万葉集「梅花の歌32首」現代語訳と解説 大伴旅人序文「令和」の出典  

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万葉集「梅花の歌32首」現代語訳と解説 大伴旅人序文「令和」の出典

2019年5月4日

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新元号が「令和」に決まりました。出典は万葉集の第5巻「梅花の歌32首」の序文からだそうです。

万葉集の「梅花の歌三十二首」を、現代語訳付きでご紹介します。

 

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万葉集「梅花の歌32首」とは

九州大宰府にある大伴旅人の館で、梅花の宴というのが開かれました。

その宴に招かれた近隣の政府の官吏が、短歌を一首ずつ詠み、それを書き留めたのが「梅花の歌32首」です。

その32首の歌を書き留めたのが宴の主催者である大伴旅人で、大伴旅人はまた、それに序文を記し、その後に6首の歌を足して、「梅花の歌」として一連をまとめました。

新元号「令和」の由来

その序文の

「初春の令月にして気淑(よ)く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭(らん)は珮後(はいご)の香を薫らす」

の部分から、今回の元号「令和」の文字が取られました。

「令和の由来の説明」

万葉集の梅の短歌・和歌 新元号「令和」の由来と「梅花の歌32首」

考案したのは、万葉学者、中西進氏です。

中西進「令和」考案者インタビュー「元号は一国のライフインデックス」

 

「梅花の歌32首」 読みと現代語訳

ここからは、「梅花の歌32首」の一首ずつに読みと、現代語訳をつけたものを掲載します.

令和の直接の出典である大伴旅人作、「梅花の歌32首」の序文とその現代語訳は前の記事をご覧ください。

目次

 

それでは、32首の1首目からです。数字は万葉集の全部の歌についている通し番号です。

正月立ち春の来らばかくしこそ梅を招きつつ楽しき終へめ

815: 弐紀卿

読み:むつきたち はるのきたらば かくしこそ うめをおきつつ たのしきおえめ

現代語訳と意味
正月になり春が来たならこうやってずっと梅を迎えて歓を尽くそう

 

梅の花今咲けるごと散り過ぎず我が家の園にありこせぬかも

816: 少弐小野大夫

読み:うめのはな いまさけるごと ちりすぎず わがやのそのに ありこせぬかも

現代語訳と意味
梅の花よ、いまさいているように 散ってしまわすに、我が家の園にのこっておくれ

 

梅の花咲きたる園の青柳は蘰にすべくなりにけらずや

817: 少弐粟田大夫

読み:うめのはな さきたるそのの あおやぎは かずらにすべく なりにけらずや

現代語訳と意味
梅のはなの 咲いている園の青柳はカズラにできそうになったではないか

注:「かずら」とはつる性植物やそれに近いひも状のものを輪にして、頭にのせる髪飾りのこと

 

春さればまづ咲くやどの梅の花独り見つつや春日暮らさむ

818: 筑前守山上大夫

読み:はるされば まずさくやどの うめのはな ひとりみつつやはるひくらさむ

現代語訳と意味

春になるとまず咲く我が家の梅の花を、一人で見ながら、春の日を過ごそう

注:筑前守山上大夫は山上憶良のこと

 

世の中は恋繁しゑやかくしあらば梅の花にもならましものを

819: 豊後守大伴大夫

読み:よのなかは こいしげしえや かくしあらば うめのはなにも ならましものを

現代語訳と意味
世の中は恋が尽きないものだ。こんなならうめのはなにでもなればよかった

 

梅の花今盛りなり思ふどちかざしにしてな今盛りなり

820:筑後守葛井大夫

読み:うめのはな いまさかりなり おもうどち かざしにしてな いまさかりなり

現代語訳と意味
梅の花は今満開だ親しい仲間よ 髪にさそうよ 今満開だ

 

青柳梅との花を折りかざし飲みての後は散りぬともよし

820:某官笠氏沙弥

読み:あおやなぎ うめとのはなを おりかざし のみてのあとは ちりぬともよし

現代語訳と意味
青柳と梅の花とを折って髪にかざし、飲んだその後は花は散ってしまってもよい

 

我が園に梅の花散るひさかたの天より雪の流れ来るかも

822:主人

読み:わがそのに うめのはなちる ひさかたの あめよりゆきの ながれくるかも

現代語訳と意味
わが園に梅の花が散る。空から雪が流れてくるのだろうか

主人、というのは、この梅花の宴の主催者、大伴旅人自身のことです。

この歌の詳しい解説はこちらです。




梅の花散らくはいづくしかすがにこの城の山に雪は降りつつ

823: 大監大伴氏百代

読み:うめのはな ちらくはいづく しかすがに このしろのやまに ゆきはふりつつ

現代語訳と意味
梅の花が散るのはどこのことだ しかしながらこの城の山に なるほど雪は降り続けている

 

