10日に訃報が伝えられた歌人の岡井隆さん、前衛短歌運動などで戦後の短歌会をけん引されました。
これまでのたくさんの印象深い作品が思い起こされます。
きょうの日めくり短歌は、岡井隆さんの「歌といふ傘をかかげてはなやかに今わたりゆく橋のかずかず」をご紹介します。
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読み:うたという かさをかかげて はなやかに いまわたりゆく はしのかずかず
作者、岡井隆。歌集は『禁忌と好色』’82年。
10日に訃報の伝えられた岡井隆さん、17歳でアララギ入会とのことで、代表作品が集めにくいくらい歌集も作品も多く、印象に残った短歌がたくさんあります。
上の歌は、歌を傘にたとえたもので、美しい比喩が印象的な一首です。
岡井隆氏には短歌というものを、やや離れて見た作品が他にもあります。
歌はただ此の世の外の五位の声端的にいま結語を言へば
歌集『鵞卵亭』より
時代を中世に遡行するような不思議な雰囲気のする作品です。
他にも、歌集最後に置かれた歌
以上簡潔に手ばやく叙し終りうすむらさきを祀(まつ)る夕ぐれ
歌集『天河庭園集』より。
これも書いている自分をふと外側から見たような視点が独特です。
「紫」は岡井氏のテーマカラーのようなものだったとどこかで読んだ記憶があります。
膨大な数の作品に接するたびに、あらためて偉大な歌人という思いを深くするところです。
今日の日めくり短歌は、訃報が伝えられた岡井隆さんの短歌を紹介しました。
岡井隆プロフィール
岡井 隆(おかい たかし)1928年生
日本の歌人・詩人・文芸評論家。未来短歌会発行人。日本藝術院会員。塚本邦雄、寺山修司とともに前衛短歌の三雄の一人。
1993年から歌会始選者となり宮廷歌人となったが、そのことに対して歌壇では批判と論争が巻き起こった。
2007年から宮内庁御用掛。2016年、文化功労者選出。(ウィキペディアより)
他の岡井隆さんの短歌代表作品については、この後の別記事で紹介しています。
約しある二人の刻を予ねて知りて天の粉雪降らしむるかな 岡井隆【日めくり短歌】
肺尖にひとつ昼顔の花燃ゆと告げんとしつつたわむ言葉は 岡井隆【日めくり短歌】
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