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新年の短歌・和歌10首 万葉集代表作品 大伴家持他

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新年やお正月を詠んだ年の初めの短歌、「新年詠(えい)」というものですが、万葉集の新年詠にはどのようなものがあるでしょうか。

「新しき年の始めの初春の今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと)」の万葉集の最後の歌も新年詠です。作者大伴家持の歌を含めて、一覧にまとめてみました。

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新年の短歌・和歌 万葉集より

新年の短歌・和歌を万葉集からまとめます。

現代でも使える表現が多いので、気に入ったところはメモしておいてくださいね。

新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事

読み:あらたしき としのはじめの はつはるの きょうふるゆきの いやしけよごと

作者

大伴家持 1-48

現代語訳

新しい年の初めの初春の今日降る雪のように、積もれよ、良いことよ

解説

大伴家持による賀歌、つまり新年のお祝いの歌です。部下たちの前で、元旦の宴会で披露されました。

雪を詠っているようですが、自分の統治する世が長く続くようにとの気持ちも込められています。

また、この歌は、家持が編纂した万葉集の最後にも置かれて、万葉集が、万葉、万世に末永く読み継がれることも祈って掲げられたものです。

 

わが形見見つつ偲はせあらたまの年の緒長くわれも思はむ

読み:わがかたみ みつつしのわせ あらたまの としのおながく われもおもわん

作者

笠郎女 巻4-587

現代語訳

この形見を見ながら私のことを思い出してください。新しい年になっても長く、あなたを思っていますから

解説

笠女郎(かさのいらつめ)が大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)に贈った二十四首の相聞歌の内の一首です。

笠女郎は大伴家持を深く思っていたようで、相聞の歌のやりとりがあります。

「かたみ」というのは、想い出のよすがとなるもののことなので、郎女が家持に贈ったものを指すと思われます。

 

あらたまの年の経ぬれば今しはとゆめよわが背子わが名告らすな

同じ一連からもう一つ。

読みは あらたまの としのへぬれば いましはと ゆめよわがせこ わがなのらすな

現代語訳

新しい年となって年が過ぎたことだから、今ならもう大丈夫と絶対に私の名前を他の人にしゃべらないでくださいね

枕詞「あらたまの」

実は、この「あらたまの」は年にかかる枕詞で、この場合必ずしも新年とは限りませんが、ご自分で歌を詠むときには「あらたまの」と入れると、なんとなく、新年詠らしい感じが出ますので、ぜひ使ってみてください。

 

あらたまの年行き返り春立たばまづ我が宿に鴬は鳴け

読み:あらたまの としいきかえり はるたたば まずわがやどに うぐいすはなけ

作者

大伴家持 20-4490

現代語訳

年があらたまって立春になったら、まずは私の庭で鴬よ、鳴いておくれ

解説

天平宝字1年(西暦757年)12月18日、大監物三形王の邸宅で宴会を開いたときに、この歌が披露されました。

春の風物詩として、春の風景をまるで絵のように歌で表したのですね。

 

新しき年の始めに思ふどちい群れて居れば嬉くもあるか

作者

道祖王 19・4284

現代語訳

新年の初めに、気の合う者同士が集まっているのは、なんとうれしいことだろうか

解説

こちらは、本当の新年詠として、万葉集の歌の中でもよく参照される作品です。

天平勝宝五年正月四日、石上朝臣宅嗣(いそのかみのあそんやかつぐ)の家で祝宴のあった時、大膳大夫道祖王(ふなとのおおきみ)という人が披露した歌です。

斎藤茂吉の評だと、「平凡な歌だけれども、新年の楽宴の心境が好く出ている」とのことで、お祝いの歌として良い歌、ふさわしい歌ということでしょう。

「い群れる」というのは、親しい友達皆が集まって、という意味で、これも雰囲気があります。「い」というのは接頭語です。

この「うれしくもあるか」という言い方は、斎藤茂吉も自分の短歌でかなりよく使う表現です。

「うれしい」とか「さびしい」と言い切らずに、「もあるか」とすることで、余韻を持って聞こえます。

斎藤茂吉の「あるか」の歌

おのづから寂しくもあるかゆふぐれて雲は大きく谿に沈みぬ『ともしび』

みづからを虐げしとにあらなくに消のこる雪は寂しくもあるか 斎藤茂吉

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他にも万葉集には次のような新年の歌が見られます。

新しき年の初めに豊の年しるすとならし雪の降れるは

読み:あらたしき としのはじめに とよのとし しるすとならし ゆきのふれるは

作者

葛井諸会 ふじゐのもりあい 17-3925

現代語訳

新しい年の初めに、雪が降っているのは、豊かな年となる前兆を示しているようです

解説

こちらも天皇のいる席でのお祝いの歌。

雪は豊年の兆しと思われていましたので、新年の歌には多く雪が詠われています。

 

大伴家持の新年の和歌

ここから下には、雪と新年を組み合わせた、大伴家持の歌を挙げます。

新しき年の初めはいや年に雪踏み平し常かくにもが

作者

大伴家持 19-4229

現代語訳

新しい年の初めは、毎年毎年雪を踏んで平らにし、常にこのようにありたいものです

解説

この歌も雪が降ることを豊年のしるしとして、毎年豊かな都市であってほしいと祈願をする歌です。

 

降る雪を腰になづみて参り来し験もあるか年の初めに

作者

大伴家持 19・4230

現代語訳

降る雪に腰まで埋めて難儀いたしましたが、何はともあれと参上させていただきました

このようにたくさん年の初めに雪が降るとは、誠に縁起が良いことです

解説

ちょっとおもしろい雰囲気の歌ですが、雪の中を宴会に招かれて、機転を利かせて家持が詠った歌のようです。

他の参会者も大変だったことでしょうが、豊年の雪として盛り込んで、道中の大変さをもたらした雪を、歌でお祝いに転じています。

 

正月立つ春の初めにかくしつつ相し笑みてば時じけめやも

読み:むつきたつ はるのはじめに かくしつつ あいしえみてば ときじけめやも

作者

大伴家持 18-4137

現代語訳

正月、新春の初めに、このようにしつつ互いに微笑み合っていられるのは、時節にふさわしいものですよね

解説

こちらも正月の会合でのお祝いの歌。

「時じけめやも」は反語的な投げかけで 「時節外れか、いや、時節にふさわしい」と間を持たせた、おそらくほかの人たちへの問いかけを行ったものでしょう。

まとめ

新年、お正月を詠んだ万葉集の短歌、いかがでしたでしょうか。

「あらたまの年の初めの」や「正月(むつき)」や「春立つ」などの表現は、現代でも十分使えますし、短歌らしくていいですね。

お祝いの歌ですので、形式的になっても構いませんので、ぜひ自分でも歌に詠んでみてくださいね。







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