難波江の葦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき 百人一首88番の皇嘉門院別当の和歌の現代語訳と一首の背景の解説を記します。
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難波江の葦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき
読み:なにわえの あしのかりねの ひとよゆえ みをつくしてや こいわたるべき
作者と出典
作者:皇嘉門院別当 (こうかもんいんのべっとう)
出典:小倉百人一首88 『千載集』恋三・807
現代語訳:
難波の入江の葦の刈り根の一節のように短い仮り寝をしたばかりに、みをつくして生涯、私はあなたに恋焦がれていくこととなるのでしょうか
・・
語と句切れ・修辞法
一首に使われていることばと文法と修辞法、句切れの解説です
句切れと修辞法
- 句切れなし
- 係り結び 「や…べき」
- 掛詞と縁語
語句の意味
・難波江…難波の水辺
・葦…水辺に生える植物の一種 「蘆」または「芦」との漢字もある
・ゆえ…「そのため」の意味
・みをつくし…身を「尽くす」の動詞
・や…疑問の終助詞 →係り結び
・わたる…し続ける
解説
皇嘉門院別当 の百人一首88番に選ばれた歌で、千載集にも収録されています。
女性の切ない恋心を詠った歌ですが、序詞、掛詞、縁語などの技巧尽くしの歌として知られています。
千載集の詞書
「摂政、右大臣の時の家の歌合に、旅宿逢恋といへるこころをよめる」
との詞書があります。
なお、この歌の本歌とされる歌は、
「わびぬれば今はたおなじ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ 元良親王」「難波潟みじかき蘆のふしのまも逢はで此の世を過ぐしてよとや 伊勢」があります。
「難波江の葦の」は序詞
この歌の序詞は、「難波江の葦の」の部分です。
これは足の根である「刈り根」を導きます。
「かりね」の掛詞1
この「刈り根」はそのままでは恋に関係はなく、「仮寝」が恋に関連する言葉で、掛詞となっています。
仮寝の意味は、一夜限りの共寝のことです。
「ひとよ」の掛詞2
「ひとよ」は、一夜だけではなく、葦の節のこと、「一節」(読み:ひとよ)」とも掛詞となっています。
「みをつくし」の掛詞3
「みをつくし」は恋と相手に「身を尽くし」の言葉であり、生涯を傾けて」の意味ですが、一方で、水辺にある「澪標(みをつくし)」のこともいう、掛詞となっています。
縁語
縁語は、それぞれ下のように
・葦の縁語…刈り根 一節(ひとよ)
・水辺の縁語… 難波江 みをつくし わたる
皇嘉門院別当 のプロフィール
皇嘉門院別当 こうかもんいんのべっとう 生没年不詳
平安時代後期の歌人。大宮権亮源俊隆の娘。作品は千載集他に9首収録。
百人一首の前後の和歌
87.村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ (寂蓮法師)
89.玉のをよ たえなばたえね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする (式子内親王)