「つぎねふ山城女の木鍬持ち打ちし大根」古事記の大根の和歌と短歌  

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「つぎねふ山城女の木鍬持ち打ちし大根」古事記の大根の和歌と短歌

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「つぎねふ山城女の木鍬持ち打ちし大根根白の白腕枕かずけばこそ知らずとも言はめ」 古事記に大根の詠まれた歌が、今朝のテレビ番組で取り上げられました。

きょうの日めくり短歌は、「切り干し大根の日」にちなみ、古事記の和歌と、斎藤茂吉、石川啄木の大根の詠まれた短歌をご紹介します。

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古事記の大根の詠まれた和歌

 

今朝のことば検定で、大根の詠まれた古い歌として、古事記の下の歌が紹介されました。

つぎねふ 山城女の 木鍬(コクワ)持ち 打ちし大根(オオネ) 根白(ネジロ)の 白腕(シロタダムキ) 枕(マ)かずけばこそ 知らずとも言はめ

作者と出典

仁徳天皇 古事記(和銅5年 712年)下巻

仁徳天皇の和歌の意味

意味は

山城の女が木の鍬を持って、掘り起こした大根。その白い大根のような白い腕を枕にしていなかったのならば、私を知らないと言ってもいいだろう

解説

仁徳天皇が、山城の乙女たちが耕作した大根を掘り起こすのを見て詠んだ和歌。

白腕(シロタダムキ) の部分の「ただむき」というのは、肘から先のことで、白い大根から、共寝した婦人の白い腕を思い出したという内容です。

春の七草の「すずしろ=大根」は、今の大根のようには太くなく、その白さが美しいとされていたので、女性の腕にたとえられたのですね。

 

大根の詠まれた短歌

ここからは、他にも大根の詠まれた短歌をご紹介します。

なんといっても、思い出される大根の有名な歌と言えば、斎藤茂吉の下の歌です。

 

ゆふされば大根の葉にふる時雨いたく寂しく降りにけるかも

読み:ゆうされば だいこんのはに ふるしぐれ いたくさびしく ふりにけるかも

歌の意味と現代語訳

夕方になって大根の葉に降る時雨の、たいそう寂しく降ることだなあ

作者と出典

斎藤茂吉 『あらたま』大正3年 13 時雨

解説

歌の内容は、大根の畑に雨が降る、ただそれだけなのですが、作者のとらえ方である情感の加味された風景が、まるで一枚の絵のように描き出されています。

 

大根の別名大根(おおね)は、他の短歌にも使われています。

 

火炉(くわろ)に寄るわれら四人(よにん)に友が妻大根(おおね)の汁(しる)を配りめぐりぬ

作者:吉野秀雄

作者の妻とは死別したため、その友である女性が、作者と子どもたちに大根の汁を振舞ったという短歌です。

「大根(おおね)の汁(しる)」とはおそらくお味噌汁のことでしょう。

 

宗次郎におかねが泣きて口説居り大根の花白きゆふぐれ

読み:そうじろに おかねがなきて くどきおり だいこんのはな しろきゆうぐれ

作者と出典:

石川啄木 『一握の砂』

解説

啄木の歌の中でも、意外なストーリー性を持つ作品であるのは、人の名前の固有名詞が続くためでしょう。

意味は、酒飲みの夫である宗次郎に、妻のおかねがくどくど言う泣きながら、生活の窮状を訴えているところとされています。

背景はわからないながら、夫婦喧嘩の場面と取る向きが多いようですが、下句の「大根の花白きゆふぐれ」からは、むしろ作者のやさしいイメージがうかがえます。

おそらくは、啄木の家でも同じようなことは度々起きていたのではないでしょうか。

 

「すずしろ」の短歌

最後に、春の七草のひとつとしての「すずしろ」の出てくる短歌をご紹介します。

 

せりなずなごぎょうはこべらほとけのざ すずなすずしろこれぞ七種(ななくさ)

これは古い源氏物語の注釈書、1362年頃の『河海抄(かかいしょう)』 という書物に見られる和歌だそうです。

七草が並べられただけなのですが、その中でも、「すずなすずしろ」の「すず」の音が美しいですね。

 

きょうの日めくり短歌は、大根の詠まれた古事記の和歌と、斎藤茂吉、石川啄木の短歌をご紹介しました。

これまでの日めくり短歌一覧はこちらから→日めくり短歌




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