和歌の修辞法をわかりやすく解説  

広告 和歌の知識

和歌の修辞法をわかりやすく解説

※当サイトは広告を含む場合があります

和歌の修辞法、表現技法は、枕詞、掛詞、序詞、縁語が主なもので、他にも本歌どり、見立て、折句、体言止めがあります。

和歌の修辞法についてわかりやすく解説します。

スポンサーリンク




和歌の修辞法

和歌・短歌の表現方法は修辞または、修辞法と呼ばれます。

現代に詠まれている短歌以上に、古い和歌の修辞の技法はたいへん技巧的であり複雑なものが含まれています。

和歌の修辞法一覧

和歌の修辞法とその内容を一覧にまとめると下のようになります。

枕詞 単語一語で次の語にかかる決まった言葉
掛詞 同音異義を利用して1語に2つ以上の意味を持たせる修辞技法
序詞 特定の語の前に置いて その語を導き出すための文節
縁語 意味上関連する語を連想的に2つ以上用いる修辞技法

その他の修辞法としては、

本歌取り 他の短歌を元に新しい和歌を作る作り方
体言止め 和歌の最後の結句が名詞であるもの
見立て ある対象を別のものに言い換えて表現すること
折句 各句の頭の位置文字をつなげて意味を構成する

いずれも普段の言葉では使わないものだけに、聞きなれないものが大半ですが、作品中の用例と対照しながら読めば理解できると思います。

この記事では和歌の修辞法について、憶えやすいように解説します。

 

和歌の修辞法で難しい4つ

これらの技法のうち紛らわしいのは、掛詞・縁語、序詞と枕詞の4種類なので、まずそこから説明していきます。

種類 内容 規則性 暗記の可否
掛詞 同音異義 見分けは可能
序詞 特定の語の前に置く 特定の言葉でも決まりもない
縁語 意味上関連する2つ以上の語 おおむね決まっている
枕詞 単語一語 決まっている

枕詞は昔から決まっている「たらちね」や「ぬばたまの」などの一語の単語をいいますので目を通しておけばわかります。

掛詞は歌によって違いますが、音が同じなので見分け方を覚えれば、それほど難しくはありません。

縁語は1つの縁語が3つから5つ以上の語のグループに渡り、数が多いのですがおおむね決まった言葉なので暗記は可能です。

歌によって内容が変化するのは序詞です。

掛詞・縁語・序詞・枕詞の意味と訳

それぞれの言葉の意味の有無と、訳の必要の必要は以下の通りです

掛詞 意味のある言葉で、訳す必要がある
序詞 意味のある言葉で、訳す必要がある
縁語 意味のある言葉で、訳す必要がある
枕詞 意味のない言葉がほとんどで、訳す必要はない

それぞれの代表的な例をあげます。

掛詞の用例

大江山いく野の道のとほければまだふみもみず天の橋立

作者:小式部内侍(こしきぶのないし)の百人一首にある歌です。

意味は、「大江山へ行く道は遠いので、まだ天の橋立には行ったことがありません」というもの。

「いく」が掛詞

「いくの」は「生野」という地名で、それに「行く」を掛けている、これが掛詞です。

「ふみ」の掛詞

そしてもう一つ「ふみ」は、足で「踏む」と手紙の意味の「文―ふみ」を掛けています。

この歌にはその二つの掛詞が使われています。

「文」と「踏み」「生く(野)」と「行く」の、同じ音の「ふみ」と「いく」を、それぞれ違う言葉で両方の意味を持たせて使う、これが掛詞の使い方です。

掛詞の訳

この歌の場合は、「大江山の生野の道が遠いのでまだ、天の橋立を踏んだこともありません」というように訳されています。

「行く」と「文」は隠れてしまうことになりますが、その両方を入れて訳すことはできませんので、短歌としての意味が取れるように訳します。

たいていは、表に出ている方の言葉、この歌だと「生野」「踏み」の方をそのまま訳すことになるのが普通です。

 

序詞の用例

次は序詞を使った有名な和歌です。

あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む

「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」までが「長い」を導き出すまでの序詞(じょことば)です。

つまり、山鳥の尾は長いので、そのあとの「長い」を形容し、強調するために使うのです。

ここまでで17文字ある文節で、一つの短い言葉ではないことがわかります。

序詞の訳

この場合の現代語訳は、「あしびきの山鳥の尾の長く垂れさがったしだり尾のことではないが」のように「…ではないが」をつけることが多いです。

他には「あしびきの山鳥の尾の長く垂れさがったしだり尾のように」など「ように」をつけるなどしてもいいと思います。

序詞は、作者が工夫をして編み出した部分でもあるので、この部分に序詞があるということがわかるように訳せればベストです。

・・・

縁語の用例

縁語とは一首の中に意味上関連する語を連想的に2つ以上用いることで歌に情趣を持たせる、和歌の修辞技法です。

縁語の代表歌のように、いつも引用されるのが下の歌です。

長からむ心も知らず黒髪の乱れてけさは物をこそ思へ

「長い」「乱れ」は、髪の縁語とされています。

いずれも「髪」から連想できる言葉です。

作者は待賢門院堀河(たいけんもんいんほりかわ)。詳しくは、
長からむ心も知らず黒髪の乱れてけさは物をこそ思へ 待賢門院堀河

他にも、縁語を複数使った歌があります。

袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ

「結ぶ」「張る」「裁つ」「とく(解く)」は「袖」の縁語です。

この歌は、縁語を用いた、名歌とされています。

作者は、紀貫之 解説は下の記事に
袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ 紀貫之

 

