百人一首には枕詞が使われた和歌が6首あります。
使われた枕詞と和歌及び作者を現代語訳と共にご紹介します。
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枕詞とは
枕詞というのは、和歌に使われる特有の言葉のことです。
使われる言葉は決まっており、全部で千くらいに及ぶそうですが、使われる言葉は良く聞くもので「たらちね」や「ぬばたまの」など、決まっている特有の言葉です。
枕詞それ自体には意味はありませんが、枕詞を取り入れることで、歌の調子を整えたり、次に続く言葉の意味を強めたりする特有の働きがあります。
枕詞についての詳しい解説は
枕詞とは 意味と主要20一覧と和歌の用例
百人一首の有名な代表作和歌20首!藤原定家選の小倉百人一首とは
百人一首の枕詞
百人一首に枕詞が用いられている歌は案外少なく、以下の6首です。
春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香久山
ちはやぶる神代も聞かず竜田川から紅に水くくるとは
陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに
ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
わたの原 こぎ出でてみれば 久方の 雲ゐにまがふ 冲つ白波
百敷や ふるき軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり
使われている枕詞はそれぞれ
- 「白妙の」
- 「ちはやぶる」
- 「みちのくの」
- 「ひさかたの」
- 「百敷」
の5種類となります。
それぞれの、枕詞、現代語に訳せるような意味はありませんが、それぞれの言葉から引き出す言葉を一覧にすると、下のようになります。
枕詞と対応する言葉
白妙の (しろたへの) | 衣・袂・紐・帯・袖・たすき・雲・雪 |
ちはやぶる | 神・宇治・氏(うぢ) |
みちのくの | 忍ぶ 偲ぶ |
久方の (ひさかたの) | 天(あめ、あま)・雨・月・空・光 |
百敷(の) | 宮中 |
百人一首の枕詞を用いた歌の、作者と現代語訳は以下の通りです。
「白妙の」の枕詞
春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香久山
読み:はるすぎて なつきみけらし しろたえの ころもほすちょう あめのかぐやま
作者
持統天皇 百人一首2
現代語訳
春が過ぎて夏が到来したようだ 天の香具山に白い夏衣が干してあるのを見るとそれが実感できる
「ちはやぶる」の枕詞
ちはやぶる神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは
読み:ちはやぶる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みづくくるとは
作者と出典
在原業平朝臣(
現代語訳と意味
不思議なことが多かった神代にも聞いたことがない。龍田川が、水を美しい紅色にくくり染めにするなんて
在原業平については
在原業平の代表作和歌5首 作風と特徴
「みちのくの」の枕詞
読み:みちのくの しのぶもじずり たれゆえに みだれそめにし われならなくに
作者と出典
作者:河原左大臣 (かわらのさだいじん)
出典:百人一首 新古今和歌集、伊勢物語
現代語訳:
みちのくの 摺り衣のしのぶもぢずりの模様のように、あなたではない他の誰のために心が乱れはじめる私ではないのに
「ひさかたの」の枕詞
久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
読み:ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづこころなく はなのちるらん
作者と出典
紀友則 古今和歌集 百人一首33
現代語訳と意味
日の光がのどかな春の日に、どうして落ち着いた心もなく桜の花は散っていくのだろうか
「わたのはら」の枕詞
わたの原こぎ出でてみれば久方の雲ゐにまがふ冲つ白波
読み:わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもいにまごう おきつしらなみ
作者と出典
法性寺入道前関白太政大臣 百人一首76番
現代語訳と意味
大海原に漕ぎ出して見渡すと、雲かと見まがうばかりの沖の白波だ
※この歌の解説を読む
「百敷」の枕詞
百敷やふるき軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり
読み:ももしきや ふるきのきばの しのぶにも なおあまりある むかしなりけり
作者と出典
順徳院 百人一首100番
現代語訳と意味
宮中よ。古い屋敷の軒端に生えるしのぶ草を見ても、古きよき時代を偲び切れない思いにかられる
※「百敷」は古くは「百敷の」との枕詞であったが、ここでは、宮中の代名詞的な使われ方をしています。
以上、枕詞の使われている百人一首の和歌を取り上げました。