万葉集

春の野にすみれ摘みにと来しわれそ野をなつかしみ一夜寝にけり 山部赤人

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春の野にすみれ摘みにと来しわれそ野をなつかしみ一夜寝にけり 作者山部赤人。

万葉集の代表的な歌人の一人、山部赤人の有名な和歌を鑑賞、解説します。

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春の野にすみれ摘みにと来しわれそ野をなつかしみ一夜寝にけり

読み:はるののに すみれつみに とこしわれそ のをなつかしみ ひとよねにける

作者

山部赤人 万葉集

現代語訳

春の野に菫を積みに来た私は、野に心惹かれ、ひと晩そこに泊ったのだなあ

句切れと修辞

  • 3句切れ
  • 係り結び 「そ・・・ける」 止めは連用形

係り結びとは 短歌・古典和歌の修辞・表現技法解説

語と文法

  • すみれ…野草の一種だが、花ではなく、食用とされていた
  • 摘みにと…「に」「と」と格助詞を重ねて調子を整えている

「なつかしみ」

なつかしみ…基本形「なつかしむ」の動詞。

意味は、「心を惹かれる」

「来し我そ」品詞分解

来し…動詞基本形「来(く)」に過去の助動詞「き」の連用形「し」。

「そ」係助詞は「ぞ」と同じく、強調を表す

意味は、「来た私であるよ」

「寝にける」品詞分解

基本形「寝る」

「に」は、過去の官僚の助動詞「ぬ」の連用形

「ける」の基本形は「けり」で詠嘆の助動詞。「だなあ。ものよ」などと訳す。ここでは係り結びのため連用形

 

解説と鑑賞

菫は当時は食用とされ、春先には野草を積む「菜摘」を兼ねて、春の到来を楽しむ風流な野遊びが催された。

春の歌の題材とされた歌は他にも額田王の「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」 がある。

歌の意味は、春の野の風景が美しく、心を引かれたのでそこに泊ったというものだが、おそらくそれは表現としての誇張であるとされている。

菫の花に恋人の象徴と見る向きもあるが、斎藤茂吉は「そこまで言わない方が良い」とし、近年の大部分の注釈は、野のすみれはそのまま花であり、野への憧憬を表すものと理解されている。

作者の心情

意図的な誇張はあれ、赤人の詠む主題は、小さな野生のすみれの花への愛着であり、自然への憧憬、そして、大自然のふところへの回帰の心情である。

自然の野に抱かれて、夜をひと晩眠りたい、という素朴な心持が、作者にこの歌を詠ませている。

斎藤茂吉の『万葉秀歌』解説より

山部赤人の歌で、春の原に菫を採みに来た自分は、その野をなつかしく思って一夜宿ねた、というのである。全体がむつかしくない、赤人的な清朗な調べの歌であるが、菫咲く野に対する一つの係恋といったような情調を感じさせる歌である。(中略)
この歌で、「吾ぞ」と強めて云っていても、赤人の歌だから余り目立たず、「野をなつかしみ」といっても、余り強く響かず、従って感情を強いられるような点も少いのだが、そのうちには少し甘くて物足りぬということが含まっているのである。赤人の歌には、「潟かたをなみ」、「野をなつかしみ」というような一種の手法傾向があるが、それが清潔な声調で綜合せられている点は、人の許す万葉第一流歌人の一人ということになるのであろうか。―「万葉秀歌」斎藤茂吉著より

山部赤人の他の和歌

縄の浦ゆそがひに見ゆる沖つ島榜ぎ廻る舟は釣しすらしも(3-357)

武庫の浦を榜ぎ廻る小舟粟島をそがひに見つつともしき小舟(3-358)

我も見つ人にも告げむ勝鹿の真間の手児名が奥つ城ところ(3-432)

沖つ島荒磯の玉藻潮干満ちい隠りゆかば思ほえむかも(6-918)

若の浦に潮満ち来れば潟を無み葦辺をさして鶴たづ鳴き渡る(6-919)

み吉野の象山きさやまの際の木末にはここだも騒く鳥の声かも(6-924)

ぬば玉の夜の更けゆけば久木生ふる清き川原に千鳥しば鳴く(6-925)

玉藻刈る辛荷にの島に島廻(しまみ)する鵜にしもあれや家思はずあらむ(6-943)

島隠り我が榜ぎ来れば羨しかも大和へ上る真熊野の船(6-944)

風吹けば波か立たむと伺候に都太の細江に浦隠り居り(6-945)

明日よりは春菜摘まむと標し野に昨日も今日も雪は降りつつ(8-1427)

百済野の萩の古枝に春待つと居をりしうぐひす鳴きにけむかも(8-1431)

あしひきの山桜花日並べてかく咲きたらばいと恋ひめやも(8-1425)

恋しけば形見にせむと我が屋戸に植ゑし藤波今咲きにけり(8-1471)

山部赤人とはどんな歌人か

山部赤人 (やまべのあかひと) 生没不詳

神亀元年 (724) 年から天平8 (736) 年までの生存が明らか。国史に名をとどめず、下級の官僚と思われる。『万葉集』に長歌 13首、短歌 37首がある。聖武天皇の行幸に従駕しての作が目立ち、一種の宮廷歌人的存在であったと思われるが、ほかに諸国への旅行で詠んだ歌も多い。
短歌、ことに自然を詠んだ作はまったく新しい境地を開き、第一級の自然歌人、叙景歌人と評される。後世、柿本人麻呂(かきのもとの-ひとまろ)とともに歌聖とあおがれた。三十六歌仙のひとり。








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