万葉集

防人に行くは誰が背と問ふ人を見るがともしさ物思ひもせず 表現技法/防人の歌

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防人に行くは誰が背と問ふ人を見るがともしさ物思ひもせず

万葉集の有名な防人の歌の代表作品を解説・鑑賞します。また防人とは何か、東歌の特徴も併せて記します。

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防人に行くはが背せと問ふ人を見るがともしさ物ひもせず

読み:さきもりに いくはたがせと とうひとを みるがともしさ ものもいもせず

作者と出典

作者不詳 万葉集巻20-4425

現代語訳

「防人にいくのは 誰の旦那さんなの」と聞いている人がうらやましい。なんの憂いもないでしょうから

万葉集の原文

佐伎毛利尓 由久波多我世登 刀布比登乎 美流我登毛之佐 毛乃母比毛世受

句切れ

4句切れ

語彙と文法

・誰・・・「た」と読む

・背・・・夫の意味

・ともしさ…「ともし=羨し」の名詞形 うらやましいとの意味

・「さ」・・・形容詞・形容動詞の語幹、一部の助動詞の語幹に準じるものに付いて名詞をつくり、…の状態であること、…の程度であること、…の性質であることの意を表す。

・「物思い」…「思」は「も」と読む。心労、気苦労、憂いとの意味。

・せず…「せ」は 基本形「す」。意味は「する」

・「ず」・・・打ち消しの助動詞「~ない」の意味




解説と鑑賞

防人に贈られた夫のことを詠んだ妻の歌で、防人歌分の中でも、秀歌として特に高く評価されている一首。

一連8首の内の1首目の歌。8首の配列は、時間順に出発前から出発後、さらに出発から時を経ての歌までとなっている。

作者は、まさに自分が夫を防人として見送らなければならない立場の人であって、「防人に行くのは誰の旦那さんなの」と他人事として話をしている他の女がに何の心配事がないとして、自分の心持と対照させることで、夫を送り出さなければならない心の苦衷を表している。

一首の構成

防人に行くは誰が背と問ふ人を見るがともしさ 物思ひもせず

一首の構成は、4句切れ、その後の「物思ひもせず」の結句は倒置の部分であるが、これは本来「問う人の物思ひもせず」として3句にあるべき部分だが、「あえて当地のして強調した」語順であるといわれている。

統治によって強調された「物思ひ」が、作者の憂いであることが強調され、また結句において余情を響かせることになっている。

防人の妻はどこにいたか

この歌がどのような場面で歌われたのかは、さまざまな意見がある。

作者が「誰が背」と問いかけたところからすると、他の妻もいたことになり、防人が出立するところに他の人々も居合わせたのかどうかということだが、研究によると、狭い地域で見知らぬ人が混じることはないという。

おそらく防人の無事を祈る宴などで、伝えられ歌い継がれてきた、別れの歌「悲別歌」との見方が強い。

時を経て繰り返し共感を持って繰り返し歌われてきたものであろう。

一連8首

一連8首 4425-4432は下の通り。

「右の八首、昔年の防人が歌なり。(中略)上磐余伊美吉諸君(いわれのいみきもろきみ)が抄寫し、兵部少輔(ひょうぶしょうしょう)大伴宿祢家持(おおとものすくねやかもち)に贈る」との説明がある。

防人(さきもり)に行くは誰が背と問ふ人を見るが羨(とも)しさ物思ひもせず

天地の神に幣(ぬさ)置き斎(いは)ひつついませ吾が背な吾をし思(しの)はば

家の妹ろ吾(わ)を偲ふらし真結ひに結ひし紐の解くらく思(も)へば

吾が背なを筑紫は遣りて愛(うつく)しみ帯(えひ)は解かななあやにかも寝む

馬屋なる縄立つ駒の後(おく)るがへ妹が云ひしを置きて悲しも

荒し男(を)のい小矢(をさ)手挟み向ひ立ちかなる汝(まし)罪(つみ)出でてと吾が来る

笹が葉のさやぐ霜夜に七重(ななへ)着る衣に増せる子ろが肌はも

障(さ)へなへぬ命にあれば愛(かな)し妹が手枕(たまくら)離(はな)れあやに悲しも

防人とは

防人(さきもり)とは、飛鳥時代から平安時代の間に課せられていた税の1つ。

当時は、税金をお金ではなく、現物や労働で納めていた。

防人は、天皇の命により、北九州の警護を担当する仕事、戦争をしたわけではないが、当時の旅行は今よりも危険なものであり、防人の家族たちは、悲しみの情を余儀なくされた。

これらの防人の歌は、大伴家持によって集められ書き留められた。

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