人も馬も道ゆきつかれ死ににけり。旅寝かさなるほどのかそけさ 釈迢空  

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人も馬も道ゆきつかれ死ににけり。旅寝かさなるほどのかそけさ 釈迢空

2023年6月30日

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人も馬も道ゆきつかれ死ににけり。旅寝かさなるほどのかそけさ 釈迢空の代表的な短歌作品の現代語訳と句切れ、表現技法について記し ます。

教科書や教材に取り上げられる作品です。

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人も 馬も 道ゆきつかれ死ににけり。旅寝かさなるほどのかそけさ

読み:
ひともうまも みちゆきつかれ しににけり たびねかさなる ほどのかそけさ

作者と出典

釈迢空 『海やまのあひだ』

関連記事:
釈迢空の短歌代表作

現代語訳と意味

人も馬も旅路に疲れて死んでしまったのだなあ。自分が旅を続けるほど、細々とした気持ちになっていくよ

※釈迢空の他の短歌
葛の花踏みしだかれて色あたらしこの山道を行きし人あり 釈迢空

教科書の短歌2 中学校高校教材の現代歌人/寺山修司,俵万智,栗木京子,穂村弘

語句の意味と文法解説

  • 旅寝・・・常の住まいを離れてよそで寝ること 「旅枕」「草枕」も同じ
  • かさなる・・・基本形「重ぬ」 ここでは旅ねが続くこと
  • 道ゆきつかれ・・・「道を行く」と「疲れる」を合わせた造語のよう。
  • かそけさ・・・形容詞の基本形「かそけし」の名詞形
    意味は「かすかで、今にも消えそうなさま」

「死ににけり」品詞分解

  • 死ぬの基本形+完了の助動詞「ぬ」の連用形
  • 「けり」は詠嘆の助動詞 「・・・だなあ」「・・・ことよ」などと訳せる

句切れと修辞・表現技法

・3句切れ

・通常、それまでの短歌には使われない読点と字空けが使われている

・体言止め

読点と字空けの採用について

釈迢空は、アララギに最初加入したが、脱退後、北原白秋の『日光』などに参加。

写実派のアララギに対し、『日光』は象徴的な作風を目指しており、作者は、アララギでは用いなかった読点や字空けを採用するようになっている。

このようなスタイルは、伝統を離れたところの新しい短歌を作ろうという試みだろう。

解説と鑑賞

釈迢空の代表的な作品の一つ。

一連の作の一首で下の詞書がある。

背景と詞書

この歌の背景は詞書に詳しく説明されている

数多い馬塚の中に、ま新しい馬頭観音 の石塔婆の立っているのは、あはれである。又殆ど、峠毎に、旅死にの墓がある。中には、業病の姿を家から隠して、死ぬまでの出た人のなどもある。

歌にこめた作者の心情

一連のポイントは、「旅人の墓」を憐れむ作者の心情にある。

故郷にも目的地にもたどり着かずに、旅の途中に倒れてなくなってしまった人が、名前もわからないで、ひっそりとそのまま葬られている。

旅を続けて歩き続けるほどに、ここにもそこにも墓がある。

そして人だけではなく、人が連れていた馬の墓まであるとすると、これはもう歩き疲れて死んだのだろうということが推測できる。

そして、そのような墓を見続けていると、旅を続けている自分も命の終わりを思わないではいられない。

旅の途中、目的地に着かないで死ぬとは、思わぬところで人生を途中で終わるという予測できず、防ぎようもないことである。

旅人の墓を見たことから心に湧き起こるはかなさが作者の心情であり、歌の主題である。

一連の短歌

道に死ぬる馬は、仏となりにけり。行くとどまらむ旅ならなくに

邑山の松の木むらに、日はあたり ひそけきかもよ。旅人の墓

ひそかなる心をもりて、をはりけむ。命のきはに、言うこともなく

ゆきつきて 道にたふるゝ生き物のかそけき墓は、草つゝみたり

 

「ほどの」の表現に関して

人も馬も道ゆきつかれ死ににけり。旅寝かさなるほどのかそけさ

この「ほどの」というのは、斎藤茂吉の『赤光』に用例がある。

斎藤茂吉の用例

細みづにながるる砂の片寄りに静まるほどのうれひなりけり

さにづらふ少女ごころに酸漿(ほほづき)の籠らふほどの悲しみを見し

『赤光』はたいへん有名な歌集で、当時は模倣されるのが当たり前だったので、折口の歌もこの表現を参考にしたものと思われる。

なお元々は万葉集に用例か類似の表現があったと思う。(失念したので後ほど書き足そうと思います)

「かそけさ」の解釈

茂吉の歌なら、砂が寄って静まるというようなその程度の軽い憂い、二首目は、ほおづきの中の赤い実のように表に現れない小さな悲しみであるという程度を表す「ほどの」の意味である。

ただ、折口の歌は「旅寝かさなるほどのかそけさ」で、やや意味が取りにくい。

「かさなる」は「同じ事が繰り返し起こる。たびかさなる」の意味なので、旅寝が続くほどに「かそけし」の気分になるということと理解する。

茂吉の方をまねていうなら「日常的にではなく旅寝が続く時に感じるほどのその程度のかすかな思い」というような理解もありうる。

「かそけき」の意味

折口の一連には、

ゆきつきて 道にたふるゝ生き物のかそけき墓は、草つゝみたり

もあるので、こちらは痕跡の薄い墓なのであろう。

「人も馬も道ゆきつかれ旅寝かさなるほどのかそけさ」の抽象名詞の「かそけさ」とは、形容する対象が違い、「旅寝かさなるほどのかそけさ」は墓ではない。

そもそも、「人も馬も道ゆきつかれ死ににけり旅寝かさなるほどのかそけさ」には「墓」という言葉は入っていない。

釈迢空について

折口 信夫(おりくち しのぶ)は、日本の民俗学者、国文学者、国語学者。柳田國男の高弟として民俗学の基礎を築いた。

釈迢空は、短歌の筆名。國學院大學の教授。《アララギ》同人ののち北原白秋らと《日光》を創刊した。

歌人の岡野弘彦は弟子にあたる。

歌集は『海やまのあひだ』『倭(やまと)おぐな』など。

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