万葉集

古に恋ふらむ鳥は霍公鳥けだしや鳴きしわが念へる如 額田王

古に恋ふらむ鳥は霍公鳥けだしや鳴きしわが念へる如 額田王と弓削皇子の問答歌として知られているものです。

額田王の返歌を解説します。

弓削皇子と額田王の問答歌

万葉集,和歌,解説

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弓削皇子が吉野に行幸した持統天皇と共に吉野入りした時に、京の都にいた額田王との間でやり取りした3首の歌です。

万葉集2巻の冒頭に問答歌として採録されているもので、一連のやり取りは下の通りです。

弓削皇子:いにしへに恋(こ)ふる鳥かも弓絃葉(ゆづるは)の御井(みゐ)の上より鳴き渡り行く

額田王:古(いにしへ)に恋ふらむ鳥は霍公鳥(ほととぎす)けだしや鳴きしわが念(おも)へる如(ごと)

弓削皇子:み吉野の玉(たま)松が枝(え)ははしきかも君が御言(みこと)を持ちて通はく

この記事では、2首目の額田王の歌を解説します。

一首目の解説は下の記事に

いにしへに恋ふる鳥かも弓絃葉の御井の上より鳴き渡りゆく 弓削皇子と額田王問答歌

 

 

 

古に恋ふらむ鳥は霍公鳥けだしや鳴きしわが念へる如

読み:いにしえに こうらんとりは ほととぎす けだしやなきし わがおもえるごと

作者と出典

額田王 万葉集巻2 112

意味:

昔を恋しがって鳴くという鳥はほととぎすなのでしょうか。おそらく、私が昔のことを懐かしんでいるように

原文

古尓 戀良武鳥者 霍公鳥 盖哉鳴之 吾念流碁騰

句切れと表現技法

・3句切れ

・擬人法

語句と品詞分解

・いにしえ…漢字は「古」。昔のこと。ここでは天武天皇の世を指す

・霍公鳥…ほととぎす 中国の故事にある鳥

・けだしや…「や」は疑問の終助詞 「けだし」は「もしかすると。あるいは」の意味

 

解説

弓削皇子が吉野に行ったときに、京にいる額田王に送った歌が前にある、その返歌がこの歌。

 

ホトトギスと中国の故事

鳥はこの後の額田王の返歌でホトトギスとしている。その背景には中国の故事があるとされている。

中国の故事に蜀の望帝が退位後に復位しようとしたが、死んで叶わずホトトギスとなった。

そのため、その鳴き声は「不如帰(帰るにしかず)」と鳴いているという伝説が知られていた。

弓削皇子の最初の歌では、上句「いにしへに恋ふる鳥かも」では鳥の名前は明らかではなく、弓削皇子の

昔を思って鳴く鳥がいるのですが、この鳥が何かご存じでしょうね

という額田王への問いかけが含まれていると考えられる。

額田王は続く返歌で「古に恋ふらむ鳥は霍公鳥」として、これに応えている。

この一連の歌が問答歌とされる主要な部分である。

」とは天武天皇の世

天武天皇は弓削皇子の父で、「」とは天武天皇の世のことを指している。

この時最初の歌を贈った弓削皇子は、持統天皇の行幸に沿って吉野に行っている折であったが、かつての天武天皇の行幸に供をしたことを振り返っているというのが主流の説となっている。

(注:他に壬申の乱と吉野とのつながりの思い出を詠んだという説もある)

天武天皇は、弓削皇子からは父であり、額田王のかつての夫でもあった。

天武天皇が亡くなり持統天皇の時代となって、弓削皇子は皇位にはつかず、額田王は既に60歳代となったその上での「古」なのである。

額田王の返歌の意味

「古に恋ふる鳥かも」の鳥は、額田の王は「恋ふらむ鳥は」と弓削皇子の歌の句を繰り返して霍公鳥「ホトトギス」と規定して中国の故事を踏まえることで、皇子への共感を示す。

皇子は持統天皇の代となって父天武天皇の盛りである「いにしへ」を恋う鳥に自分を重ねているが、額田王もまた「わが念へる如」とホトトギスを自分自身とすることで、弓削皇子の歌の問いかけにこたえる形となっている。

※額田王の他の問答歌

あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る 額田王の問答歌

額田王の他の和歌

熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな

君待つと我が恋ひ居れば我が宿の簾動かし秋の風吹く

三輪山をしかも隠すか雲だにも心あらなも隠さふべしや

額田王について

『万葉集』初期の女流歌人。生没年不詳
7世紀後期の女流万葉歌人『日本書紀』に鏡王の娘とあるが、鏡王については不明。同じ万葉女流歌人で藤原鎌足の室となった鏡王女 (かがみのおおきみ) の妹とする説もある。大海人皇子 (天武天皇) に愛されて十市皇女 (とおちのひめみこ) を産んだが、のちに天智天皇の後宮に入ったらしい。この天智天皇、大海人皇子兄弟の不仲、前者の子大友皇子と大海人皇子との争い、壬申の乱などには彼女の影響が考えられる。―ブリタニカ百科事典

 

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