山桜咲きそめしより久方の雲居に見ゆる滝の白糸 源俊頼  

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山桜咲きそめしより久方の雲居に見ゆる滝の白糸 源俊頼

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山桜咲きそめしより久方の雲居に見ゆる滝の白糸 作者源俊頼(みなもとのとしより)の勅撰和歌集『金葉和歌集』の代表作和歌作品の現代語訳と、解説・鑑賞を記します。

源俊頼は歌論書『俊頼髄脳』を記した 院政期を代表する大歌人です。

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山桜咲きそめしより久方の雲居に見ゆる滝の白糸

読み:やまざくら さきそめしより ひさかたの くもいにみゆる たきのしらいと

作者と出典

出典: 金葉和歌集 50

作者:源俊頼(みなもとのとしより)

※金葉和歌集についてと代表作品は
金葉和歌集の代表作一覧と現代語訳

現代語訳と意味

山桜が咲き始めた時から 山の景色は大空にかかる 滝の白い流れに見えることだ

句切れと修辞法

  • 句切れなし
  • 体言止め
  • 見立ての歌

参考:
和歌の修辞法をわかりやすく解説

和歌の見立ての例

語句

  • 久方の・・・雲の枕詞
  • 雲居・・・雲のある所の意味から大空 天上。
  • 滝の白糸・・・滝の流れを白糸に例える言葉

解説

源俊頼の金曜和歌集の代表作品。

比喩が巧みであるところにこの作者の特徴がみられる。

詞書

「宇治前太政大臣の歌合に詠んだ」との詞書がある。

鑑賞

歌の中心は桜であるが、それ以上に印象に残るのが「滝の白糸」の方だろう。

見立ての効果

もちろん「滝の白糸」は比喩のために用いられた言葉であって実在の物ではない。

にもかかわらず印象の強さを持って桜と拮抗し、桜以上のものとなっている。

滝の方は結句に体言止めであるため、残像が強く残るのはむしろ滝の方であろう。

二重の見立て

山桜を例えるのにまず滝を持ち出している。

その桜の花の様子を白糸に見立てている。

滝の白糸は、滝が上から下に落ちる水の白い筋が糸に見立てた言葉であり、ここに二重の見立てがある。

つまり比喩のある言葉を持ち込むことで、比喩の中に比喩があるという入れ子構造になっているという技巧である。

一首の時間構造

2句目の「咲きそめしより」というのは、時間経過を含む句であって、桜が咲いてから今までずっとという、時間の流れを表している。

この時間の流れを可視化すれば、それもやはり「滝の白糸」とイメージを関連させることもできる。

また、滝の白糸は、咲いている枝垂桜のような花だけでなく、桜の花が糸を引いて散る様子をも思わせる。

咲き始めてから散っていくまでの、桜の一生をもイメージさせることで、時間に奥行きがある。

一首の空間構造

この滝の白糸は、山桜のある山にあるとは読まれておらず、「ひさかたの雲居」つまり大空にあることになっている。

それが天上にある時には、桜はもはや桜でなく、滝の白糸となって映っているのである。

桜は地上にあるはずが、天上にある白糸とオーバーラップし、空間は大きく広がる。

源俊頼の他の和歌

憂かりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを 百人一首より

梢には吹くとも見えで桜花かをるぞ風のしるしなりける(金葉59)

風吹けば蓮の浮き葉に玉越えて涼しくなりぬひぐらしの声

源俊頼について

源俊頼(みなもとのとしより)
1055-1128
平安後期の歌人。金葉和歌集の撰者。

父から和歌の手ほどきを受けて各歌合に出席。

堀河院歌壇の中心人物として活躍。

天治元年(1124)以前、白河院の命を受けて金葉集を編纂し、当時の歌壇の中心人物となった。

歌論書『俊頼髄脳』も代表作の一つ。

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