吹く風と谷の水としなかりせばみ山隠れの花を見ましや 紀貫之 品詞分解と表現技法解説  

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吹く風と谷の水としなかりせばみ山隠れの花を見ましや 紀貫之 品詞分解と表現技法解説

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吹く風と谷の水としなかりせばみ山隠れの花を見ましや 教材にも取り上げられる和歌の意味と品詞分解を解説します。

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吹く風と谷の水としなかりせばみ山隠れの花を見ましや

現代語の読み:ふくかぜと たにのみずとし なかりせば みやまがくれの はなをみましや

作者と出典:

紀貫之 古今集 巻第二春歌下118

現代語訳と意味

吹き散らす風と流す谷川とがなかったならば、深い山に人知れず咲く桜の花をどうして見ることができるだろうか

 

語句と文法

・吹く風と…「吹く」の動詞は風を修飾し、連体形

・谷の水…「吹く風」に対照して「流れる」の意が省略されている。

「谷の水としなかりせば」の品詞分解

・と…格助詞 並列の意味

・し…強意の助詞

・なかり…形容詞「なし」のカリ活用 連用形

・せ…過去の助動詞基本形「き」の未然形

・ば…接続助詞 仮定

・み山隠れ…漢字は「深山」  「山の奥深くかくれていること。また、深山の奥深い所」の意味の名詞

・花…桜を指す

「見ましや」品詞分解

・まし…反反実仮想の助動詞「まし」の連体形

・や… 反語の終助詞「見られるだろうか、いや見られまい」の意味

反語の解説は

句切れと修辞法

句切れなし

反語表現
 

解説

紀貫之の古今集春歌の項にある歌。

山奥に人知れず咲いている深山隠れの花、その花を運ぶ風と水の流れとがなかったら、花の美しさはもとより、その存在にも気づきはしないと詠う。

結句の「や」は、上句の条件が「なかったら見られはしない」を強めて言う意味がある。

和歌で描く”風景画”

「み山隠れの花」というのはそれだけでも静かなたたずまいの風情があるが、「花」を中心に据えて「風」と「谷」「川水の流れ」を加えて、文字通り”風流”な一つの風景画のように仕立てている。

主題は花だが、深い山と水の流れる谷、その上で風に花を散らす枝までもが見えてくるようだ。

また、「なかりせば」の「なかったならば」の仮定は、実際には「ある」の意味なのだが、「ない」の語を入れることで、これらはあくまで心に描く風景として浮かび上がってくる。

風も谷水も、そして、花でさえもが、想像上の物であり、なんともはかなげな風情があるのもこの歌の魅力となっている。

音韻の表現技法

紀貫之は優れた歌人であり、見逃せないのが、この歌の音韻上の工夫である。

並列と対比「吹く風と谷の水としなかりせば」の「と」の音がアクセントとなる上句の流れは、あたかも水の流れを思わせる流麗さである。

下句の、「み山隠れの花を見ましや」は「み山」「見まし」と「み」「ま」とミ音とマ行の音を重ねて独特の印象に残る調べを形ち作っている。

紀貫之の歌人解説

868年ごろ~945年 早くから漢学や和歌の教養を身につけた。

古今集の撰者で三十六歌仙の一人。

古今和歌集の仮名の序文、仮名序で歌論を残した。「土佐日記」の著者でもある。

紀貫之の他の和歌

霞たちこのめも春の雪ふれば 花なきさとも花ぞちりける

郭公人まつ山になくなれば 我うちつけに恋ひまさりけり

しら露も時雨もいたくもる山は 下葉のこらずいろづきにけり

ちはやぶる神の斎垣にはふ葛も 秋にはあへずうつろひにけり

霞たちこのめも春の雪ふれば花なきさとも花ぞちりける

人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける

吉野川いはなみたかく行く水のはやくぞ人を思ひそめてし

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