万葉集

「防人の歌」万葉集の代表的な作品・有名な秀歌一覧

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「防人の歌」代表作品、および有名でよく知られている作品、秀歌として取り上げられる作品をまとめました。

歌を詠んだのは、防人自身の他、兵士の家族たちです。

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万葉集の防人(さきもり)とは

防人とは、飛鳥時代から平安時代、東国などから派遣されて、3年交代で北九州の守備に当たった兵士たちのことです。

東国の濃密な村の共同体の中から、働き盛りの男たちが選ばれたのです。

遠い九州まで旅をして、家族と長いこと別れなければならず、家族との別れと望郷の念、悲嘆の気持ちを兵士も家族も歌に表しました。

それが、万葉集に収録され、今に至るまで防人の歌として詠み継がれているものです。

防人歌の生れた政治的な背景

中大兄の皇子が政治をとっていた、7世紀の後半、日本は唐・新羅の連合軍に白村江の戦いで大敗します。

そのため、その勢いで必ず彼らが日本に攻め込んでくるだろうと考えた朝廷では、筑紫や壱岐、対馬の守りに兵士を置くという防人の制度を定めました。

そうして召し出された防人は、ほぼ3年間九州の守りにつかなければなりませんでした。

徒歩と船、そして食料は自分で配給されるのではなくて、自分で調達するという危険で大変な旅であったのです。

そのなかでも一番の困難は、やはり家族との別れであり、任地での家族への思いでありました。

それらが思いのままに表された防人歌は、今でも万葉集を読む人の胸を打つ歌の一つとなっているのです。

 

万葉集の「防人歌」代表作品

防人の短歌・和歌は万葉集の14巻、それと20巻など、別々の巻に飛び飛びに入っているため、その中からよく知られた歌、秀歌とされている歌を、こちらにまとめました。

父母がかしらかき撫で幸くあれていひし言葉けとばぜ忘れかねつる

読み:ちちははが かしらかきなで さちあれて いひしけとばぜ わすれかねつる

作者と出典

丈部稲麻呂 はせつかべのいなまろ 万葉集巻20-4346

現代語訳

父母が私の頭を撫でてと無事であれと言った言葉が忘れられない

※この歌の詳しい解説は
父母が頭かき撫で幸くあれていひし言葉ぜ忘れかねつる/防人の歌

 

韓衣裾に取りつき泣く子らを置きてそ来ぬや母なしにして

読み:からころも すそにとりつき なくこらを おきてそきぬや おもなしにして

作者と出典

万葉集巻20-4401

現代語訳

衣服の裾に取りすがって泣く子供を置いてきてしまったことだ 母親もいないのに

※この歌の詳しい解説は
韓衣裾に取りつき泣く子らを置きてそ来ぬや母なしにして 防人歌

 

わが妻はいたく恋ひらし飲む水にかごさへ見えて世に忘られず

読み:わがつまは いたくこいらし のむみずに かごさえみえて よにわすられず

作者と出典

万葉集4322・若倭部身麻呂(わかやまとべのみまろ)

現代語訳

私の妻は私を深く思いこがれているに違いない。それで飲もうとする井戸の水の面にまで、妻の姿がありありと見えて、どうしても忘れられない

※この歌の詳しい解説は
わが妻はいたく恋ひらし飲む水に影さへ見えて世に忘られず/万葉集防人歌

 

防人に行くはが背せと問ふ人を見るがともしさ物ひもせず

読み:さきもりに いくはたがせと とうひとを みるがともしさ ものもいもせず

作者と出典

作者不詳 万葉集巻20-4425

現代語訳

「防人にいくのは 誰の旦那さんなの」と聞いている人がうらやましい。なんの憂いもないでしょうから

※この歌の詳しい解説は
防人に行くは誰が背と問ふ人を見るがともしさ物思ひもせず 表現技法/防人の歌

 

我が妻も画にかきとらむ暇もが 旅行く我は見つつ偲はむ

読み:わがつまも えにかきとらん いつまもが たびゆくあれは みつつしぬわん

作者と出典

万葉集巻20-4327 物部古麻呂(もののべのこまろ)

現代語訳

私の妻を絵に描き写す暇があればよいのに これから旅立つ私はそれを見ながら妻を偲ぼう

※この歌の詳しい解説は
我が妻も画にかきとらむ暇もが 旅行く我は見つつ偲はむ 防人歌

万葉集の「防人歌」秀歌一覧

防人歌の他の秀歌作品です。

秀歌とされているものは、主に、斎藤茂吉の『万葉秀歌』他、既存のテキストを元に選出しています。

――

うゑたけの本さへ響み出でて去なば何方向きてか妹が嘆なげかむ 〔巻十四・三四七四〕 東歌

あが面の忘れむ時しだは国溢り峰に立つ雲を見つつ偲ばせ 〔巻十四・三五一五〕 東歌

対馬の嶺は下雲あらなふ上の嶺にたなびく雲を見つつ偲ばも」(巻十四・三五一六)

さきもりに立たちし朝けの金門出に手放れ惜しみ泣きし児こらはも 〔巻十四・三五六九〕 東歌・防人

葦の葉に夕霧立たて鴨が音の寒き夕べし汝をば偲ばむ 〔巻十四・三五七〇〕 東歌・防人

わが妻も画にかきとらむ暇もが旅行ゆく我は見つつ偲ばむ 〔巻二十・四三二七〕 防人

大君の命かしこみ磯に触り海原わたる父母を置きて 〔巻二十・四三二八〕 防人

水鳥の立ちのいそぎに父母に物言はず来(け)にて今ぞ悔しき(巻二十・四三三七)

忘らむと野行き山行き我来れど我が父母は忘れせぬかも(同・四三四四)

橘の美衣利みえりの里に父を置きて道の長道ながては行きがてぬかも(同・四三四一)

吾等(わろ)旅は 旅と思ほど 家にして子持ち廋(や)すらむわが妻(み)かなしも〔巻十四・四三四三〕

百隈の道は来にしをまた更に八十島過ぎて別れか行かむ 〔巻二十・四三四九〕 防人

蘆垣の隈所に立ちて吾妹子が袖もしほほに泣きしぞ思もはゆ 〔巻二十・四三五七〕 防人

大君の命かしこみ出で来くれば我ぬ取り着きていひし子なはも 〔巻二十・四三五八〕 防人           ○

筑波嶺のさ百合の花の夜床にも愛しけ妹ぞ昼もかなしけ 〔巻二十・四三六九〕 防人

あられ降り鹿島の神を祈りつつ皇御軍に吾は来にしを 〔巻二十・四三七〇〕 防人

ひなぐもり碓日の坂を越えしだに妹が恋ひしく忘らえぬかも 〔巻二十・四四〇七〕 防人

小竹が葉のさやぐ霜夜に七重着かる衣にませる子ろが膚はも 〔巻二十・四四三一〕 防人

以上、防人歌の代表作品をご紹介しました。

「万葉秀歌」は万葉集解説のベストセラーです。防人の歌と詳しい解説は下巻に収録されています。







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