吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ 百人一首22番の文屋康秀の和歌の現代語訳と一首の背景の解説を記します。
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吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ
読み:ふくからに あきのくさきの しおるれば むべやまかぜを あらしというらん
作者と出典
作者:文屋康秀 (ぶんやのやすひで)
出典:小倉百人一首22 『古今和歌集』249
現代語訳:
吹くとたちまち秋の草木が枯れるので、山から吹き下ろす風を嵐というのですね。
・・
語と句切れ・修辞法
一首に使われていることばと文法と修辞法、句切れの解説です
句切れと修辞法
- 句切れなし
語句の意味
・吹くからに…「からに」は接続助詞 意味は「吹くとすぐに」
・むべ…[副詞]「うべ」に同じ。平安時代以降は「むべ」と表記されることが多い。肯定する気持ちを表す。意味は「なるほど。いかにも」
・いふらむ…「言う+らむ(推量の助動詞)」
解説
文屋康秀の百人一首22番に選ばれた歌で、古今集にも収録されている知的な言葉遊びの歌です。
「嵐」という字を分解すると「山」と「風」に分けられるので、「嵐」に草木を荒らす意味をこめたものです。
この時代の嵐は、今の台風のようなものを指すのではなく、山から吹き下ろす強い風を言いました。「六甲おろし」など今でもそう呼ばれています。
「むべ」は「なるほど」というあいづちのような言葉で、作者がおもしろがっていることが伺えます。
他に、
草深き霞の谷に影隠し照る日の暮れし今日にやはあらぬ 894
も有名な歌。
意味合は「草深い霧の谷に姿を隠して、照る日が暮れた今日なのではないのか、まさにそうなのだ」も、上によく似た歌で、作者の創意を詠っています。
文屋康秀のプロフィール
文屋康秀 (ぶんやのやすひで)生没年未詳。
平安初期の歌人。六歌仙、中古三十六歌仙の一人。文琳とも称した。小野小町と交渉があったと伝えられる。
息子は文屋朝康で、この歌も息子朝康作の歌であると言われている。
百人一首の前後の和歌
21.今こむと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ちいでつるかな (素性法師)
23.月見れば 千々に物こそ 悲しけれ 我が身ひとつの 秋にはあらねど (大江千里)