元気が出る和歌、ちょっと心が落ち込んだ時に読みたい短歌を万葉集からご紹介します。
万葉集にはおもしろい歌もあるのを知ってくださいね。
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元気が出る万葉集の和歌
万葉集は、挽歌、相聞、雑歌の3部にジャンル分けされています。
このうち、挽歌は、人が亡くなった後に詠む歌なので論外ですが、恋愛の歌や、雑歌の方には、楽しい愉快な歌で、読んでいて元気の出るような歌ももちろんあります。
万葉集の元気が出る歌、おもしろい歌をご紹介します。
その筆頭は下の歌、相手の名前を連呼しながら、恋の成就を高らかに喜ぶ有名な歌です。
われもはや安見児(やすみこ)得たり 皆人の得かてにすとふ 安見児得たり
読み:われはもや やすみこえたり みなひとのえかてにすとう やすみこえたり
作者と出典
藤原鎌足(ふじわらのかまたり) 巻2 95
歌の意味
私は安見児を得た 皆の者が得難いといわれていた、あの安見児を妻に得たのだよ
解説
安見児-やすみこ-というのは女性の名前です。
美人(かどうかは正確にはわかりませんが)で、宮中に使えている立派な女性であると噂になっていた女性、その相手と心が通じて、結婚することになったという喜びの歌です。
「安見児得たり」の繰り返しに喜びの心があふれていますね。曇りも悩みもない、若い男性にとって最高の瞬間です。
わが背子は物な思ひそ事しあらば火にも水にもわれなけなくに
読み:わがせこは ものなおもいそ ことしあれば ひにも みずにも わがあらなくに
作者
安部郎女 万葉集 506
現代語訳
そんなに悩まないでくださいあなた。何かあれば、火でも水でもいとわない私がいますので
解説
一連二首の2首目の歌で、この2首目の方の歌は、相手の悩みを払拭、火でも水でも何でも来いといわんばかりの、思う人への最大限の支持を打ち出しています。
この歌をもらった男性は、いやおうなしに元気になるに違いありません。
石麻呂に吾れもの申す夏痩せによしといふものぞ 鰻(むなぎ)とり食(を)せ
現代語での読み:いわまろに われものもうす なつやせに よしというものぞ うなぎとりおせ
作者と出典
大伴家持(おおとものやかもち) 万葉集巻16‐3853
現代語訳
石麻呂に私は申します。夏痩せに良いという、鰻を採って、お食べなさい
解説
とても痩せていた石麻呂という知人に、大伴家持が、鰻をすすめる歌です。
「この食べ物がいいよ」というそんなことが歌になるというのも面白いところなのですが、最初の「石麻呂にわれもの申す」というところ、「いいですか、今から石麻呂さんに言いますよ」のような口上のような芝居がかったところがおもしろい。
ふざけた歌なのですが、万葉集の編集をした大伴家持自身がこの歌を加えているところを見ると、よほど気に入っていたのでしょうね。
実際にウナギを食べる前に、おもしろくて笑ってしまい、元気になること間違いなしです。
巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を
読み:こぜやまの つらつらつばき つらつらに みつつしのわな こぜのはるのを
作者:
坂門人足 巻1-54
意味:
巨勢山のつらつら椿を、じっくりとつらつらと見ながら偲ぼうよ、巨勢山の春を
解説
「つらつら」は「じっくりと」の意味の副詞なのですが、他にも「つらつら椿」という呼び名の椿があったので、それと掛けたのですね。
内容は、「椿を見て春を楽しもう」という花見の歌なのですが、「つらつら」の連続には、浮かれた元気な気持ちがうかがえますね。
大野道(おおのじ)は 茂道茂路(しげちしげみち) 茂くとも君し通はば道は広けむ
読み:おおのじは しげちしげみち しげくとも きみしかよわば みちはひらけん
作者:
作者 作者不詳 万葉集 3881
意味:
草木が茂った大野の道ですが、あなたが通って来られるなら道は開けるでしょう
解説
大野は越中のあたりを指すといわれています。どんなに草木が茂って邪魔しようとも、あなたが通れば道は開けるという内容です。
が、この歌は、もっと比ゆ的な意味があって、茂るというのは、恋をする二人に人のうわさがうるさいことを言います。
男性は女性の元へ文字通り「通う」のが、当時の恋愛でしたので、作者の女性が、そのように男性を励ます歌でもあるのです。
以上、万葉集のおもしろくて、音のリズムが楽しい歌、読んだら元気の出そうな歌をご紹介しました。