み山には松の雪だにきえなくに宮こはのべのわかなつみけり  意味と解説  

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み山には松の雪だにきえなくに宮こはのべのわかなつみけり  意味と解説

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深山には松の雪だにきえなくに宮こはのべのわかなつみけり  古今集の雪と若菜を対比する歌、作者はよみ人しらずながらよく知られる一首です。

古今集の歌の現代語訳と解説を記します。

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み山には松の雪だにきえなくに宮こはのべのわかなつみけり 解説

読み:みやまには まつのゆきだに きえなくに みやこはのべの わかなつみけり

作者と出典

作者 よみ人しらず

出典:古今集 第一春歌上 19

現代語訳と意味

山では松の上の雪さえ消えていないのに、都ではもう野原の若菜を摘んでいるのか

 

和歌の語句

・み山・・・漢字は「深山」 深い山 あるいは「み」は接頭語

・だに・・・「であっても」の意味

・消えなくに・・・動詞基本形「消ゆ」

・なくに・・・打消しの助動詞「ず」のク語法「なく」+格助詞「に」
意味は「消えないのに」

・宮こ・・・「都」と同じ

・のべ・・・漢字「野辺」。意味は屋外の野山

・わかな・・・漢字「若菜」。 草を摘んで食用などにする

・けり・・・詠嘆の助動詞「…ことよ」「…だなあ」などと訳せる

句切れと修辞

・句切れなし

・詠嘆

 

鑑賞

異なる場所の気候と季節感の対比が詠まれている。

おそらくは気候だけではなく、都の美しさ、華やかさなど作者の都へのあこがれの気持ちがあるだろう。

一首は、自分の住んでいる近くの山、あるいは訪ねた先の山などが、まだ雪が残っていて寒々しいのに対し、都では皆が若菜摘みをするくらい春めいている。

摘んでいる人たちの服装も軽装であり、野暮ったくなく洗練された様相であると想像できる。

「松の雪だに」の意味

針葉樹の松の葉は、細長い形状をしていて、本来雪が長くとどまるようなものではない。

「その雪でさえも溶けないくらい山は寒いのに」という意味が「松の雪だに」に込められている。

和歌の中の対比

場所を表す対比は「深山」と「みやこ」にある。

季節を表す対比は「雪」と「若菜」にあり、それぞれが深山と都の属性として示される。

さらに、歌の中にはないがおのずから「冬」と「春」の対比が盛り込まれている。

また、一首の中で上句に「雪」を置いて、下句に「若菜」を置くだけで、読み手にはまるで季節が変わったような、華やいだ気持ちが生まれるだろう。

結句の「けり」は詠嘆なので、「ああ・・・・なのだなあ」という作者の気持ちが込められる。

修辞の工夫

和歌の工夫としては、修辞法ではないが音韻に「みやま」「みやこ」として、「み」の音が揃えられている。

深山には松の雪だにきえなくに宮こはのべのわかなつみけり

みやまには まつのゆきだに きえなくに みやこは のべの わかなつみけり

さらに、「みやま」「まつ」として、マ行の音が重ねて用いられている。

「だに」は「雪」を強調して「松の雪さえもまだ消えない寒さであるのに」とみ山の冬を表現。

「きえなくに」の「なくに」にも、寒い山から春めいた都への転換が強調されている。

作者はおそらく前者の住人であるのだろう。

みやこへ出てきてみれば、こんなにも何もかも違うものかという驚きと羨望が季節感の対比の裏にあると思われる。

雪と若菜の他の和歌

雪と若菜を対比する歌は下の有名なものがある。

君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ/光孝天皇 訳と解説

他にも古今集の雪の有名な歌は

春日野の雪間を分けて生ひ出でくる草のはつかに見えし君はも 壬生忠岑

山里は冬ぞ寂しさまさりける人目も草もかれぬと思へば 源宗于朝臣




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