「しのぶれど」百人一首の平兼盛の和歌の意味【日めくり短歌】  

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「しのぶれど」百人一首の平兼盛の和歌の意味【日めくり短歌】

2022年1月21日

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「しのぶれど」に始まる百人一首の和歌の作者、平兼盛は1月21日が忌日です。

きょうの日めくり短歌は、平兼盛の命日にちなみ、「しのぶれど」の歌の現代語訳と意味をお知らせします。

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しのぶれど色に出でにけりわが恋は物や思ふと人の問ふまで

読み:しのぶれど いろにいでにけり わがこいは ものやおもうと ひとのとうまで

作者と出典

平兼盛(たいらのかねもり)

百人一首 40  他「拾遺集」

 

一首の全体の意味

一首の全体の意味は

誰にも知られないように秘めていた恋なのに、顔に出てしまったようだ。恋に悩んでいるのかと人にきかれるまでに

というものです。

歌の主題は「忍ぶ恋」。

つまり、隠れた恋愛と、その関係ということですね。

忍ぶ恋というと、どうしても女性が歌うという趣がありますが、ここでは、男性の立場からの秘めた恋のことを詠っています。

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「しのぶれど」の「ど」は逆説

「しのぶれど」の「ど」は、逆説で、「しのんでいたけれども」「かくしていたけれども」の意味で、この場合の「しのぶ」は「隠す」の意味になります。

「しのぶ」の他の意味

「しのぶ」には、他にも、「偲ぶ」の漢字にみられる「過去や遠くの人・所を恋い慕う」という意味もあります。

ここでは、おそらく「忍ぶ」と「偲ぶ」の両方の意味の掛詞なのでしょう。

「しのぶ恋」で有名な歌人

忍ぶ恋で他に有名なのは、式子内親王です。

「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする」

の「忍ぶ」は、これと同じで、「隠している気持ちが表れてしまうので、それならばいっそ死んでしまいたい」といういみになります。

 

「色に出でにけり」の意味

この歌で分かりにくいのは、この「色に出にけり」というところです。

この「色」というのを、赤青黄のような色と思っているのでわかりにくいのですが、この「色」は顔の表情のことをいいます。

今の言葉なら「顔に出てしまった」というのと同じことですね。

「物や思う」の疑問

で、その、顔に出てしまったことが、どうしてわかるのかというと、それが歌の下の句

物や思うと人の問うまで

です。

「物を思う」というのは、「物事を思い悩む。 思いにふける」、つまり、悩みがあるということ。

「物や」の「や」は疑問の終助詞で、本当は「ものを思うや」の「思う」の方につくのですが、「ものや」と先んじて「もの」の方についています。

その場合は「ものを思う」全体が疑問となり、「(恋に)お悩みなのですか」というのがこの部分の意味です。

「人」は周りの人のことで、そのように、人に悟られてしまうようになるまでに、悩みが深いことが顔に出てしまったということなのですね。

そして、これは恋の悩みですから、悩みが深いということは、つまり、相手を恋する思いが、「そのくらい強い」ということなのです。

「かくしておけない、人のことなどかまっておれないくらい、あなたに夢中なんですよ」というのが、歌の裏の意味です。

 

歌合の結果は平兼盛の勝ちに

この歌は、「天徳歌合」という「歌合」。歌を2種並べて優劣を競うというこの時代の催しですが、組み合わされた歌が、百人一首の次の歌

恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひ初めしか (壬生忠見)

です。

歌合では、壬生忠見と平兼盛それぞれの歌が、どちらもすぐれていると判断され、いったんは引き分けになったものの、その時、平兼盛の歌を「天皇が口ずさんでいた」ことが目撃され、兼盛の歌が勝ちとなりました。

もっとも小倉百人一首では、両方の歌が採択されていますので、どちらも甲乙つけがたい出来というべきであるでしょう。

きょうの日めくり短歌は、平兼盛の忌日にちなみ、兼盛の「しのぶれど」についてご紹介しました。

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