冬の空針もて彫りし絵のように星きらめきて風の声する
与謝野晶子の夜空の星を詠んだ短歌の現代語訳と意味、句切れと修辞、文法や表現技法などについて解説、鑑賞します。
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冬の空針もて彫りし絵のように星きらめきて風の声する
読み: ふゆのそら はりもてほりし えのように ほしきらめきて かぜのこえする
作者と出典
与謝野晶子
現代語訳
冬の澄んだ空気の満ちる空に、針の先で彫ったような星が散らばって輝ききらめいて、風の吹き過ぎる音がする
文法と語の解説
・針もて…針で
・彫りし…「し」は過去の助動詞 基本形「き」の連体形
表現技法
・句切れはなし
・比喩法
解説と鑑賞
夫である与謝野鉄幹を看取った後の与謝野晶子晩年の短歌とされる。
冬の夜空を詠った歌だが、全体的に口語的な語法を用いて、柔らかく歌っている。
「針もて」というのは、「針で」の意味で、針先でつついたような細かい星の群れを指すのだろう。
それがまるで「絵のように」、星の光が鮮明にみえるという。
ここでは、比喩を表すのに古い「ごとく」ではなく、より口語的な印象のする「ように」を用いている。
「風の声する」は風の音ではなく、擬人的な「声」を用い、さらに「す」の基本形ではなく、柔らかい印象のする「する」の連用止めを用いている。
冬の厳しい空気を連想する人もいるが、「風の声」は、激しく冷たい風とも思えない。
語法は柔らかく抒情的な風景を詠ったものだろう。