朝日歌壇の選者である高野公彦,永田和宏,馬場あき子,佐佐木幸綱の諸氏の新春詠が掲載されました。
各選者のプロフィールと代表作品と合わせて朝日新聞からご紹介します。なお、毎日新聞の新春詠の掲載は、別記事にまとめましたのでご覧ください。
スポンサーリンク
朝日歌壇選者の新春詠
朝日歌壇の選者は、現在、高野公彦,永田和宏,馬場あき子,佐佐木幸綱各氏の4名です。
それぞれの新春詠と、それぞれの選者について、あらためてご紹介します。
関連記事:
「朝日歌壇」とは何か 朝日歌壇の紹介と他紙の短歌投稿方法,応募の宛先まとめ
朝日歌壇選者新春詠2019 佐佐木幸綱,高野公彦,永田和宏,馬場あき子
高野公彦の新春詠
■ふるさと伊予 高野公彦
クマノミもとろり眠るや年の夜の長浜高校水族館部
びようびようと霧疾彦(きりはやひこ)は肱川(ひぢかは)の水面(みなも)を走り伊予灘へ出る
歌人高野公彦のプロフィール
高野公彦 1941-
愛媛県出身。東京教育大卒。昭和16年12月10日生まれ。
「コスモス」に入会,宮柊二(しゅうじ)に師事。
人生の奥深さを凝縮した表現でうたい,昭和57年「ぎんやんま」で短歌研究賞。
平成8年「天泣(てんきふ)」で第1回若山牧水賞、25年「河骨川」で毎日芸術賞、27年「流木」で読売文学賞詩歌俳句賞。愛媛県出身。東京教育大卒。
歌集に「汽水の光」「天平の水煙」など。
高野公彦代表作品
蝉のこゑしづくのごとくあけがたの夢をとほりき醒めておもへば
ふるさとは霜月の夜のしづけさのみなもと暗く石の臼冷ゆ
永田和宏の新春詠
■旧東海道を歩く 永田和宏
一里ごとに一里塚見るよろこびを思ひみることあらざりしかな
日本橋に吾(あ)を待てる友の幾たりを思ひつつ飲む年初の酒は
歌人永田和宏のプロフィール
1947- 昭和22年5月12日生まれ。滋賀県出身。「塔」を主宰。妻は歌人の故河野裕子。
京大在学中,高安国世に師事し「塔」に入会,昭和50年「メビウスの地平」でデビューする。
宮中歌会始詠進歌選者。細胞生物学の研究者でもあり、2016年京都産業大学タンパク質動態研究所初代所長。
平成11年壮年男性のせつなさをよんだ「饗庭(あえば)」で読売文学賞。
16年「風位」で芸術選奨,迢空(ちょうくう)賞、20年「後の日々」で斎藤茂吉短歌文学賞、22年「日和」で山本健吉文学賞。
25年「歌に私は泣くだらう―妻・河野裕子 闘病の十年」で講談社エッセイ賞,「夏・二〇一〇」で日本一行詩大賞。
永田和宏代表作品
きみに逢う以前のぼくに遭いたくて海へのバスに揺られていたり
歌は遺り歌に私は泣くだろういつか来る日のいつかを怖る
馬場あき子の新春詠
■山茶花 馬場あき子
山茶花(さざんくわ)のことしの花が咲きはじめうひうひしき冬の心生まるる
年寄ればいたく恋(こ)ほしもサバンナのライオンの狩りの背(せな)に風立つ
歌人馬場あき子のプロフィール
歌人,評論家。東京生れ。日本女子高等学院(現昭和女子大学)卒。
1978年《かりん》を創刊,主宰。
歌誌《まひる野》に参加,窪田章一郎に師事。
第1歌集「早笛」以下,豊かな感性に根差した独自の歌風の作歌活動を展開。
日本の中世文学(特に能)に造詣が深い。評論に「式子内親王」(1969年)など。
馬場あき子代表作品
つばくらめ空飛びわれは水泳ぐ一つ夕焼けの色に染まりて
さくら花幾春かけて老いゆかん身に水流の音ひびくなり
佐佐木幸綱の新春詠
■舌がよろこぶ 佐佐木幸綱
正月の酒そそがんと傾ける備前の盃(はい)へ備前の徳利
冬の月清(さや)けくあればひえひえの生牡蠣の身を舌がよろこぶ
佐佐木幸綱プロフィール
佐佐木幸綱1938- 東京出身。昭和13年10月8日生まれ。歌人,国文学者。佐佐木信綱の孫。
「心の花」編集長。「群黎(ぐんれい)」(46年現代歌人協会賞)などで、男歌と呼ばれる男性的な力づよい歌を詠む。
63年早大教授。平成6年「滝の時間」で迢空(ちょうくう)賞。12年「アニマ」で芸術選奨。16年「はじめての雪」などで現代短歌大賞。20年芸術院会員。
24年「ムーンウォーク」で読売文学賞。
佐佐木幸綱代表作品
泣くおまえ抱けば髪に降る雪のこんこんとわが腕(かいな)に眠れ
月下の浜に朽ちゆく船の影ぞ漕ぎ出ずるなき一生(ひとよ)悲しめ