梅の花散らまく惜しみ我が園の竹の林に鴬鳴くも

824:少監阿氏奥島

読み:うめのはなちらまくおしみわがそののたけのはやしにうぐいすなくも

現代語訳と意味
梅の花が散るのを惜しんで わが園の竹の林に鶯が鳴く

 

梅の花咲きたる園の青柳を蘰にしつつ遊び暮らさな

0825: 少監土氏百村

読み:うめのはな さきたるそのの あおやぎを かづらにしつつ あそびくらさな

現代語訳と意味
梅の花の咲いている園の青柳をかずらにしながら遊び暮らそう

注:「かずら」とはつる性植物やそれに近いひも状のものを輪にして、頭にのせる髪飾りのこと

 

うち靡く春の柳と我がやどの梅の花とをいかにか分かむ

0826: 大典史氏大原

読み:うちなびく はるのやなぎと わがやどの うめのはなとを いかにかわかん

現代語訳と意味
うちなびく春の柳と、我が家の梅の花とをどうして区別できようか

 

春されば木末隠りて鴬ぞ鳴きて去ぬなる梅が下枝に

0827: 少典山氏若麻呂

読み:はるされば こぬれかくりて うぐいすぞ なきていぬなる うめがしずえに

現代語訳と意味

春になると梢に隠れて鶯が鳴いていくことだ 梅の下枝に

 

人ごとに折りかざしつつ遊べどもいやめづらしき梅の花かも

0828:大判事舟氏麻呂

読み:ひとごとに おりかざしつつ あそべども いやめづらしき うめのはなかも

現代語訳と意味
めいめいに折って髪に差しながら遊ぶけれど ますます心惹かれる梅の花だ

 

 梅の花咲きて散りなば桜花継ぎて咲くべくなりにてあらずや

0829:薬師張氏福子

読み:うめのはな さきてちりなば さくらばな つぎてさくべく なりにてあらずや

現代語訳と意味
梅の花が咲いて散ったら、桜の花が続いて咲きそうになっているではないか

 

万代に年は来経とも梅の花絶ゆることなく咲きわたるべし

0830:筑前介佐氏子首

読み:よろずよにとしはきうとも うめのはなたゆることなく さきわたるべし

現代語訳と意味
千万年 年はすぎても 梅の花は絶えることなく咲き続けるだろう

 

春なればうべも咲きたる梅の花君を思ふと夜寐も寝なくに

831:壹岐守板氏安麻呂

読み:はるなれば うべもさきたる うめのはな きみをおもうとよいもねなくに

現代語訳と意味
春なので道理で咲いた梅の花よ あなたを思うと夜も眠れないことだ

 

梅の花折りてかざせる諸人は今日の間は楽しくあるべし

0832: 神司荒氏稲布

読み:うめのはなおりてかざせるもろびとはきょうのあいだはたのしくあるべし

現代語訳と意味
梅の花を折って髪に飾る諸人は、今日の間は楽しいに違いない

 

 年のはに春の来らばかくしこそ梅をかざして楽しく飲まめ

0833: 大令史野氏宿奈麻呂

読み:としのはにはるのきたらばかくしこそ うめをかざしてたのしくのまめ

現代語訳と意味
年毎に春が来たならこうやって梅を髪に差して楽しく飲もう

 

梅の花今盛りなり百鳥の声の恋しき春来るらし

834:少令史田氏肥人

読み:うめのはないまさかりなり ももどりのこえのこいしきはるきたるらし

現代語訳と意味
梅の花が今満開であるよ たくさんの鳥の声が恋しい春が来たらしい

 

春さらば逢はむと思ひし梅の花今日の遊びに相見つるかも

0835: 薬師高氏義通

読み:はるさらば あわんともいし うめのはな きょうのあそびに あいみつるかも

現代語訳と意味
梅春が来たら会おうと思っていた梅の花に、今日の遊びでまた逢ったことだ

 

梅の花手折りかざして遊べども飽き足らぬ日は今日にしありけり

0836: 陰陽師うらのし磯氏法麻呂

読み:うめのはなたおりかざしてあそべども あきだらぬひはきょうにしありけり

現代語訳と意味
梅の花を折って髪に差して遊んでも なお飽かぬ日は今日だったのだ

 

春の野に鳴くや鴬なつけむと我が家の園に梅が花咲く

0837: 算師志氏大道

読み:はるののになくやうぐいす なつけんと わがやのそのに うめがはなさく

現代語訳と意味
春の野に鳴く鶯を手なずけようとして、我が家の園に梅の花が咲く

 

