春のプール夏のプール秋のプール冬のプールに星が降るなり 穂村弘の教材の短歌、この歌の意味、工夫や表現技法を解説します。
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春のプール夏のプール秋のプール冬のプールに星が降るなり
作者と出典:
穂村弘 『水中翼船炎上中』
この短歌の意味
春のプール、夏のプール、秋のプール、冬のプール いずれの季節も夜のプールには星が降るのだ
文法解説
「なり」は断定の助動詞 文語
表現技法と句切れ
・句切れなし
・「…のプール」の反復
解説と鑑賞
穂村弘の歌集『水中翼船炎上中』より。
一首の大意
一首の大意をまとめると、「四季を通じて夜のプールに星が降る」ということになるだろう。
プールと作者の距離
作者穂村弘は現在60歳。
この歌集は、作者の最も新しい作品を所収したもので、他の歌を含めたテーマの一つは大人になった作者が子どもの頃を回想するところにある。
作者自身が「歌集の主題は時間、過去と現在の対比」と述べている通りである。
プールは思い出の場所
「プール」は、作者が現在利用しているプールではなく、子どもの時のプールを思い浮かべていると想像してみる。
学校のプールであれば、プールのほとんどは屋外にあり、屋内とは違い実際にも「星」と接する環境にある。
通常夜間のプールを実際に目撃することは少ないため、一首は作者の回想の中で思い浮かべている想像上の風景といえるだろう。
表現技法の反復の意味
プールは夏に使うものだが、歌のプールは「春のプール、夏のプール、秋のプール、冬のプール」と反復の表現技法によって、四季を通じたプールとして表されている。
子どもの時は「春」や「冬」のプールを思い浮かべることは少ないが、それは実際に夏の期間にプールを利用して他の季節には接点がないためだろう。
作者のプールは想像なので、「春のプール、夏のプール、秋のプール、冬のプール」とすべてに「プール」を入れて並置することで、夏以外の季節も夏と同じように等価に扱われている。
また、四季も1年という長いスパンでものを考えることに慣れた大人の視点ともいえる。
作者が実際に学校のプールを利用したとすれば、少なくても40年前のことになり、回想のプールはもはや遠いものとなっている。
「春の、夏の…」というのは、その回想の時間的な距離にも起因するだろう。
「星が降るなり」の意味
「プールに星が降る」という光景、時間が昼でなく夜のプールであり、「星が降る」という幻想は、やはり回想によって生まれる光景といえる。
推測ならば「星が降るらむ」となるが、なぜ、作者は断定の「なり」を用いたのだろうか。
あるいは、星でなく「月が照るなり」ではなく、なぜ「星」を選択したのだろうか。
星は「春夏秋冬」の1年を通じて、各季節に共通する。
そして、月ではなく「星」を選んだのは、その数に理由があるのだろう。
プールと子ども時代
作者にとってのプールとはどのようなものだったのかというと、子どもの時の楽しい場所とというイメージが浮かぶ。
今は自分のものではなくなってしまったプールは、人気のない夜間の静かなプールとしてイメージされる。
そのような静謐なプールにふさわしいのは、人ではない。
この場合の「星」は、プールを埋め尽くす子どもたちに替わるものである。
星の数の多さは、子どもの数に対応する。
無数の星が水面に向かって「降る」ことで、人がいないプールの寂しさと、時が戻らない作者の寂しさ、その両方が軽減されることだろう。
プールの短歌
同じ歌集には他に
灼けているプールサイドにぴゅるるるるあれは目玉をあらう噴水
という歌があり、こちらは実際作者がプールを利用していた時点の光景である。
しかし、それが現在形で詠まれているのではなく、「あれは」としているところから、時間的な距離が「あれは」の指示代名詞に置き換えられていると思われる。
穂村弘の他の短歌
穂村弘について
穂村 弘 (ほむらひろし) 1962年5月21日
日本の歌人。歌誌「かばん」所属。 加藤治郎、荻原裕幸とともに1990年代の「ニューウェーブ短歌」運動を推進した、現代短歌を代表する歌人の一人。批評家、エッセイスト、絵本の翻訳家としても活動している。歌集に『シンジケート』『水中翼船炎上中』他。
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