枕詞の用例

枕詞を使った有名な歌を例に挙げます

あかねさす紫野行き標野(しめの)行き野守は見ずや君が袖振る

この歌の枕詞は「あかねさす」です。

枕詞は、次に続く言葉とセットになるものですが、「あかねさす」はこの歌では紫とセットになります。

「あかねさす」は他にも「昼」とセットになることもあります。

枕詞は他に「ぬばたまの」「うつせみの」「あおによし」などのよく使われるものがあり、その一覧はこちらに記してあります。

特殊な言葉なので、一度見るとだいたい覚えられます。

枕詞の訳

枕詞は、それ自体の意味がよくわからない、あるいは、意味がないとされているものがほとんどなので、まず訳す必要はあありません。

ただし、「たらちね」を使った現代短歌に次のような例があります。

枕詞「たらちね=母」の例

胸内のしぶくが如き悔しさに百合突き立てるたらちねの墳(つか) 笹野儀一

この短歌では、「たらちね」とだけあって「母」という言葉はありませんで、たらちねがそのまま「母」を表す代名詞のように使われています。

「墳(つか)」というのは墓の意味で、「母の墓」というのがこの部分の訳として適当ですので、その場合は、意味をくみ取って「母の」とする必要があります。

このような例はまれですが、広く知られた枕詞だと、このような用法も可能です。

 

ここから以下は上記以外の、掛詞他の修辞法、本歌取り 体言止め 見立て 折句 比喩について解説します。

 

本歌取りとは

本歌取りというのは、これらの言葉のレベルでの技法ではなくて、元の歌をそっくりまねて、新しい歌を作る方法を言います。

本歌取りは万葉集の時代から大変多く見られ、和歌作成の方法としてその時代には抵抗なく推奨されていました。

本歌取りの例

たとえば、藤原定家の

こぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くやもしほの身もこがれつつ

万葉集の

「 松帆の浦に 朝なぎに 玉藻刈りつつ 夕なぎに 藻塩焼きつつ 海人娘人(あまおとめ)」

から作られたもので、この歌の本歌取りがなされているということになります。

「松帆の浦」の地名、「朝なぎ」から「夕なぎ」、「焼く」「藻塩」などが共通しています。

他にも、藤原俊成の

夕されば野辺の秋風身にしみて鶉鳴くなり深草の里

伊勢物語の

野とならば うずらとなりて 鳴きをらむ かりにだにやは 君は来ざらむ

この歌の本歌取りです。

 

体言止めの和歌の例

体言止めは、結句の最後が体言、つまり名詞で終わる和歌のことをいいます。

体言止めの例としては

体言止めの歌は見分けは難しくありませんので、すぐ見つかると思います。

 

見立ての和歌の用例

見立てというのは、文字通りあるものを他のものに見立てる、そのようにして構成した歌です。

み吉野の山べにさけるさくら花雪かとのみぞあやまたれける

意味は「吉野山のほとりに咲いている桜の花は、雪ではないかと見違えてしまったものよ」

「みまちがえてしまった」として、桜の花を雪に見立てています。

 

春来れば宿にまづ咲く梅の花 君が千歳のかざしとぞ見る

意味は「春になると家に咲く梅の花を君の頭を飾るかんざしと思って見ては愛でている」

梅の花を、思う人の髪飾りに見立てています。

見立てと比喩の違い

上の歌はそれぞれ 「雪かとあやまたてける」「かざしとぞ見る」として、自分の見た目で見間違えた、とかあえてそのように見たとなっています。

これが比喩であれば、「雪のようなさくら花」や「あなたの髪飾りのような梅の花」という表現となります。

一つ比喩の歌をあげてみましょう。

花のごと世のつねならばすぐしてし昔は又もかへりきなまし

初句の「毎年咲く花のように」というのが比喩の部分です。

全体の意味は「花のように過去が毎年めぐってくるのがこの世で当たり前のことであるなら、昔にもう一度かえれるものを」。

美しかった過去を循環する季節に咲く花にたとえて、思い出を現実に取り戻したいという願いを表しています。

 

折句の和歌の用例

折句を使った代表的な和歌は、在原業平と紀貫之の下の歌がたいへん有名です

から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬるたびをしぞ思ふ
-在原業平

小倉山峰立ちならし鳴く鹿の経にけむ秋を知る人ぞなし
-紀貫之

それぞれの折句をわかりやすいように表示すると

らころも
つつなれにし
ましあれば
るばるきぬる
びをしぞおもふ

 

後の歌は

ぐらやま
ねたちならし
くしかの
にけむあきを
るひとぞなき

 

ツイッターなどで言葉遊びとして現代でも活用されていますね。

※折句の詳しい説明は下の記事をお読みください

折句とは 和歌の技法「かきつばた」「をみなえし」と沓冠の用例




-和歌の知識
-

error: Content is protected !!