靴の短歌・靴の記念日【日めくり短歌】  

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靴の短歌・靴の記念日【日めくり短歌】

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靴の日というのは、日本に初めて靴が入ってきたのを記念して作られた、靴の記念日です。

今日の日めくり短歌は、靴を詠んだ短歌をご紹介します。

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靴の日・靴の記念日とは

靴の記念日とは、明治3年のこの日、実業家・西村勝三が、東京・築地入船町に日本初の西洋靴の工場「伊勢勝造靴場」を開設したことにちなんで制定されました。

今では靴は欠かせない生活アイテムの一つとなっていますね。歌人たちはその靴をどのように短歌に詠んでいるのでしょうか。

時代の古い順にご紹介していきます。

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日めくり短歌

万葉集の靴の歌

信濃道は今の墾道刈株に足踏ましなむ沓はけわが背

当時の靴は今のような革靴ではなく、わらじのようなものであったことでしょう。

この靴は人ではなく人を運ぶ馬に履かせる靴であるとの説が有力です。

関連記事:
信濃道は今の墾道刈株に足踏ましなむ沓はけわが背/解釈の違いと理由

 

斎藤茂吉の靴の短歌

ゆふぐれのほどろ雪路(ゆきみち)をかうべ垂れ濡れたる靴をはきて行くかも

わが足より汗いでてやや痛みあり靴にたまりし土ほこりかも

歌集『赤光』にある短歌2首。 通勤の途中、自分の靴に焦点を当てて詠んだ歌 。

 

体ぢゅうが空になりしごと楽にして途中靴墨とマッチとを買ふ

ヨーロッパに留学をしていたのきちは関東大震災の知らせを受けて、家族が被災をしたのではないかと心配したのもつかの間、無事であるとの知らせを受けて、日用品を買ったという出来事。

靴墨を買ったというのは、もちろん留学中は自分で靴の手入れをしていたのでしょう。

山なかにくすしいとなみゐる兄はゴム長靴をいくつも持てり

北海道で石をしていた兄の暮らしの様子を選んだ歌。
茂吉も同じく都会で石をしているわけですが、通勤には靴を履くのに対して、雪深い北海道では往診のために長靴が必須であったのです。

 

アララギ派の歌人の靴の短歌

秋浅き木(こ)の下道を少女(おとめ)らは おほむねかろく靴ふみ来るも

作者:中村憲吉

中村憲吉の作品はアララギ派の中でも、しばしば都会的な風景が詠まれることで知られています。

足取りが軽いということを「靴ふみ来る」と 表現しています。「かろく」には、聴覚的な意味も込められていると思われます。

一生(ひとよ)の喜びに中学に入りし日よ其の時の靴やあり吾は立ち止る

作者:土屋文明

中学校に入学したのが一生の喜びだったということを、思い出の通学用の靴を通して読んでいます。

土屋文明の家は貧しかったため、伊藤左千夫の下で書生となり、働きながら勉強に励みました。

 

別れ来し路地に音たててふるみぞれ吾が穿(は)く古き靴に洩りつつ

作者:五味保義

靴に水がしみたり漏れたりすることは昔にはよくあったようで、他の歌人の歌にも度々読まれています。

ここでは、別れの後の寂しい、侘しい気持ちがあったのでしょう。

 

現代短歌の靴の短歌

古き靴捨てたり靴がもつ過去も磨き捨てたり明日を恃みて

作者:伊藤一彦

新年会として読まれた短歌。新しい気持ちになるべく、捨てるものが靴であるというのはうなずけるところです。

 

入口に夫を待たせて靴を買ふ降誕祭の電飾うつくし

作者:栗木京子

クリスマスの日に靴を買う作者。この場合はパンプスなどのお洒落な履物であったに違いありません。

 

ゆきたくて誰もゆけない夏の野のソーダ・ファウンテンにあるレダの靴

作者:塚本邦雄

「ソーダ水を売る喫茶店の風景にギリシャ神話の登場人物(レダ)を詠み込」んだと言われる塚本の作品。

レダはギリシャ神話の登場人物である女神です。

この歌をタイトルとする塚本邦雄の解説書があります。

 

靴を履く日など来るかと思いいしに今日卒業すファーストシューズ

作者:俵万智

ファーストシューズというのは赤ちゃんが初めて履く靴。

子供の成長の早さを、 靴にポイントを当てて歌っています。

 

赤ちゃんの靴と輪投げと月光の散らばる路面電車にひとり

作者:穂村弘

赤ちゃんの靴は印象的なもので、この歌にも詠まれています。

赤ちゃんはお母さんに抱き上げられており、電車に孤独を噛み締める作者なのでしょう。

 

焼却炉の中にてクラス全員の靴燃え上がる夜のまぼろし

作者:穂村弘

同じく穂村弘さんの作品。

学校には焼却炉がありますが、そこに靴が燃え上がるということは給油の靴を全部入れてしまいたいという衝動があったのでしょうか。

 

疲れざる靴を購めてのちふかく靴の進化をかなしみにけり

作者:棚木恒寿

「疲れざる靴」というのは開発されたハイテクシューズのことだそうです。

下の句の「かなしみ」というのは、「悲しむ」ことではなくて、「愛しむ」。

つまり履き心地が極めて良かったのでしょう。

 

一生に一度ひらくという窓のむこう あなたは靴をそろえる

作者:笹井宏之

ファンタジックな短歌。上の句は絵画的な情景をそのまま言葉に置き換えたもののように、読む人の目に浮かびます。

 

知らぬ間に解けてしまつた靴紐がぴちぴち跳ねて夏がはじまる

作者:山田航

靴紐のある靴を履くと何度でも結び直す必要があります。

「ぴちぴち跳ねる」というのは、魚に使う表現ですが、靴紐が地面に当たって立てる音の擬音でもあります。

 

擦れちがふすべての靴の裏側がやさしく濡れてゐるといふこと

作者:光森裕樹

読まれているその日が雨の日ですが、「雨」という言葉は意図的に省略されています。

「濡れている」の語から思い浮かべるものが雨であり、ぬれた路面から雨の降る空間、そして、靴を履く多数の「人」へと歌の情景が広がっていきます。

歌に書かれていない「雨」が、読み手の心の中に浮かぶことによって、歌のある外界と内面がつながったように錯覚させられます。

下句の最初、「やさしく」、 雨がそれほど強くないことを物語ります。

道を行く人が皆ともに濡れているという、雨の日が呼び起こす不思議な連帯感が読詠み込まれているようです。

今日の日めくり短歌は、靴を詠んだ短歌をご紹介しました。

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