教科書の短歌

掛詞 縁語 序詞 本歌取り 和歌の修辞技法をわかりやすく解説

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掛詞、縁語、序詞は和歌でよく使わる、短歌独特の修辞、表現方法です。

掛詞とはなにか、その他に、本歌取りと合わせて、わかりやすく解説します。

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和歌の修辞

和歌・短歌の表現方法は「修辞」と呼ばれます。

なかでも、和歌には様々な技法があります。

普段の言葉では使わないものだけに、聞きなれないものが大半ですが、難しいものではありません。

掛詞、縁語、序詞、そして本歌取りについて、憶えやすいように解説します。

 

掛詞・縁語・序詞の比較

それぞれの概要です

掛詞 かけことば同音異義を利用して1語に2つ以上の意味を持たせる修辞技法
序詞 じょことば特定の語の前に置いて その語を導き出すための文節
縁語 えんご意味上関連する語を連想的に2つ以上用いる修辞技法
枕詞 まくらことば単語一語で次の語にかかる決まった言葉

このうち、歌によって内容が変化するのは序詞と、掛詞で、枕詞は昔から決まっている「たらちね」や「ぬばたまの」などの一語の単語をいいます。

掛詞・縁語・序詞の意味と訳

掛詞 かけことば意味のある言葉で、訳す必要がある
序詞 じょことば意味のある言葉で、訳す必要がある
縁語 えんご意味のある言葉で、訳す必要がある
枕詞 まくらことば意味のない言葉がほとんどで、訳す必要はない

 

掛詞・縁語・序詞の代表的な例

それぞれの代表的な例をあげます。

掛詞の用例

大江山いく野の道のとほければまだふみもみず天の橋立

作者:小式部内侍(こしきぶのないし)の百人一首にある歌です。

意味は、「大江山へ行く道は遠いので、まだ天の橋立には行ったことがありません」というもの。

「いく」が掛詞

「いくの」は「生野」という地名で、それに「行く」を掛けている、これが掛詞です。

「ふみ」の掛詞

そしてもう一つ「ふみ」は、足で「踏む」と手紙の意味の「文―ふみ」を掛けています。

この歌にはその二つの掛詞が使われています。

「文」と「踏み」「生く(野)」と「行く」の、同じ音の「ふみ」と「いく」を、それぞれ違う言葉で両方の意味を持たせて使う、これが掛詞の使い方です。

掛詞の訳

この歌の場合は、「大江山の生野の道が遠いのでまだ、天の橋立を踏んだこともありません」というように訳されています。

「行く」と「文」は隠れてしまうことになりますが、その両方を入れて訳すことはできませんので、短歌としての意味が取れるように訳します。

たいていは、表に出ている方の言葉、この歌だと「生野」「踏み」の方をそのまま訳すことになるのが普通です。

 

序詞の用例

次は序詞を使った有名な和歌です。

あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む

「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」までが「長い」を導き出すまでの序詞(じょことば)です。

つまり、山鳥の尾は長いので、そのあとの「長い」を形容し、強調するために使うのです。

ここまでで17文字ある文節で、一つの短い言葉ではないことがわかります。

序詞の訳

この場合の現代語訳は、「あしびきの山鳥の尾の長く垂れさがったしだり尾のことではないが」のように「…ではないが」をつけることが多いです。

他には「あしびきの山鳥の尾の長く垂れさがったしだり尾のように」など「ように」をつけるなどしてもいいと思います。

序詞は、作者が工夫をして編み出した部分でもあるので、この部分に序詞があるということがわかるように訳せればベストです。

・・・

縁語の用例

縁語とは一首の中に意味上関連する語を連想的に2つ以上用いることで歌に情趣を持たせる、和歌の修辞技法です。

縁語の代表歌のように、いつも引用されるのが下の歌です。

長からむ心も知らず黒髪の乱れてけさは物をこそ思へ

「長い」「乱れ」は、髪の縁語とされています。

いずれも「髪」から連想できる言葉です。

作者は待賢門院堀河(たいけんもんいんほりかわ)。詳しくは、
長からむ心も知らず黒髪の乱れてけさは物をこそ思へ 待賢門院堀河

 

他にも、縁語を複数使った歌があります。

袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ

「結ぶ」「張る」「裁つ」「とく(解く)」は「袖」の縁語です。

この歌は、縁語を用いた、名歌とされています。

作者は、紀貫之 解説は下の記事に
袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ 紀貫之

 

枕詞の用例

枕詞を使った有名な歌を例に挙げます

あかねさす紫野行き標野(しめの)行き野守は見ずや君が袖振る

この歌の枕詞は「あかねさす」です。

枕詞は、次に続く言葉とセットになるものですが、「あかねさす」はこの歌では紫とセットになります。

「あかねさす」は他にも「昼」とセットになることもあります。

枕詞は他に、「ぬばたまの」「うつせみの」「あおによし」などのよく使われるものがあり、その一覧はこちらに記してあります。

特殊な言葉なので、一度見るとだいたい覚えられます。

他に枕詞で一番多くみられるのは、「母」とセットになる「たらちね」です。

枕詞の訳

枕詞は、それ自体の意味がよくわからない、あるいは、意味がないとされているものがほとんどなので、まず、訳す必要はあありません。

ただし、「たらちね」を使った現代短歌に次のような例があります。

枕詞「たらちね=母」の例も

胸内のしぶくが如き悔しさに百合突き立てるたらちねの墳(つか) 笹野儀一

この短歌では、「たらちね」とだけあって「母」という言葉はありませんで、たらちねがそのまま「母」を表す代名詞のように使われています。

「墳(つか)」というのは墓の意味で、「母の墓」というのがこの部分の訳として適当ですので、その場合は、意味をくみ取って「母の」とする必要があります。

このような例はまれですが、広く知られた枕詞だと、このような用法も可能であると思われます。

 

本歌取りとは

本歌取りというのは、これらの言葉のレベルでの技法ではなくて、元の歌をそっくりまねて、新しい歌を作る方法を言います。

本歌取りというのは、万葉集の時代から、大変多く見られ、和歌作成の方法として、その時代には抵抗なく推奨されていました。

たとえば、藤原定家の

こぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くやもしほの身もこがれつつ

万葉集の

「 松帆の浦に 朝なぎに 玉藻刈りつつ 夕なぎに 藻塩焼きつつ 海人娘人(あまおとめ)」

から作られたもので、この歌の本歌取りがなされているということになります。

「松帆の浦」の地名、「朝なぎ」から「夕なぎ」、「焼く」「藻塩」などが共通しています。

他にも、藤原俊成の

夕されば野辺の秋風身にしみて鶉鳴くなり深草の里

伊勢物語の

野とならば うずらとなりて 鳴きをらむ かりにだにやは 君は来ざらむ

この歌の本歌取りです。

以上、掛詞、縁語、序詞、枕詞、本歌取りについて、比較の上用例をあげて解説しました。







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