生きがたき此の生のはてに桃植ゑて死も明かうせむそのはなざかり
10日に訃報が伝えられた歌人の岡井隆さん、前衛短歌運動などで戦後の短歌会をけん引されました。
これまでのたくさんの印象深い作品が思い起こされます。
きょうの日めくり短歌は、岡井隆さんの短歌作品をご紹介します。
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生きがたき此の世のはてに桃植ゑて死も明かうせむそのはなざかり
読み:いきがたき このよのたてに ももうえて しもあかうせん そのはなざかり
作者、岡井隆。歌集『鵞卵亭』より
10日に訃報の伝えられた岡井隆さん、17歳でアララギ入会とのことで、代表作品が集めにくいくらい歌集も作品も多く、印象に残った短歌がたくさんあります。
上の歌は、九州へ女性と出奔した間の作品。
『鵞卵亭』は、5年間の作歌の中断を経て刊行されました。
作者の心境もたどり着いた九州という地も、いわば「この世のはて」。
そこに桃を植えて、その花がさかりとなれば、自分の死の際も明るくするだろう」との意味だと思います。
どこか、西行の歌「願はくは花の下にて春死なむその如月の望月のころ」を思い出すモチーフですが、作者の心はそれ以上に危機的な状況にあったようです。
作歌を5年間中断
他にも
海中(わたなか)へ降りて行かむとねがひたる或る夜の芯に糸杉の渦
という、死への傾斜を思わせる歌もありながら、ドラマティックな歌の数々は5年後に歌集にまとめられました。
今日の日めくり短歌は、訃報が伝えられた岡井隆さんの短歌を紹介しました。
岡井隆プロフィール
岡井 隆(おかい たかし)1928年生
日本の歌人・詩人・文芸評論家。未来短歌会発行人。日本藝術院会員。塚本邦雄、寺山修司とともに前衛短歌の三雄の一人。
1993年から歌会始選者となり宮廷歌人となったが、そのことに対して歌壇では批判と論争が巻き起こった。
2007年から宮内庁御用掛。2016年、文化功労者選出。(ウィキペディアより)
他の岡井隆さんの短歌代表作品については、この後の別記事で紹介しています。
約しある二人の刻を予ねて知りて天の粉雪降らしむるかな 岡井隆【日めくり短歌】
肺尖にひとつ昼顔の花燃ゆと告げんとしつつたわむ言葉は 岡井隆【日めくり短歌】
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