アララギ

長塚節の短歌代表作 歌集『鍼の如く』

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長塚節はアララギ派の歌人で、小説「土」の作者です。

2月8日は長塚節の忌日「節忌」。長塚節の短歌代表作をご紹介します。

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長塚節とは

長塚節(たかし)は、茨城県生まれ、水戸中学の後、正岡子規に短歌を師事、伊藤左千夫と並ぶ、初期アララギの代表的な歌人の一人です。

長塚節の死因

正岡子規の写生を継承、喉頭結核により、36歳で亡くなりました。

子規と同じ結核で、亡くなったのは生家より遠い、九州の地であり、斎藤茂吉は一周忌に「しらぬひの筑紫のはまの夜さむく命かなしとしはぶきにけむ」「君が息たえて筑紫に焼かれしと聞きけむ去年のこよひおもほゆ」の追悼の歌を詠んでいます。

長塚節の代表的歌集は『鍼の如く』

長塚節、代表作品の歌集は『鍼(はり)の如(ごと)く』、発病後の231首が収録されています。

他に弟子が編纂した「長塚節歌集」があります。

他に、農村の風土と暮らしを写実的に描いた新聞連載小説「土」は、長塚節の代表作品の一つです。

 

長塚節の短歌の代表作

長塚節の短歌の代表作として知られる、有名な作品3首は以下の通りです。

垂乳根の母がつりたる青蚊帳をすがしといねつたるみたれども

馬追虫の髭のそよろに来る秋はまなこを閉じて想ひみるべし

白埴(しらはに)の瓶(かめ)こそよけれ霧ながら朝はつめたき水くにみけり

一首ずつ解説します。

垂乳根の母がつりたる青蚊帳をすがしといねつたるみたれども

読み:
たらちねの ははがつりたる あおがやを すがしといねつ たるみたれども

作者と出典

長塚節「鍼の如く 其の2」

意味:

母が吊ってくれた青い蚊帳、その中にすがすがしいと寝た。たるんでいたけれども。

解説

長塚節は生涯結婚をしませんでした。婚約をしたものの、結核への罹患がわかり、破談になり、その後も母と2人で暮らしていました。

その時代の男性として、母に対しても口やかましい面もあったようですが、母を思う歌も多く残されています。

この歌においても、母が節の世話をしていたこともよくわかります。

「たるみたれども」は老齢の力ない母へのいたわりも含まれているかもしれませんが、やはり、節の目の細かいところと、見たものを直截にとらえる短歌の技法「写生」の反映も見て取れます。

なお、「い寝る」の「い」は接頭語ではなく、「いぬ」で、ひとつの動詞。

この歌の詳しい解説を読む
垂乳根の母がつりたる青蚊帳をすがしといねつたるみたれども/長塚節

 

馬追虫の髭のそよろに来る秋はまなこを閉じて想ひみるべし

読み:うまおいの ひげのそよろに くるあきは まなこをとじて おもいみるべし

作者と出典

長塚節 『長塚節歌集』

現代語訳

馬追虫の小さなひげをそよそよさせながらやって来る秋を、眼を閉じてじっと思ってみるのがよいのだ

解説

序詞の技法の使われた、長塚節のよく引用される短歌作品です。

この歌も、節独特の細かい視点とその描写に驚かされはしないでしょうか。

秋が風景や風物ではなくて、昆虫のひげという微視的なものに集約されて詠まれています。

この歌の詳しい解説を読む
馬追虫の髭のそよろに来る秋はまなこを閉じて想ひみるべし 長塚節

 

白埴の瓶こそよけれ霧ながら朝はつめたき水くみにけり

読み:しらはにの かめこそよけれ きりながら あさは つめたき みずくみにけり

作者と出典

長塚節  歌集『鍼のごとく』

現代語訳と意味

白埴の瓶こそ(秋海棠を活けるのに)ふさわしい。霧がたちこめる朝に冷たい水を汲み入れたことだ

解説

長塚節の歌集の代表作が『鍼の如く』その中の代表作品です。

そもそも、歌集題名の『鍼』というのも細い細かいもので、ここにも節の嗜好がうかがえます。

静物画に描かれるかのような瀬戸物の器に、霧の中に水を汲む静謐な朝の空気が伝わるような優れた歌です。

 

長塚節代表作『鍼の如く』

節の代表作になる『鍼の如く』から、作品を掲載します。

以下は大正3年。

白埴(しらはに)の瓶(かめ)こそよけれ霧ながら朝はつめたき水くにみけり

曳き入れて栗毛繋げどわかぬまで櫟林(くぬぎばやし)はいろづきにけり

無花果に干したる足袋や忘れけむと心もとなし雨あわただし

唐黍の梢にひとつづつ蜻蛉(あきつ)をとめて夕さりにけり

うなかぶし独りし来ればまなかひに我が足袋白き冬の月かも

たもとほり榛(はり)が林に見し月をそびらに負ひてかえり来われは

しめやかに雨過ぎしかば市の灯は見ながら涼し枇杷うづたかし

菜豆(いんげん)はにほひかそけく膝にして白きが落つも莢をしむけば

草臥(くたびれ)を母とかたれば肩に載る子猫もおもき春の宵かも

 

長塚節と黒田てる子の婚約と破談

長塚節には結核の発病直前に見合いで婚約した婚約者がいました。

結核の罹患がわかったため、破談となったその相手への思慕の情が歌に切々と詠まれています。

元婚約者と手紙のやり取りがあり、花を携えての見舞いを受けた時の歌

春雨にぬれてとどけば見すまじき手紙の糊もはげて居にけり
いささかも濁れる水をかへさせて冷たからむと手も触れて見し
朝ごとに一つ二つと減り行くになにが残らむ矢ぐるまの花
こころぐき鉄砲百合か我が語るかたへに深く耳開き居り

一首目、濡れて届いた手紙の様子。

二首目以下は、活けた花を見舞いの後も愛でる様子。「こころぐし」は悲しく切ない、の意味。

小夜ふけてあいろもわかず悶ゆれば明日は疲れてまた眠るらむ
すべもなく髪をさすればさらさらと響きて耳は冴えにけるかも
やはらかきくくりり枕の蕎麦殻も耳には軋む身じろぐたびに

「あいろ」狭くて通行の困難な道。節の余命短い病のために交際が困難になったことを指します。

ひたすらに病癒えなとおもへども悲しきときは飯(いい)減りにけり

相手からは必ず病気を治すようにと励ましの手紙が送られていました。

横しぶく雨のしげきに戸を立てて今宵は虫はきこえざるらむ
手を当てて鐘はたふとき冷たさに爪叩き聴く其のかそけきを

小康状態での旅行中の歌。

長塚節の伝記小説「白き瓶」

長塚節の伝記としては、藤沢周平による、伝記小説があります。

小説ではあるのですが、背景を含め、大変詳細に書き込まれており、おすすめの本です。







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