梅の花散り乱ひたる岡びには鴬鳴くも春かたまけて

0838: 大隅目榎氏鉢麻呂

読み:うめのはな ちりみだいだるおかびには うぐいすなくも はるかたまけて

現代語訳と意味
梅の花が散りみだれている岡のあたりには、鶯が鳴いている。春になって

 

春の野に霧立ちわたり降る雪と人の見るまで梅の花散る

0839:筑前目田氏眞人

読み:はるののに きりたちわたり ふるゆきと ひとのみるまで うめのはなちる

現代語訳と意味
春の野に一面に霧が立って、雪が降るのかと、人が見るほどに梅の花が散る

 

春柳かづらに折りし梅の花誰れか浮かべし酒坏の上に

0840:壹岐目村氏彼方

読み:はるやなぎ かづらにおりし うめのはな たれかうかべし さかづきのえに

現代語訳と意味
春の柳をかずらに折ったのと梅の花とを誰が浮かべたのか、盃の上に

 

鴬の音聞くなへに梅の花我家の園に咲きて散る見ゆ

0841: 對馬目高氏老

読み:うぐいすの おときくなえに うめのはな わぎえのその にさきてちるみゆ

現代語訳と意味
鶯の声を聞くその端から梅の花が我が家の園に咲いて散るのが見える

 

我がやどの梅の下枝に遊びつつ鴬鳴くも散らまく惜しみ

0842: 薩摩目高氏海人

読み:わがやどの うめのしずえに あそびつつ うぐいすなくも ちらまくおしみ

現代語訳と意味
我が家の梅の下枝で遊びながら、鶯が鳴くことだ。散るのを惜しんで

 

梅の花折りかざしつつ諸人の遊ぶを見れば都しぞ思う

0842: 土帥氏御道

読み:うめのはな おりかざしつつ もろひとの あそぶをみれば みやこしぞもう(はにしうぢのみみち)

現代語訳と意味
梅の花を手折ってかざしながら、人々が遊ぶ様子を見ると都を思うこと切である

 

妹が家に雪かも降ると見るまでにここだもまがふ梅の花かも

0844: 小野氏国堅

読み:いもがえに ゆきかもふると みるまでに ここだもまがう うめのはなかも

現代語訳と意味
妻の家に雪が降るのかと見るほどにこうも散り乱れる梅の花であることよ

 

鴬の待ちかてにせし梅が花散らずありこそ思ふ子がため

0845: 筑前拯門氏石足

読み:うぐいすの まちがてにせし うめがはな ちらずありこそ おもうこがため

現代語訳と意味
うぐいすが待ちかねていた梅の花よ 散らずにあってくれ。愛するあの子のために

 

霞立つ長き春日をかざせれどいやなつかしき梅の花かも

0846: :小野氏淡理

読み:かすみたつ ながきはるひを かざせれど いやなつかしき うめのはなかも

現代語訳と意味
かすみが立っている長い春の日じゅう髪にさしているがますます離れがたい梅の花であるよ

----「梅花の歌32首」はここまでです。




大伴旅人「後に梅の歌に追和せし4首」

32首の後には、さらに4首の梅の花を詠んだ歌が記されています。

作者は大伴旅人自身と言われています。

 

残りたる雪に交れる梅の花早くな散りそ雪は消ぬとも 0849

読み:のこりたる ゆきにまじれる 梅の花 はやくなちりそ ゆきはけぬとも

現代語訳と意味
残っている雪に混じっている梅の花よ 早く散ってくれるなよ。雪は消えても

 

雪の色を奪ひて咲ける梅の花今盛りなり見む人もがも 0850:

読み:ゆきのいろを うばいてさける うめのはな いまさかりなり みむひともがも

現代語訳と意味
雪の色を奪って咲いている梅の花は いま満開だ 見る人があればよいのに

 

我がやどに盛りに咲ける梅の花散るべくなりぬ見む人もがも 0851:

読み:わがやどにさかりにさける うめのはな ちるべくなりぬ みむひともがも

現代語訳と意味
我が家に今満開の梅の花が散りそうになった 見る人があれば良いのに

 

梅の花夢に語らくみやびたる花と我れ思ふ酒に浮かべこそ 0852:

読み:うめのはな ゆめにかたらくみやびたる はなとあれもう さけにうかべこそ

現代語訳と意味
梅の花が夢で語りかけるには「みやびな花だと自分でも思います。お酒に浮かべてくださいな」

終りに

新しい元号の「令和」、梅の花のように豊かで、平和な良き時代が長く続きますように。

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