌と同じく、「久安百首」のために作られました。
逢瀬の後の朝の歌、いわゆる「後朝(きぬぎぬ)の歌」に答える形で詠まれた歌です。
髪の縁語である「長い」「乱れ」などの語を用いて、心の様を相手の男性に訴えます。
乱れ髪の印象がいかにも妖艶でありながら、十分に技巧的な歌です。
「心も知らず」の解釈
「心も知らず」で「句切れ」とする意見が主なものですが、他にも「知らないので・・・物をこそ思へ」、または「心もわからないし」の意味にとるという考え方もあるようです。
一般的には二句切れとされています。
黒髪の象徴するもの
黒い長い髪は、当時の女性のスタイルで、美人の条件ともされていたようです。
また、黒髪は恋の象徴でもありますが、これは、一緒に寝た時に長い髪は必ず目に入るものでもあり、恋に乱れる女性そのものの象徴でもありました。
要するに黒髪の登場する歌は、最初から色っぽい恋歌という性格を持つものであったのです。
待賢門院堀河について
待賢門院堀河は平安時代後期の歌人。
源顕仲(あきなか)の娘。はじめ令子内親王(1078-1144)につかえて前斎院六条とよばれ,のち待賢門院につかえ堀河と称された。
歌は「金葉和歌集」以下の勅撰集に多く採録されている。中古六歌仙のひとり。
待賢門院堀河の他の和歌
雪ふかきいはのかけ道あとたゆるよし野の里も春はきにけり
ときはなる松もや春をしりぬらんはつねをいはふ人にひかれて
いつかたに花さきぬらんとおもふよりよもの山辺にちる心かな
秋のくるけしきのもりのした風にたちそふ物はあはれなりけり
はかなさをわか身のうへによそふれはたもとにかかる秋の夕露
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