児もち山若かへるでの黄葉まで寝もと吾は思ふ汝は何どか思ふ
万葉集の東歌の有名な和歌、代表的な短歌作品の現代語訳、句切れと語句などを解説します。
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児もち山若かへるでの黄葉まで寝もと吾は思ふ汝は何どか思ふ
読み:こもちやま わかかえるでの もみずまで ねもとわはもう なはあどかおう
作者と出典
万葉集14巻 3494 作者不詳
現代語訳
あの児持山の春の楓の若葉が、秋になって紅葉するまでもお前と一緒に寝ようと思うが、お前はどう思うか
※万葉集の東歌一覧はこちらから
万葉集の原文
兒毛知夜麻 和可加敝流弖能 毛美都麻弖 宿毛等和波毛布 汝波安杼可毛布
句切れと表現技法
4句切れ 反復
語彙と文法
- 児持山 群馬県渋川町北にある山
- 「かへるで(蛙手)」は、カエデの古語
- 思う…読みは「もう」 東歌の方言ではなく一般に用いる
- 吾…読みは「わ」 自分のこと 私
- 汝…読み「な」 相手のことあなた
- 何どか…関東津法の方言「あどか」と読む
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解説と鑑賞
会話をそのまま歌にしたような直接性が目立つよく知られた東歌の作品。
児持山はその名の通り、女性や性崇拝の対象となる山という説がある。
相手との間に子どもを持つことも暗に含めており、長く夫婦として交わりたいという、求婚に似て思いを伝える歌であろう。
ただし、斎藤茂吉の解説にもある通り、これから契ろうという相手ではなく、既に知り合っている男女であることがうかがえる。
想像するに、通い婚を始めた男性が、思う以上に気が合うことがわかって、上のように相手に問いかけの形で表したという雰囲気がある。
ただし、上句は比喩であるので詩的な装飾が施されているのも言うまでもない。
斎藤茂吉の解説
斎藤茂吉はまた、この結句の短さの声調に注目している。
誇張するというのは既に肢体んでいる証拠でもあり、その親しみが露骨でもあるから、一般化し得る特色を持つのである。「汝は何どか思ふ」と促すところは、会話の語気その儘であるので感じに乗ってくるのである。―『万葉秀歌』斎藤茂吉