古今・新古今集

かへりこぬ昔をいまと思ひねの夢の枕ににほふたちばな 式子内親王

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かへりこぬ昔をいまと思ひねの夢の枕ににほふたちばな

式子内親王(しょくしないしんのう)の新古今和歌集に収録されている和歌の現代語訳と修辞法の解説、鑑賞を記します。

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かへりこぬ昔をいまと思ひねの夢の枕ににほふたちばな

読み:かえりこぬ むかしをいまと おもいねの ゆめのまくらに におうたちばな

作者と出典

式子内親王(しょくしないしんのう)

新古今和歌集 夏  240

「式子内親王」「藤原定家」の読み方 名前が2つになる有職読みとは

現代語訳と意味

再び帰っては来ない昔のことを、今のことのように思う夢のその枕辺に橘の花の香りが漂っています

語句と文法

・かへりこぬ…基本形は「帰り来(く)」の複合動詞。「来ぬ」は動詞の基本形「来(く)」の連用形に、否定の助動詞「ぬ」

・昔を今と…「昔のことを今のように」の意味。助詞に注意

・思い寝…辞書の定義では「ものを思いながら、特に、恋しい人を思いながら眠ること」。

・夢の枕…「夢枕」 辞書の定義では「夢を見た時の枕、または、枕もと。夢の枕。」のことで、ここでは、「枕元」を指す。

・たちばな…植物の「橘」。柑橘系の良い香りの花が咲く。橘の花は、他にも多くの歌に詠まれている

句切れと修辞

・句切れなし

・体言止め

・本歌取り 以下に解説

解説

後白河天皇の娘であった式子内親王(しょくしないしんのう、または、「しきしないしんのう」ともいう)が詠んだ夢枕の歌。

塚本邦雄の解説だと、一首の意味は

再び帰っては来ない「過去」をなんとかして現在に取り返すすべはないものか。そう思いつつ寝た。過ぎた日の思い出に、懐旧の情に溺れてうつつもない気分であった。
その夢。夢ともうつつともつかぬ枕辺に昔の人の袖の香のするという橘の花の香りが、馥郁と香ってくる 。

 

「伊勢物語」の和歌の本歌取り

本歌は、橘の花を詠んだ 「さつき待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」で、昔の人を「夢」に広げ、いっそう夢幻の雰囲気を強めている。

 

本歌の特徴と作者の心情

昔の恋人を含めて過去を懐旧するというのが作者の心情であり主題であるが、一首はそれ以上に、夢と現複雑な内容を、ち密な構成によって構築されているという点で優れている。

第三句「思い寝」

「思い寝」が、現在の「思い」と夢につながる「寝」を、歌の中央である三句に置いたことで、一首の夢と現を繋いでおり、同時に作者が夢の中に過去を見ていることが表現されている。

歌の調べの見事さ

さらにこの歌の特徴は、調べのみごとさにある。

塚本邦雄は

どこにも切れ目のない纏綿たる無縫の天衣さながらの調べ

と形容し、歌の言葉運びの滑らかさを絶賛している。

この、無理を全く感じさせない調べそれ自身が、過去と今、夢とうつつの境目のおぼろさをそのまま体現する物ともなっている。

そして、その夢を見せているのが、橘の花の香であるということから、昔の記憶がどのようなものかが象徴的に表されながら、一首の絵も言えぬさわやかな読後感を残している。

式子内親王の歌人解説

式子内親王(しょくしないしんのう、または、「しきしないしんのう」

久安5年(1149年) - 建仁元年1月25日(1201年3月1日)

日本の皇族。賀茂斎院。新三十六歌仙、女房三十六歌仙の一人。後白河天皇の第3皇女。

和歌を藤原俊成に学び,憂愁に満ち,情熱を内に秘めた気品の高い作品を残した。

百人一首に採られた、以下の歌がもっとも有名。

玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする/式子内親王百人一首解説








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