ふるさとの和泉の山をきはやかに浮けし海より朝風ぞ吹く
与謝野晶子の浜寺公園内の歌碑に記された短歌の現代語訳と意味、句切れと修辞、文法や表現技法などについて解説、鑑賞します。
スポンサーリンク
ふるさとの和泉の山をきはやかに浮けし海より朝風ぞ吹く
読み: ふるさとの いずみのやまを きわやかに うけしうみより あさかぜぞふく
作者と出典
与謝野晶子 『火の鳥』
現代語訳
故郷の山々がくっきりと映る海の上から心地の良い朝風が吹いてくる
語と文法
・和泉の山…大阪府と和歌山県を隔てる和泉山脈 与謝野晶子は大阪府堺の出身
・きはやかに…読みは「きわやかに」
意味は「はっきりと」「くっきりと」
参考:類語に「つばらか」
・浮けし海…「浮けし」は「浮かべた」の意味の他動詞
・「ぞ」は強意の助詞
句切れと表現技法
・句切れなし
解説と鑑賞
与謝野晶子の故郷を詠う有名な歌。浜寺公園内にはこの歌の歌碑があることで知られている。
与謝野晶子は大阪府堺市の出身。その後は、与謝野鉄幹と東京に住んだ。
「ふるさとの和泉の山」は、ここから見える山と海を指すと思われる。
一首の構成
3句の「きはやかに」は「はっきりと」の意味で、「和泉の山」から一転、山の印象を強める。
「きわやかに」は「浮けし」にかかる副詞で、「きわやかに浮けし」というのは、「くっきりと鮮やかに浮かべた」の意味で、「浮かべた」は、海を主語とする他動詞となる。
「海」が「鮮やかに山を浮かべる」 を「きわやかに浮けし」の形容詞句として「海」にかかる構成になっている。
その海から吹く朝の風が心地よいとして、この風が、作者に届くという順番になる。
視点の位置から、作者は海に向いているのであろうこともわかる。
歌に登場する自然は、「山→海→風」として、ふるさとに帰ってきて立つのだろう作者を取り巻くように描かれている。
静止する海山に対し、「朝風」は動的に作者に近づくものである。
故郷の美しい自然が作者の身近なところで、とらえたように描かれている。
与謝野晶子は、結婚後は東京で暮らしたが、大阪の歌や娘時代を回顧した歌は他にもみられる。
特に海は晶子にとって生家の近くにあって育ち、身近に感じられるものであったようだ。
与謝野晶子について
与謝野晶子(1878〜1942)
明星派の代表的な歌人。旧姓と名前は鳳(ほう)晶子。堺市生れ。堺女学校卒。
与謝野鉄幹の妻。新詩社の雑誌「明星」で活躍。大胆な恋愛を自由に情熱的に歌った歌集「みだれ髪」で一躍名を知られるようになる。生涯で5万首もの短歌を詠んだといわれる。訳に「源氏物語」。
浜寺公園の場所
〒592-8346 大阪府堺市浜寺公園町