橘諸兄(たちばなのもろえ)は万葉集の歌人の一人です。
橘諸兄の万葉集の和歌は全部で8首。橘諸兄の万葉集の和歌を一覧にまとめ、現代語訳と解説を記します。
橘諸兄とは
スポンサーリンク
[tos]
橘諸兄は684年生まれの奈良時代の皇族・公卿です。
幼名は葛城王]で、臣籍降下して橘宿禰のち橘朝臣姓を名乗るようになりました。
橘諸兄と万葉集
万葉集には宴席歌を中心に短歌が8首載せられている他にも、諸兄自身が歌の批評も行った記録があるそうです。
橘諸兄の万葉集における一番緒ポイントは、万葉集の編纂についても「おそらく元正上皇の意向を体した橘諸兄の命に依って」大伴家持が編纂したという説がある点です。(出典:「万葉集ハンドブック」
橘諸兄の和歌一覧
以下は、橘諸兄の和歌一覧です。
対人詠であって独詠歌は一首もないところに特徴があります。
奥まへて我れを思へる我が背子は千年五百年ありこせぬかも 1025
降る雪の白髪までに大君に仕へまつれば貴くもあるか 3922
葎延ふ賎しき宿も大君の座さむと知らば玉敷かましを 4270
賄しつつ君が生ほせるなでしこが花のみ問はむ君ならなくに 4447
あぢさゐの八重咲くごとく八つ代にをいませ我が背子見つつ偲はむ 4448
高山の巌に生ふる菅の根のねもころごろに降り置く白雪 4454
あかねさす昼は田賜びてぬばたまの夜のいとまに摘める芹これ 4455
橘諸兄の和歌のうち最も有名なのが下の歌です。
降る雪の白髪までに大君に仕へまつれば貴くもあるか
読み:ふるゆきの しろかみまでに おほきみに つかへまつれば たふとくもあるか
作者と出典
橘諸兄 万葉集3922
現代語訳
降り積もる雪のように 白髪になるまで大君にお仕え申してきたので何とも尊いことである
降る雪の白髪までに大君に仕へまつれば貴くもあるか 橘諸兄『万葉集』
あじさゐの八重咲くごとく八つ代にいませ我が背子見つつ偲はむ
読み:あじさいの やえさくごとく やつよにを いませわがせこ みつつしのはん
作者と出典
橘諸兄 万葉集4448
現代語訳
紫陽花が八重に咲くように、あなたさまも八代も末永くお元気であられるようにこの花を見ながらお祈り申し上げます
紫陽花の八重咲くごとく八つ代にいませ我が背子見つつ偲はむ 橘諸兄
あかねさす昼は田賜びてぬばたまの夜のいとまに摘める芹これ
読み: あかねさす ひるはたたびて ぬばたまの よるのいとまに つめるせりこれ
作者と出典:
橘諸兄(葛城王) 巻20-4455
和歌の意味
昼は班田の仕事で忙しく、夜の暇に摘んだ芹がこれなのです。
他の歌の現代語訳は
奥まへて我れを思へる我が背子は千年五百年ありこせぬかも
現代語訳:心の奥深くで私を思ってくれるあなたこそ千年も五百年も長生きしてほしいものです
葎延ふ賎しき宿も大君の座さむと知らば玉敷かましを 4270
現代語訳:葎がはびこるむさ苦しい庭、大君がいらっしゃると分かっていたら玉砂利を敷いておくのでした
賄しつつ君が生ほせるなでしこが花のみ問はむ君ならなくに
現代語訳:贈り物をしながらあなたが植え育てたなでしこの花、その花に問うだけのあなたではありませんよね。
前の歌「我がやどに咲けるなでしこ賄(まひ)はせむゆめ花散ちるないやをちに咲け」に対する返歌。
こちらの現代語訳は
我が家の庭のなでしこよ。贈り物をするから散らずに若返りつつずっと咲いておくれよ
というもので、花の繁栄は、花のみでなく、宴に集まった一同皆にいえることであるという見事内容です。
高山の巌に生ふる菅の根のねもころごろに降り置く白雪
現代語訳: 根を生やしている菅のように 隅から隅までみごとなまでに 降り積もっている白雪だ
1月30日の橘諸兄の忌日にちなみ、万葉集の橘諸兄の和歌を一覧でご紹介しました。
・日めくり短歌一覧はこちらから→日めくり短歌