空は古い時代から短歌や和歌に多く詠まれてきました。
見上げればいつもそこにあるもっとも身近な自然の一つでもあります。
きょう9月20日は空の日にちなみ、空を詠んだ短歌の有名な作品をご紹介していきます。
空を詠んだ有名な短歌
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空は古くから多くの短歌で題材とされてきました。
「空」と詠まれるようになる前は、「天」「てん」や「あめ」の呼び名で和歌に詠まれたものもあります。
空の短歌の有名な作品を近代短歌と古典の和歌よりそれぞれ代表作5首ずつをご紹介します。
空の代表作短歌
不来方のお城の草に寝転びて空に吸はれし十五の心
読み こずかたの おしろのくさに ねころびて そらにすわれし じゅうごのこころ
作者:石川啄木
出典:「一握の砂」
現代語訳:
盛岡城の草の上に寝転んで、空に吸い込まれそうだった十五才の私の心よ
白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ
読み:しらとりは かなしからずや そらのあお うみのあおにも そまずただよう
作者:若山牧水
出典:「海の声」他
現代語訳:
白鳥は哀しくはないのだろうか。空の青い色にも海の青い色にも染まらずに漂っている
夕焼け空焦げきはまれる下にして氷らんとする湖のしずけさ
作者:島木赤彦
出典:「海の声」他
現代語訳:
夕焼けに焦げが極まったような空の下で今凍ろうとする湖の静けさよ
他にも、
空澄みて寒き一と日やみづうみの氷の裂くる音ひびくなり : 島木赤彦
かうかうと西吹きあげて海雀あなたふと空に澄みいて飛ばず
作者:斎藤茂吉
出典:「あらたま」
現代語訳:
こうこうと西風が吹き上げてくる中に、ウミスズメが澄み切ったあちらの空にふと飛ばずにいるように見える
斎藤茂吉には他に有名な「死にたまふ母」に
死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞ゆる
があります。
こちらでは「空」の代わりにもっと崇高で重厚な感じのする「天」という言葉が使われています。
まんまろな朱(あけ)の日輪空にありいまだいつくし童があたま
作者:北原白秋
出典:「桐の花」
現代語訳:まんまるい太陽が空にあるその下にいまだ美しく見える子どもの頭よ
他に「大空に円き日輪血のごとし禍つ監獄にわれ堕ちてゆく」もあり、丸い太陽をバックに詠んだものです。
有名な空の和歌5首
ここからは空の詠まれた和歌のよく知られる有名な作品をご紹介します。
思ひあまりそなたの空をながむれば霞を分けて春雨ぞ降る
読み: おもいあまり そなたのそらを ながむれば かすみをわけて はるさめぞふる
作者:皇太后宮大夫俊成 藤原俊成(ふじわらのとしなり)
出典:新古今集 1107
現代語訳:
思いが余って恋しさのあまり、あなたの居る方の空を眺めたら、霞がかった空より春雨が降っている
春の夜の夢の浮橋とだえして峰に別るる横雲の空
読み: はるのよの ゆめのうきはし とだえして みねにわかるる よこぐものそら
作者:藤原定家
出典:新古今和歌集 巻第一 春歌上 38
現代語訳:
春の夜の、浮橋のようなはかなく短い夢から目が覚めたとき、山の峰に吹き付けられた横雲が、左右に別れて明け方の空に流れてゆくことだ
時鳥そのかみやまの旅枕ほの語らひし空ぞ忘れぬ
作者:式子内親王
出典:新古今 1484
現代語訳:
神山で旅寝をしたときに淡く語らった思い出のときの、ほととぎすが鳴いていた空を私は忘れられない
み空行く月の光にただ一目相見し人の夢にし見ゆる
読み:みそらゆく つきのひかりに ただひとり あいみしひとの ゆめにしみゆる
作者:安都扉娘子(あとのとびらのをとめ)
出典:万葉集 巻4-710
現代語訳:
空を渡る月の光の下、一目だけ見えたあの方が夢にまで出てくるのですよ
ながめつつ思ふもかなし帰る雁ゆくらんかたの夕暮の空
読み:ながめつつ おもうもかなし かえるかり ゆくらんかたの ゆうぐれのそら
作者:源実朝
出典:金塊集
現代語訳:眺めながら思いをはせるのも切ないことだ。帰る雁が向かってゆく方向の夕暮の空に
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