嵐吹くみ室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり 能因法師の百人一首の和歌、現代語訳と解説を記します。
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嵐吹くみ室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり の意味
読み:あらしふく みむろのやまの もみじばは たつたのかわの にしきなりけり
作者と出典
能因法師
百人一首 69
後拾遺集(巻5・秋下・366)
現代語訳
嵐が吹き荒れて散る三室の山の紅葉は川を染める錦であるよ
※竜田川の錦は他に
ちはやぶる神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは 在原業平
※能因法師の他の歌は
能因法師の代表作和歌作品
一首に使われていることばと文法と修辞法、句切れの解説です
句切れ
句切れなし
語の意味
- み室・・・漢字は「三室」。竜田川の西に位置する小さな山で別名を神奈備山(かんなびやま)
- 竜田川・・・奈良盆地の中央を流れる川
- 錦・・・いろいろの糸で模様を織り出した高級の織物。いろどりが美しい布。
- なり・・・断定の助動詞の連用形
- けり・・・詠嘆の助動詞の終止形
嵐吹くみ室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり の解説
能因の百人一首に採られた和歌で、詞書に「永承四年内裏の歌合にてよめる」とある。
和歌の背景
この歌は後冷泉天皇の時代に開かれた大規模な歌合せで詠まれた和歌で、能因の方が勝ったと伝わっている。
そのためやや誇張の正った表現となっている。
和歌の鑑賞
上句「嵐吹くみ室の山のもみぢ葉は」には省略があり、嵐によって散ったあと川に落ちた紅葉を差している。
「錦なりけり」は、「錦のようだ」の比喩を「錦なり」と言い切ったもので、見立ての歌である。
※見立ての歌とは
見立ての歌とは、見立てというのは、文字通りあるものを他のものに見立てること。
目で見ているものとは違った対象物を並記して歌に取り入れることで、歌に大きな幅をもたらすことができる。この技法を取り入れた和歌を「見立ての歌」という。
この歌では、嵐に吹き散らされた紅葉が、竜田川に浮かんで流れている様子を「錦」に見立てている。
※詳しくは
和歌の見立ての例
能因法師の他の和歌
心あらむ人に見せばや津の国の難波わたりの春のけしきを
都をば霞とともに立ちしかど秋風ぞ吹く白河の関
武隈の松はこのたび跡もなし千年を経てや我は来つらむ
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能因法師の代表作和歌作品
能因法師について
西暦988年-1051年。平安時代中期の僧侶・歌人。俗名は橘永愷。法名は初め融因。近江守・橘忠望の子で、兄の肥後守・橘元愷の猶子となった。中古三十六歌仙の一人。
『後拾遺和歌集』に31首、勅撰和歌集に67首が入集している。