しらしらと氷かがやき千鳥なく釧路の海の冬の月かな 石川啄木  

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しらしらと氷かがやき千鳥なく釧路の海の冬の月かな 石川啄木

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しらしらと氷かがやき千鳥なく釧路の海の冬の月かな

石川啄木の歌集「一握の砂」の中の短歌、啄木が釧路に移り住んだ時の歌の背景を解説します。

しらしらと氷かがやき
千鳥なく釧路の海の
冬の月かな

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読み:しらしらと こおりかがやき ちどりなく くしろのうみの ふゆのつきかな

出典:石川啄木の『一握の砂』「忘れがたき人々」

一首の意味

白々と氷が輝いて千鳥がなく釧路の海に照る冬の月であるよ

 

解説

石川啄木が単身赴任のため移り住んだ釧路で詠んだ歌。

釧路の駅に初めて一人で下りたときの歌、

さいはての駅に下り立ち雪あかりさびしき町にあゆみ入りにき

の次の歌に位置する。

作者が自ら「流離の身」と意識、馴染みのない北海道を転々とする寄る辺のなさと悲しみとが背景にある。

一首の構成

歌の内容は、夜の釧路の海の様子を詠ったもの。

氷を輝かせているのは月の光であるが、最初は海の氷に視線を向けて、それから千鳥がなく空、そのあとで空の上の月という順序で、視界を広げていく構成となっている。

一首の内容

釧路への旅行は1日がかりで、夜に到着したらしい。

また、寒い冬の時期のことであったことが歌からわかる。

雪ではなく流氷の浮かぶ釧路の海に冬の月が照っているという情景で、耳でとらえた鳥の声と鳥の動きが感じられる。

一枚の絵のように美しい情景ではあるが、冬の寒さと啄木の孤独が感じられる作品となっている。

語句

また「しろしろ」は「白」を2回重ねた言葉で、通常は「白々 しらじら」と読まれるが、啄木独特の言葉となっている。

「かな」は詠嘆の終助詞で「月」にポイントがある。

句切れと表現技法

句切れなし

 

一首の背景

石川啄木は岩手県出身だが、その後短歌を始める前に北海道に一家で移住している。

釧路を詠んだ一連の歌「忘れがたき人々」は、多くは後の回想によって詠まれたものと思われる。

 

一連の前後の歌

忘れ来し煙草を思ふ
ゆけどゆけど
山なほ遠き雪の野の汽車

・・

何事も思ふことなく
日一日
汽車のひびきに心まかせぬ

・・

さいはての駅に下り立ち
雪あかり
さびしき町にあゆみに入りにき

・・解説記事:さいはての駅に下り立ち雪あかりさびしき町にあゆみ入りにき 石川啄木

こほりたるインクの壜(びん)を
火に翳(かざ)し
涙ながれぬともしびの下(もと)

 

石川啄木と北海道

石川啄木は北海道の函館で最初教師として勤め、新聞社に移り記者として活躍。

安定した生活が始まった啄木であったが、不運にも函館の大火事のため転居を余儀なくされ、その後、札幌、小樽、釧路と流れていくように移り住むことになる。

この頃の啄木の短歌については下の記事をご覧ください。

 

釧路での石川啄木

釧路では編集長の役職を与えられ、啄木は家族を函館に残して単身赴任となった。

芸者小奴らなどと知り合い華やかな生活を送っていたが、一方で、文学から遠ざかる嘆きが啄木に生まれた。

郷里から函館へ、函館から札幌へ、札幌から小樽へ、小樽から釧路へ―――私はそういう風に食をもとめて流れ歩いた。何時しか詩と私とは他人同士のようになっていた―――石川啄木「食(くら)ふべき詩」より

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