いとせめて恋しき時はむばたまの夜の衣をかへしてぞ着る 小野小町  

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いとせめて恋しき時はむばたまの夜の衣をかへしてぞ着る 小野小町

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いとせめて恋しき時はむばたまの夜の衣をかへしてぞ着る

小野小町の有名な和歌、代表的な短歌作品の現代語訳と句切れと語句、小野小町の短歌の特徴と合わせて解説します。

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いとせめて恋しき時はむばたまの夜の衣をかへしてぞ着る

読み: いとせめて こいしきときは むばたまの よるのころもを かえしてぞきる

作者と出典

小野小町 古今和歌集 恋二 554

現代語訳

たいへんつらくなるまであなたが恋しいと思われる夜には、夢で逢えるように衣を裏返して着て寝ます

句切れと係り結び

・句切れなし

・「ぞ…きる」の係り結び

語と文法

・いと…「たいへん」の意味の副詞

・せめて…痛切に 切実に

・むばたまの…枕詞 「夜」「黒」などににかかる

解説記事:
枕詞とは 意味と主要20一覧と和歌の用例

かへしてぞ着る の品詞分解

・かえして…「かへす」が基本形。裏返すの意味

・ぞ…強意の助詞で係り結び「ぞ…きる」をなす

・着る…係り結びの連体形

※「衣をかへす」裏返しに着物を着て寝ると、相手の夢を見ると信じられていた

解説と鑑賞

着物を裏返しにして寝ると、相手の夢を見ると当時は信じられていた。

なので、相手に会えない辛い夜は、夢に見ようと、その言い伝えに従うというのが一種の内容だが、女性の華やかな着物や、寝姿などが想像できる妖艶な恋の歌となっている。

一首の構成

初句の「いとせめて」の入りは、最初から心情を訴えるものとなり、切羽詰まった「恋しき時」の心の状態を詠み手に訴える。

3句は「むばたまの」の枕詞で、特に意味はないため、上の心の状態に間を置き、それに続いて、上句の心情に基づく、行為の結果が下句に示される。

「夜の衣をかへしてぞ着る」は、一気に読み下されて、「かへしてぞ」で着物を裏返す場面が、強調され、一瞬、鮮やか色物の着物がひるがえる様が描かれる。

女性の寝姿までが想像できる鮮やかな手腕が生きた歌である。

小野小町の他の和歌

秋の夜も 名のみなりけり 逢ふといへば 事ぞともなく 明けぬるものを

今はとて わが身時雨に ふりぬれば 言の葉さへに うつろひにけり

色見えで 移ろふものは 世の中の 人の心の 花にぞありける

うつつには さもこそあらめ 夢にさへ 人めをもると 見るがわびしさ

 

小野小町はどんな歌人

六歌仙に選ばれた、ただ1人の女性歌人で、歌風はその情熱的な恋愛感情が反映され、繊麗・哀婉、柔軟艶麗と評される。

『古今和歌集』を編纂した紀貫之は、序文で、『万葉集』の頃の清純さを保ちながら、なよやかな王朝浪漫性を漂わせているとして小野小町を絶賛しており、和歌の腕は随一であった。

小野小町について

小野小町 生没年不詳 平安時代前期の女流歌人。承和~貞観中頃 (834~868頃) が活動期。

六歌仙,三十六歌仙の一人。その出自や身分については,更衣や采女 (うねめ) などとする説があるが未詳。小野氏出身の宮廷女房という説もある。

『古今集』以下の勅撰集に 60首余入集,歌集に『小町集』がある。

「小町」は俗に美人の代名詞として用いられることがあり、「○○小町」との言い回しも多数使われる。




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