【解説】『あしたこそ』工藤直子『野原はうたう』  

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【解説】『あしたこそ』工藤直子『野原はうたう』

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『あしたこそ』は作者工藤直子の詩です。

教科書にも掲載されている『野原はうたう』の中の口語自由詩の意味、比喩などの表現技法を解説、作者の思いや伝えたいことを鑑賞します。

『野原はうたう』は教科書の詩

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『野原はうたう』は作者は工藤直子、4つの詩がひとまとまりになっている構成の詩です

  1. 「たんぽぽ はるか」による『あしたこそ』
  2. 「かまきり りゅうじ」による『おれはかまきり』
  3. 「のぎく みちこ」による『あきのひ』
  4. 「けやき だいさく」による『いのち』

4つの詩は、それぞれ「春夏秋冬」がテーマです。

この詩はこの詩は『のはらうた』という詩集に載っており、中学校1年の国語の教科書にも掲載されています。

※「野原は歌う」の全部の詩は

 

※他の教科書の詩の解説は
教科書の詩 教材に掲載される有名な詩一覧

 

この記事では、最初の「あしたこそ たんぽぽはるか」の詩を解説します。

『のはらうた』の各作者は

それぞれの詩には「たんぽぽ はるか」「かまきり りゅうじ」「のぎく みちこ」「けやき だいさく」という別々の作者名がついています。

作者工藤直子さんは、これらののはらみんなの代理人を名乗っています。

工藤さんが、のはらを散歩していると、たんぽぽやかまきりが歌をうたう、 そのうたを書きとめて一冊にまとめたのが詩集「のはらうた」です。

つまり、それぞれの季節を代表する自然のキャラクターたちが「うたっている」ように書かれている詩だということです。

作者はあくまでくどうなおこさん。 「たんぽぽはるか」は架空の作者名です。

「のはらうた」の最初の詩「あしたこそ」の原文を以下に提示します。

 

『あしたこそ』 全文

以下が詩の全文です。

味わいながら読んでみましょう。

あしたこそ たんぽぽはるか

ひかりを おでこに
くっつけて
はなひらく ひを
ゆめにみて
たんぽぽわたげが
まいあがります

とんでいこう どこまでも
あした
たくさんの「こんにちは」に
であうために

「あしたこそ」 たんぽぽはるか 解説

「あしたこそ」について詳しく読んでいきましょう。

詩の主題

作者がたんぽぽに成り代わって、春という季節を表現することが一連4つの詩の主題の一つです。

詩の概要

  • 2連の詩
  • 口語自由詩
  • ひらがな表記

口語自由詩の「口語」というのは、現代の言葉である口語で書かれた詩のことです。

自由詩というのは、字数の決まっている「定型詩」に対して、字数の決まっていない詩のことをいいます。

※詩の形式については下の記事で確認できます。
詩の形式 種類と見分け方 口語自由詩・文語定型詩など

 

口語と文語の違い

口語の例:

わたしをねないで/あらせいとうの花のように/白いのように/束ねないでください わたしは稲穂
―【解説】わたしを束ねないで 新川和江の教科書の詩

文語の例:

ああ、弟よ、君を泣く、/君死にたまふことなかれ。/すゑに生れし君なれば/親のなさけはまさりしも、/親はやいばをにぎらせて/人を殺せと教へしや、
―「君死にたまふことなかれ」作者与謝野晶子の意味と現代語訳

自由詩と定型詩の違い

自由詩の例

おうい雲よ/ゆうゆうと/馬鹿にのんきさうぢやないか
―おうい雲よ ゆうゆうと「雲」山村暮鳥の詩

定型詩の例

汚れつちまつた悲しみに/ 今日も小雪の降りかかる/ 汚れつちまつた悲しみに/ 今日も風さへ吹きすぎる
【解説】『汚れつちまつた悲しみに…』中原中也の代表作

表現技法

  • 比喩
  • 擬人法
  • 倒置

それぞれの表現技法が使われている場所を示します

比喩

ひかりを おでこに
くっつけて

 

日光がたんぽぽを照らしていることの比喩表現です。

擬人法

はなくらく ひを
ゆめにみて

主語はたんぽぽですので、たんぽぽが夢に見るという擬人法です

倒置

  • 「とんでいこう どこまでも」
  • 「とんでいこう どこまでも あしたたくさんの「こんにちは」にであうために」

「どこまでもとんでいこう」が普通の語順ですが、それが逆になっています。

最後の段は、

 あしたたくさんの「こんにちは」にであうために

が普通の語順ですが、「とんでいこう どこまでも  あしたたくさんの「こんにちは」にであうために」と行ごと逆になっています。

こうすることで、最初に置かれた方が強調され、さらに後に置かれた言葉の語尾を終止形にしないことで、余韻が残るようになっています。

 

詩の意味

詩の内容は、春のやや遅い時期に綿毛となったたんぽぽが、はるか遠くまで綿毛を飛ばして、その土地でたくさんの人との出会いをしたいという願いが込められています。

作者の思い

このたんぽぽの思いはあくまで作者が植物に成り代わって、自分で植物の内面を想像し、こうだろうなと思ったことが表されています。

なので、作者の思いはこのたんぽぽの綿毛のように、風に乗って自由に遠くの地や離れた未知の世界に行って、そこで人々と交流をしたり冒険をしたりしてみたいという決意が表れていると考えられます。

 

詩の作者工藤直子について

工藤直子 くどうなおこ

1935(昭和10)年、台湾生れ。

お茶の水女子大学中国文学科卒業。 女性初のコピーライター。後に、詩人・童話作家になって 『てつがくのライオン』(絵・佐野洋子)で日本児童文学者協会新人賞など受賞多数




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