『万葉集愛の100首』新刊案内 中西進が選ぶ珠玉の「恋愛」の和歌  

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『万葉集愛の100首』新刊案内 中西進が選ぶ珠玉の「恋愛」の和歌

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『万葉集愛の100首』、新元号「令和」の発案者といわれる中西進先生の新刊案内が、新聞に掲載されました。

「恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽してよ長くと思はば」他の『万葉集愛の100首』に収録された和歌と、内容についてお知らせします。

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『万葉集愛の100首』中西進著

中西進著 『万葉集愛の100首』紹介文より。

国文学者・中西 進が選んだ、珠玉の「愛」の歌

新元号「令和」の典拠となったことで話題となった『万葉集』。
その日本最古の歌集には、4500余首もの歌が収録されています。
そして、『万葉集』に集められた歌の多くが、
人を思い、恋する――おおらかで自由な恋愛を歌っています。
万葉研究の第一人者、国文学者の中西進が「愛」をテーマに100首を厳選。
原文、現代語訳とあわせ、それぞれの歌に込められた「想い」、歴史的背景や物語などを解説します。

そして、中西先生は万葉集をどのように考えているのかというと、

では、一言で『万葉集』とは「何なのか」といえば、
わたしの一言の答えは、
「愛の歌集です」ということに尽きる。
――(「はじめに」より)

 

そして、その「愛の歌」を紹介するというのが今度の本の内容です。

万葉集の「愛の歌」について

万葉集の短歌の分類は、雑歌(ぞうか)、挽歌(ばんか)、相聞(そうもん)の三つです。

相聞は、多く「恋愛の歌」と紹介されますが、正確には、男女だけではなく、親子・兄弟姉妹・友人など親しい間柄で贈答された歌を含みます。

相聞に分類される歌の数は1750首。万葉集の全体四千五百首余りの3分の1を超えるものとなっています。

その中から中西先生の選りすぐりの100首というのは、ぜひ知りたいですね。

 

今回紹介される「愛の歌」とはどのようなものがあるのか、本の紹介から拾ってみると、筆頭に挙げられるのが、

恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽してよ長くと思はば

(坂上郎女/巻四・六六一)

読みと意味は、それぞれ

読み

こいこいて あえるときだに うつくしき ことつくしてよ ながとくもわば

歌の意味

恋い焦がれてようやくお会いしたときだけでも、せめて愛しい言葉のありったけを言い尽くして聞かせてください。
二人の間が長く続くようにとお思いになるのなら

この歌は、よく万葉集の「愛の歌」の代表作品として他でも取り上げられます。

愛しき言尽してよ」という部分が、現代の言葉にも通じるものがあるためでしょう。

 

他には、柿本人麻呂歌集の下の歌

桜花咲きかも散ると見るまでに誰れかもここに見えて散り行く

柿本人麻呂歌集 巻12-3129

読み

さくらばな さきかもちると みるまでに たれかもここに みえてちりゆく

現代語訳と意味

桜の花が咲き散るのかと思うほどに、誰なのだろう、ここに見えて散っていくのは

人麻呂歌集の歌にある、作者不詳の歌。

2、3句の「咲きかも散るとみるまでに」にあわただしさが表されています。桜の花が咲いたり散ったりする、その花期の短さになぞらえて、旅する人の往来、そのはかなさを表しました。

きれいな歌ではないのですが、桜の花のはかなさに通じるものがあるとしています。

 

もう一首は東歌から

人妻と何かそをいはむ然らばか隣の衣を借りて着なはも

東歌/巻一四・三四七二

読み

ひとづまと あどかそをいわん しからばか となりのころもを かりてきなわも

意味

人妻だということばかりをなぜそう言うのか、そうなれば、人の着物を借りて着ないとでも言うのか

こちらは東歌(あずまうた)の歌。

東歌というのは、当時の東国と呼ばれた、駿河,伊豆,信濃,相模,武蔵,上総,下総,上野,下野,常陸,陸奥の12ヵ国を指します。

万葉集では、この「東歌」を集めたコーナーがあります。ローカルな民謡のような位置づけなのですが、方言が含まれている歌が多く特色があります。

上だと「あどか」「きなはも」の部分がそうですね

想像するに、交際をしていたのが、誰かの妻であって、周りの人が「人妻ではないか」ということに対して、作者が反論をしているということのようです。

人妻であることを肯定しているわけですが、下句は「人の着物を借りて着る」こととの類似を作者自らがいっているわけで、唯一無二の相手だから、わがものにしたいということではない。

これもやはり、歌の中で思慕の主張をするというよりも、婚外恋愛をモチーフに詠んだ歌とも言えるでしょうか。

婚外恋愛というのは、今の流行語でいえば”不倫”ということですが、かつて「不倫は文化だ」という”名言”(迷言?)をいった俳優さんがいましたが、それに似たスローガン風の歌でもあります。

一冊の中には、愛の歌とはいっても、上のようなものばかりではなく、「秋の野のみ草刈り葺き宿れりし宇治の京の仮廬し思ほゆ」(額田王/巻一・七)や「わが屋戸の梅咲きたりと告げやらば来といふに似たり散りぬともよし(作者未詳/ 巻六・一〇一一)」のような歌もあり、相聞ばかりでなく楽しめるのではないかと思います。


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