正述心緒 万葉集の作歌方法解説  

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正述心緒 万葉集の作歌方法解説

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正述心緒とは万葉集の作歌方法の類型の一つです。

正述心緒とはどのようなものか、万葉集の和歌の例をあげて詳しく解説します。

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正述心緒とは

正述心緒とは、万葉集の作歌方法と分類の一つで、「正(ただ)に心の緒を述ぶ(歌)」と万葉集中に記されているものです。

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「正述心緒」の読み方

「正述心緒」の読み方は「せいじゅつしんしょ」です。

万葉集では表記は「正述心緒」ですが、読み方にした時が

「ただにこころのおをのぶ 正(ただ)に心の緒を述ぶ」

となります。

「述ぶる」は「寄物陳思」の「陳ぶる」と同じです。

※寄物陳思についての解説は

万葉集「寄物陳思」の表現様式 なぜ短歌には物や景色が詠まれるのか

 

「正述心緒」の意味

「正述心緒」の意味は、

ほとんど心情を表す叙述だけで一首を構成する方法

となります。

 

正述心緒の和歌の例

正述心緒の方法で作られた万葉集の歌の例をあげます。

例1

夢の逢ひは苦しかりけりおどろきて掻きさぐれども手にも触れねば

大伴家持(4-471)

上句「夢であなたを見て逢うのはつらい」の意味は作者の心情で、続く下句も作者の動作と共に「おどろきて」という心情を表しています。

恋心を「つらい」「あいたい」「おどろいた」という気持ちを表す言葉だけではなくて、動作を詠み込んだところ、そして、夢が夢であるということに気づく時間経過と続く作者の落胆も含む、起伏に富んだ内容となっています。

例2

たらちねの母が手離れかくばかりすべなきことはいまだせなくに(2368)
作者不詳(万11-2368)

「正述心緒」の歌群の中の一つ。

少女が母の手を離れて初めての恋に悩むその心を表したもの。

上句の「たらちねの母が手離れ」の時間経過を含む句によって、少女が成長して大人になるまでの悩みのない期間が対照されており、初めての恋であることもわかります。

上句の対照で、それだけに下句のつらさが浮き彫りになる効果があります。

「寄物陳思」との違い

前項の「寄物陳思」のところでは、「物」が詠まれることで心を際立させる効果があると説明しましたが、正述心緒の歌群も、けっして心の身を表す「つらい」「かなしい」「うれしい」というだけにはとどまりません。

物や景色以外の背景が、主題となる心情を強調するために詠み込まれていることがわかります。

これが、正述心緒の歌の特徴であるのです。

とても分かりやすく書かれている万葉集の入門書なのでおすすめです。

万葉集の作歌方法4つ

万葉集の作歌方法には「正述心緒型」の他、「寄物陳思」「詠物型」「叙景型」を含めて4つあります。

分類 万葉集での読み方
寄物陳思型(きぶつちんし)
正述心緒型
詠物型
叙景型

それぞれの内容は

 

分類 内容
寄物陳思型(きぶつちんし) 心情と物象を対応させて一首を構成する方法
正述心緒型 ほとんど心情を表す叙述だけで一首を構成する方法
詠物型 主に天然自然を対象にその物象を詠む歌
叙景型 物証だけにとどまらず風景としての広がりを持った歌

今回の参考にした本はこちら。

和歌の共同性について古今集・新古今集の時代を含めた魅力的な解説書。




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