兎年である今年、兎を詠んだ短歌を近代、現代短歌から集めてみました。
なかなか野生では見かけることのない兎ですが、姿かたちを思い出しながらお読みください。
兎の短歌
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今年の干支は兎。
兎を詠んだ短歌は、万葉集にも多く見られます。
古代、兎は野に見られる身近な動物であったようです。
等夜(とや)の野に 兎(をさぎ)狙(ねら)はり をさをさも寝なへ児(こ)ゆゑに 母に嘖(ころ)はえ
読み:とやののに おさぎねらはり おさおさも ねなえ こゆえに ははにころはえ
作者と出典
作者未詳
万葉集巻14 3529番歌
意味
等夜(とや)の野で狙っている兎ではないが、たいして寝てもいない娘のせいでその母に母さんに叱られた
解説
14巻の東歌の一首。万葉集の兎の歌はこの一首のみのようです。
東歌は関東地方の方言によって記されているためか、兎は「をさぎ」と発音されています。
方言が含まれているので、言葉がやや難しいですが、恋愛の歌で、思う娘とその母とのエピソードを歌っています。
等夜(とや)は地名でしょうか、「等夜(とや)の野に 兎(をさぎ)狙(ねら)はり」の部分が序詞です。
兎を捕まえることと、思う娘を手に入れようという気持ちを重ねているのですが、運悪く、その娘のお母さんに叱られてしまった。
思うように会えないのですが、それにしても、「 兎(をさぎ)狙(ねら)はり」の部分が、なんとも面白いですね。
斎藤茂吉の兎の短歌
斎藤茂吉の兎の短歌は下の歌がよく知られています。
上ノ山の町朝くれば銃に打たれし白き兎はつるされてあり
作者と出典
斎藤茂吉 歌集「白桃」
現代語訳
上山の朝市を通りかかると、銃で撃たれた兎が痛々しくもつるされている
解説
家庭内のトラブルのさ中、傷心の気持ちが詠ませた一首です。
詳しくは
上ノ山の町朝くれば銃に打たれし白き兎はつるされてあり 斎藤茂吉
土屋文明の兎の短歌
朝々に霜にうたるる水芥子(みづがらし)となりの兎と土屋とが食ふ
こちらもよく知られた作品の一つ。
意味はそのままで、水芥子(みづがらし)というのは何かというとクレソンのこと。
戦時中の食糧難をユーモラスに詠っています。
与謝野晶子の兎の歌
兎の絵魚の絵描きて永き日を子に見することややあじきなし
作者と出典
与謝野晶子『青海波』明治44年
解説
子どもが病気の折、日がな一日絵をかきながら遊んだことを詠んでいます。
蔭山雪いとど粉にたつ跡見れば兎か居たる今しかたまで
作者:北原白秋
雪の中に隠れてしまったのだろう兎を詠んでいます。
雪煙が小さく上がっているので、兎かなと思う作者なのです。
現代短歌の兎の歌
現代短歌の兎の歌というと思い出すのがやはり眞子さまの詠まれた兎の歌
望月に月の兎が棲まふかと思ふ心を持ちつぎゆかな
御結婚前に詠まれた歌で望みを宿すお気持ちが表されています。
眞子さまの短歌「望月に月の兎が棲まふかと思ふ心を持ちつぎゆかな」の意味
雨の中うさぎに雨を見せにゆくわたしをだれも見ないだろう
作者:雪舟えま
ファンタジックな不思議な歌です。
整形前夜ノーマ・ジーンが泣きながら兎の尻に挿すアスピリン
解説
穂村弘の歌集『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』の中の短歌。
少女からのファンレター、その中の言葉という設定です。
以上、「兎」に思い出す短歌をご紹介しました。
皆さまも兎を題材にした今年の短歌をぜひ読んでみてくださいね。