花は散りその色となくながむればむなしき空に春雨ぞふる 式子内親王  

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花は散りその色となくながむればむなしき空に春雨ぞふる 式子内親王

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花は散りその色となくながむればむなしき空に春雨ぞふる

式子内親王の新古今和歌集他に収録されている和歌の現代語訳と修辞法の解説、鑑賞を記します。

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花は散りその色となくながむればむなしき空に春雨ぞふる

読み:はなはちり そのいろとなく ながむれば むなしきそらに はるさめぞふる

作者と出典

式子内親王(しょくしないしんのう)

新古今集 149

現代語訳と意味

花はすっかり散りはててしまって どこということもなくてしみじみと思いをこらしてみると、何もない大空に春雨が降っている

語句と文法

・花は散り…「花は散りて」とするものもある

・色…「花」の縁語。花の色の他に仏教的な意味合いがある

・色となく…「となく」は、「色」に限定せず目をやる意味

・ながむれば…基本形「眺む」。「ば」は接続助詞の順接確定

・春雨ぞ降る…「ぞ」は強意の助詞

句切れと修辞

  • 句切れなし
  • 係り結び 「ぞ…ふる」「ふる」は連体形

 

解説

式子内親王(しょくしないしんのう、または、「しきしないしんのう」ともいう)の代表作と言える和歌作品の一つ。

初句「花は散り」を「花は散りて」としている本もある。

本歌

この歌の本歌は、

花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに 小野小町

暮れがたき夏の日ぐらしながむればそのこととなく物ぞ悲しき「伊勢物語45段」

おもひあまりそなたのそらをながむればかすみをわけて春さめぞふる 藤原俊成

など複数があげられている。

一首の意味

花が散った後のやるせない情感をしっとりと表した歌。

恋の歌とも読める画、「色」と「空」にはそれぞれ仏教的な意味合いが含まれているとされ、釈教歌とも考えられている。

「むなしき空」は漢語の「虚空」からとられ、和語としたもの。

花は初句で「散り」とあるので、花もその色も既に見えないので、「その色となく」と続けるが、散った後には何も見るべきものがないという意味。

花が散った後は、見えるものは空ばかりであり、そこにただ春雨だけが降っているのが見えるという、寂しい風景が歌の主題である。

 

塚本邦雄の一首評

塚本邦雄の解説だと、一首の意味は

新古今集入の秀作です。代表作に入るでしょう。「むなしき空に春雨のふる」あたり、新古今の精粋を感じさせます。―「新古今歌人列伝」より

 

式子内親王の歌人解説

式子内親王(しょくしないしんのう、または、「しきしないしんのう」

久安5年(1149年) - 建仁元年1月25日(1201年3月1日)

日本の皇族。賀茂斎院。新三十六歌仙、女房三十六歌仙の一人。後白河天皇の第3皇女。

和歌を藤原俊成に学び,憂愁に満ち,情熱を内に秘めた気品の高い作品を残した。

百人一首に採られた、以下の歌がもっとも有名。
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする/式子内親王百人一首解説




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