春日野の雪間を分けて生ひ出でくる草のはつかに見えし君はも 壬生忠岑  

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春日野の雪間を分けて生ひ出でくる草のはつかに見えし君はも 壬生忠岑

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春日野の雪間を分けて生ひ出でくる草のはつかに見えし君はも

古今集の壬生忠岑の有名な代表作和歌の現代語訳、品詞分解と修辞法の解説、鑑賞を記します。

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春日野の雪間を分けて生ひ出でくる草のはつかに見えし君はも

読み: かすがのの ゆきまをわけて おいいでくる くさのはつかに みえしきみはも

作者と出典

作者:壬生忠岑(みぶのただみね)

出典:古今和歌集 11巻 恋1 478

壬生忠岑の他の代表作和歌は

有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし 壬生忠岑

現代語訳

春日野に積もった雪の間から萌え出てくる草の姿はほんのわずか その草のようにわずかに姿を見せたあなただったのであるなあ

語句と文法

  • 春日野・・・春日祭をさす
  • 雪間・・・ゆきま 雪の隙間 あいだ
  • 生ひ出で来る・・・「生ふ」「出づ」「来」の複合動詞 草が生えてでてくるの意味
  • はつかに・・・「かすかに」のいみの副詞

「君はも」の品詞分解

・君はも・・・名詞「君」+係助詞+終助詞

「はも」で一つの表現

・意味は詠嘆を表し「○○よ」と訳す

句切れ

  • 句切れなし

表現技法

  • 序詞
  • 字余り「おひいでくる」6文字

解説:序詞とは 枕詞との違いと見分け方 和歌の用例一覧

 

解説

春日祭で行われる祭りで見かけた女性を詠んで後に贈った歌

詞書の意味

詞書に

春日の祭りにまかれりける時に、物見にいでたりける女のもとに、家をたづねてつかはせりける

とある。

この意味は

春日祭に出かけたときに、見物に来ていた女のもとに、家を探し出して贈った歌

となる。

一首の内容

春日祭に下向した作者が見かけた女性に求愛をした歌。

詞書によると別れた後で、家を探し出して、この歌を送ったとあるので、この歌が求愛の表現となる。

現代的に言えばラブレターである歌なので、大切なところは

「春日野でお見かけしたあなたをお慕いしています」

というのが歌の意味であり目的となる。

序詞の解説

「春日野」は相手に「春日祭であなたをお見かけしたのです」ということを伝えている。

「雪間」はそこでちらりと見た、かすかに見えたということを表しており「草の」までが序詞である。

「草」はさしてロマンチックではない表現であるが、いわゆる恋の芽生えを思わせる事物で、「春にまだ雪の中からちらりと姿を見せた」その女性を表している。

「見えし君はも」の最後の結句の部分が恋の心を伝える部分である。

歌の背景

現代の感覚だと、強い表現は含まれていないが、この時代の身分の高い女性はほとんど外に出るということがなかった。

そのため、「見る-みられる」はそのまま心を引かれたという意味であって求愛につながるものであった。

すなわち「見えし君」の部分が「あなたに恋してしまった」と同じ意味となっている。

上句の序詞の長さは人目を避けて隠れているかのような奥ゆかしい女性を肯定しながら、そっと近づいて気持ちを告げるソフトな表現となっている。

これを読んだ女性にも抵抗なく読める内容であったことが推察できる。

壬生忠岑(みぶのただみね)について

平安前期の歌人。生没年不詳。三十六歌仙の一人。

下級官人の生活に終始したが,歌人としては早くから知られ、紀貫之らとともに《古今和歌集》を撰進した。歌は概して穏和で叙情的なものが多い。忠見の父。




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