住の江の松を秋風吹くからに声うちそふる沖つ白波
凡河内躬恒(おほしかふちのみつね) の古今和歌集所収の有名な和歌、現代語訳と修辞法の解説、鑑賞を記します。
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住の江の松を秋風吹くからに声うちそふる沖つ白波
読み:すみのえの まつをあきかぜ ふくからに こえうちそふる おきつしらなみ
作者と出典
作者:凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
出典:古今集 360
現代語訳と意味
住の江の浜の松を秋風が服につれて、その松風の声にさらに声を添え加えるかのような、沖の白波よ
句切れ
句切れなし
語と文法
・住の江…「浜辺の松」を出す表現
例:住の江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ 藤原敏行朝臣
・からに…理由、原因の表現 「吹くので」「吹くところから」
・こゑ…「こえ」…波の音のことを「こえ」と表す。看護の「松声」「波声」から、風の音にもかぶる
・うちそふる… 基本形「打ち添ふ」 「加わる」の意味の他、言葉に調子をつけるための接頭語
修辞と表現技法
・体言止め
・「うち」は波の縁語
解説と鑑賞
凡河内躬恒の代表的な和歌作品の一つで、藤原定国の四十歳の祝賀における屏風に添えた歌。
海に沿って生えている松という情景を表す上に、松の緑と白波の色彩的対比が視覚的に表されています。
一方、「秋風」は音の方。その風が吹くという動的な情景に、さらに、海の波の動きと波音が加わります。
「沖つ白波」には、色のほか、「沖」という海の奥行きをあらわす言葉で、まさに屏風絵のような、美しい情景が印象的に言葉で描かれた叙景歌となっています。
凡河内躬恒の他の歌
春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やは隠るる(古今41)
雪とのみ降るだにあるを桜花いかに散れとか風の吹くらむ(古今86)
花見れば心さへにぞうつりける色には出でじ人もこそ知れ(古今104)
住の江の松を秋風吹くからに声うちそふる沖つ白波(古今360)
凡河内躬恒はどんな歌人
凡河内躬恒 (読み:おおしこうちのみつね ) 生没年不詳
平安時代中期の歌人。三十六歌仙の一人、『古今和歌集』の撰者。紀貫之(つらゆき)につぐ60首の歌がとられている。
感覚の鋭い清新な歌風で叙景歌にすぐれ、即興的な歌才に優れていたことをうかがわせる。
四季歌を得意とし、問答歌などでは機知に富み、事象を主観的に把握して、平明なことばで表現するところに躬恒の特長がある。