僧正遍昭は、六歌仙、三十六歌仙の歌人の一人、小倉百人一首にも和歌が選ばれており、平安時代の代表的な歌人の一人です。
きょうは遍照の命日、2月12日、きょうの日めくり短歌は、僧正遍昭の代表的な和歌作品についてお知らせします。
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僧正遍昭はどんな歌人か
僧正遍昭は、桓武天皇の孫という高貴な生まれでしたが、寵遇を受けた仁明天皇の崩御により出家、天台宗僧正の職を務めた、歌僧の先駆の一人です。
僧正遍照の読み方
僧正遍照の読みは、そうじょうへんじょう です。
僧正というのは、お坊さん、僧の位を表す言葉です。
遍昭(へんじょう)が名前で、僧侶になる前の名前、俗名は良岑 宗貞(よしみね の むねさだ)。
古今和歌集に16首ある遍照の和歌
六歌仙、三十六歌仙の歌人の一人であり、作品は、16首が古今和歌集に収録されています。
その最も有名な歌は百人一首にも選ばれた古今集収録の下の歌です。
六歌仙と三十六歌仙については以下を参照
六歌仙とは 紀貫之の六歌人の評を現代語訳付で解説
僧正遍照の百人一首の和歌
僧正遍照の百人一首の和歌作品は、以下のものがよく知られています。
天つ風雲の通ひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ
読み:あまつかぜ くものかよいじ ふきとじよ おとめのすがた しばしとどめん
作者と出典
僧正遍昭(そうじょうへんじょう)
・百人一首の12番目の歌
・古今和歌集 17-872
現代語訳と意味
空を吹く風よ、雲の中の通り道を吹き閉じてくれ。この美しい天女たちの姿をしばらくとどめておこうと思うから
この歌の詳しい解説は、下の記事に既に詳しく記していますので、この記事では、それ以外の遍照の和歌の代表作をご紹介します。
天つ風雲の通ひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ/句切れと解説
遍照の和歌の代表作
遍照の和歌の代表作を上げていきます。
たらちねはかかれとてしもむばたまのわが黒髪を撫でずやありけむ
現代語での読み:たらちねは かかれとしても むばたまの わがくろかみを なでずやありけん
作者と出典:
作者:遍照 出典:後撰和歌集 1240
和歌の意味
母は、こうありなさいと言って、私の黒髪を撫ではしなかったろうになあ
解説記事
たらちねはかかれとてしもむばたまのわが黒髪を撫でずやありけむ 遍照
今更に我はかへらじ滝見つつ呼べど聞かずと問はば答へよ
出典:後撰和歌集 1238
意味:
「今更私は帰るまい。滝を見て心を澄ましていて、いくら呼んでも答えなかったと、誰かに問われたら答えてくれ」
僧正遍昭の主人であった任命天皇は850年に崩御、返上はいえ山に隠れて出家した時の歌です。
空蝉は殻を見つつもなぐさめつ深草の山煙だにた て
出典
古今集 831
意味:
「わが君のお墓詣りをするだけでも心が慰められる。せめて、誰もいないこの山奥の墓に煙だけでも立ててほしいものだ」
こちらは、天皇の墓参りの際に詠んだ歌。亡くなった天皇を悼む思いにあふれています。
「苔の衣」僧衣の和歌
遍照の好んで和歌に詠み込んだ言葉に「苔の衣」という言葉があります。
これは自らの着る僧衣のことです。
それを使った一連の和歌を読んでみましょう。
みな人は花の衣になりぬなりこけのたもとよかわきだにせよ
出典:古今集
意味:
人々はみな喪が明けて、はなやかな衣に着替えたが、私遍照の涙は君を想って今も乾くことがない。涙に濡れた私の僧衣の袂よ、せめて乾きだけでもしておくれ。
「苔の衣」というのは、僧衣のことをいいます。
いはのうへに旅寝をすればいと寒し苔のころもを我にかさなむ
出典:『大和物語』168「苔の衣」より
意味:
岩の上で野宿をするのは寒いので、(岩についている)苔のような服を貸してください
よをそむく苔のころもはたた一重かさねばうとしいざふたりねむ
遍照の思い人は小野小町だったとも言われています。
これは小町からの使いに託した返し歌、返歌です。
意味:
「俗世を背く法衣は、ただ単衣の粗末なもので、十分に寒いので貸せるものではないが、貸さなければ冷淡だ、それならばさあ、二人で寝ましょう。
「二人で寝よう」とはいっても俗世での話ではありません。
共に永劫の幸せを得る大乗の道に、あなたも入るようにとの言葉なのです。
冷淡なようですが、歌の上だけでもこのような言葉を、小町に贈りたかったものかもしれません。
よそに見て帰らむ人に藤の花這ひまつはれよ枝は折るとも
遍照の有名な歌。
意味:
藤の花よ、よそよそしく花だけを見て帰る人にまつわりつけ。たとえ枝が折れようとも.
都への帰り道に、遍照のつとめる元慶寺に立ち寄った人のことを詠んだ歌。
参詣に訪れた人、おそらく女性と思われていますが、、遍照は人なつかしい気持ちになったのか、女性だったので歌を詠みたくもなったものか、上のような歌を詠んでいます。。
遍照は、崩御した天皇を慕い止まずに出家した古びた寺において、890年2月12日に自らも世を去りました。
きょうの日めくり短歌は、遍照の忌日にちなみ代表作和歌をご紹介しました。
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