年の暮れは一年の終り、感慨をこめて短歌を詠みたいものです。
年の瀬と大晦日に詠まれた短歌、和歌をご紹介します。
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年の暮れの短歌
新年は「新年詠」。大みそかには、「晦日歌」と呼ばれる作品があります。
年の暮も押し迫った今日は、年末の詠まれた和歌をご紹介します。
隔て行く世々の面影かきくらし雪とふりぬる年の暮れかな
現代語での読み:へだてゆく よよのおもかげ かきくらし ゆきとふりぬる としのくれかな
作者と出典
藤原俊成女(ふじわらしゅんぜいのむすめ) 新古今集 693
和歌の意味
年の暮れに、私から遠ざかっていく一年の思い出の数々は、この降る雪のように茫々として古く昔になってしまう
解説
「ふる」に「雪が降る」と「古くなる」意味での「古る」の掛詞が駆使されながら、年末の感慨を詠っています。
おのづからいはぬを慕ふ人やあるとやすらふ程に年の暮れぬる
現代語での読み:おのずから いわぬをしたう ひとやあると やすらうほどに としのくれぬる
作者と出典
作者:西行法師 691番 山家集 西行法師家集
和歌の意味
言葉は掛けないが、ひょっとしてついてくる人もあろうかと、ぐずぐずしているうちに年も暮れてしまったよ
解説
西行法師らしい、人への憧憬と年の暮れを重ねて一年を振り返ります
この歌の解説記事は
おのづからいはぬを慕ふ人やあるとやすらふ程に年の暮れぬる 西行法師
歎きつつ今年も暮れぬ露の命いけるばかりを思出にして
現代語での読み:なげきつつ ことしもくれぬ つゆのいのち いけるばかりを おもいでにして
作者と出典
作者:俊恵法師
和歌の意味
嘆きながら今年も暮れてしまった。露のようなはかない命が生きながらえている、ただそれだけを慰めとして
今日ごとに今日や限りと惜しめどもまたも今年に逢ひにけるかな
現代語での読み:きょうごとに きょうやかぎりと おしめども またもことしに あいにけるかな
作者と出典:
藤原俊成 新古今集706
和歌の意味
毎年、暮のこの日になるたびに、今日も限りかと惜しむのだが、またまた今年の今日に会えたことだ
解説
この時代には長生きをした藤原俊成ならではの作品ですが、若い人にも新しい年の感慨は変わりませんね。
この歌の詳しい解説は
今日ごとに今日や限りと惜しめどもまたも今年に逢ひにけるかな 藤原俊成
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藤原俊成の有名な短歌代表作一覧 「幽玄」と本歌取りの技法
大晦日の和歌
年の暮れと言えば大晦日。
大晦日は、「大つごもり」とも呼ばれ、「つごもり」は、古くは「月ごもり」月の出ないことを指すのが、元々の意味でした。
大晦日の短歌といえば 藤原公実の作品がわかりやすいです。
明日よりは春の初めと祝ふべし今日ばかりこそ今年なりけれ
現代語での読み:あすよりは はるのはじめと いわうべし きょうばかりこそ ことしなりけれ
作者と出典:
藤原公実 後撰選集218
和歌の意味
明日からは春の初めと祝おう 今日だけが今年となった
今日の日めくり短歌は、大晦日にちなみ、年の瀬の短歌をご紹介しました。
それでは皆様、良いお年をお迎えください。
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