梅の短歌・和歌まとめ 現代短歌と万葉集、新古今和歌集から  

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梅の短歌・和歌まとめ 現代短歌と万葉集、新古今和歌集から

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皆さんのところでは、もう梅の花は咲きましたか。

今日は梅の短歌を集めてみました。前半は万葉集と古今集、後半は現代の短歌からです。
どうぞ、梅の香りを楽しみながら、鑑賞してくださいね。

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目次

梅の短歌 万葉集の時代

新元号「令和」のある、序文部分と、万葉集の「梅花の歌」は下の記事にあります。

闇ならばうべも来さまじ梅の花咲ける月夜に出でまさじとや 

【作者と出典】
紀女郎 万葉集

【読み】
やみながらうべもきまさじ うめのはな さけるつきよに いでまさじとや

【歌の意味】
梅の花の咲いているこの月夜の晩に、おいでにならないというのでしょうか、いえ、おいでなさってくださいね

春さればまづ咲くやどの梅の花一人見つつや春日暮らさむ

【作者と出典】
筑前守山上大夫 万葉集

【読み】
はるさればまずさくやどのうめのはな ひとりみつつやはるひくらさん

【歌の意味】
春になるとまず咲く我が家の梅の花を、一人で見ながら、春の日を過ごそう

 

 

梅の短歌 古今集の時代

春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やは隠るる

【作者と出典】
凡河内躬恒 (おおしこうちのみつね)(古今和歌集)

【歌の意味】
春の夜の闇はわけのわからないものだ。梅の花はの色は見えないかもしれないが、香は隠れるものだろうか、いや、隠れはしないのだ。

吹く風をなにいとひけむ 梅の花散りくる時ぞ香はまさりける

【作者と出典】
凡河内躬恒(拾遺集30)

【歌の意味】
吹く風をどうして厭おうか、梅花は散るときこそ薫り高くなるのだから

人はいざ心も知らずふるさとは 花ぞむかしの香ににほひける

【作者と出典】
紀貫之(古今集)

【歌の意味】
人の心はさあどうだかわかりませんが、慣れ親しんだこの土地では、梅の花が昔とかわらず、すばらしい香になって匂っていることだよ。

【解説】
百人一首に選ばれた有名な一首。

こちふかばにほひをこせよ梅のはな あるじなしとて春なわすれそ

【作者と出典】
菅原道真 (拾遺和歌集)

【意味】
 春の東風が吹いたら、また美しい花を咲かせておくれ、梅の花よ。主がいなくても、春に花咲くのを忘れてくれるなよ。

【解説】
道真が京の都を去る時に詠んだ。その梅が、京の都から一晩にして道真の住む屋敷の庭へ飛んできたという「飛梅伝説」もある。

春やとき花やおそきと聞き分かむ鶯だにも鳴かずあるかな

【作者と出典】
藤原言直 (古今和歌集)

【意味】
春になったのに、まだ梅の花が咲かないのは、春の来るのが早すぎたのか、花の咲くのが遅すぎるのかと、聞いて判断しようと思うそのうぐいすさえも、まだ鳴かずにいることよ。

雪ふれば木ごとに花ぞさきにけるいづれを梅とわきてをらまし

【作者と出典】
紀友則 (古今和歌集)

【意味】
雪が降ればすべての木に花が咲いたようで、そのどれが梅だと見分けをつけて折れるだろうか

朝あけの窓吹きいるる春風にいづくともなき梅が香ぞする

【作者と出典】
二条為世(新拾遺)

【意味】
朝の窓から入ってくる春風にどこからともなく梅の香りがする

心あらばとはましものを梅が香にたが里よりかにほひ来つらん

【作者と出典】
源俊頼 (新古今和歌集)

【意味】
もしも心があるなら梅の香に聞いてみたいものだ。いったいお前は誰のいる里よりに掘ってきているのかと

梅の短歌 現代の短歌から

現代短歌とそれに近い時代の、梅を詠んだ短歌です。
解説ではなく感想を入れます。

野の道に咲ける白梅善き人のあたり見まはして枝折りて行く

【作者】正岡子規

古典的な主題ではなく、梅を詠んで愉快な感じのする歌です。

春雨に梅が散りしく朝庭に別れむものかこの夜過ぎなば

【作者】長塚 節

作者は、結核を発病して、婚約者とも別れなければなりませんでした。
おそらく別れを意識した夜のことを詠ったものでしょう。

紅梅の花にふりおけるあわ雪は水をふくみて解けそめにけり

【作者】島木赤彦
紅梅と雪との取り合わせ。写生の技術、描写が生きる歌です。

戸のあおく待つ間もさむき軒の月ひかり照りそふ白梅のはな

【作者】中村憲吉

憲吉独特の、感覚的で幻想的な美しい歌です。

梅の花うすくれなゐにひろがりしその中心にてもの栄ゆるらし

【作者】斎藤茂吉

梅の中心の薄赤い部分という細かい観察で、下の句は独創的な思い付きです。

梅が香に人なつかしきこのごろとわれまづかきぬ京へやる文

【作者】与謝野鉄幹

手紙の相手は与謝野晶子でしょう。結婚に至る前の恋文の出だしに梅を香らせる、にくい手紙ではないでしょうか。

恋に病みけふしぬほどにいとあつきをとめにふらせ紅梅の露

【作者】山川登美子

恋愛ではライバルの与謝野晶子に負けたとはいえ、登美子の歌は歌で素晴らしい。そして、ひかえめながら情熱的ですね。

憂(うれひ)なくわが日々はあれ紅梅の花すぎてよりふたたび冬木

【作者】 佐藤佐太郎

生活上の悩みが多かった作者。

春一番吹きくる土手にうたふかな馬・海・産む・梅うまうみうむうめ

【作者】栗木京子

「うめ」を含む言葉遊びの歌。

針の穴一つ通してきさらぎの梅咲く空にぬけてゆかまし

【作者】馬場あき子

あるいは、自らの死の在り方をうたったものかもしれません。

てのひらに載るほど遠景の夫(つま)子らを紅梅の木ごと掬はむとせり

【作者】河野裕子

観梅で梅と共に見る家族の姿。「たつたこれだけの家族であるよ子を二人あひだにおいて山道のぼる」も思い出します。
他に「灯ともれる家にはわたしが待つことを必ず忘るな雨の桜梅(ゆすらんめ)」

思いきり枝はらわれしあわいより伸びたる枝に梅花一輪

【作者】玉井 清弘

正確なデッサンです。梅の枝というのは、新しく伸びる枝はまっすぐです。枝ぶりは良くないのですが、目立つその枝先の花をうたっています。

紅梅はここにもありておのづから人は仰ぎゆくこずゑを空を
白梅(しらうめ)の花すぎてより目に立てる萼(がく)のくれなゐはまた花と見ゆ
庭のうめ花二三輪のこれるは咲きそめのころに似てうひうひし

【作者】上田三四二

いずれも美しい歌。大辻隆弘さん解説の日経新聞の欄より。

多義的な午後の終わりに狩野派の梅だけがある武蔵野の春

【作者】俵万智

初句の「多義的な」が印象的です。雑多な午後に、狩野派の水墨画のような梅が、その地の春であると詠います。

終りに

梅の短歌、目についたものだけを探して拾ってみましたが、いかがでしたでしょうか。

もうすぐ梅の季節、そして、それが過ぎると待ち遠しい春がやってきます。

 




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