冬菊のまとふはおのがひかりのみ
水原秋桜子の教科書掲載の俳句、作者が感動したところや心情を解説、この句の感想も記します。
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読み:ふゆぎくの まとうはおのが ひかりのみ
作者と出典:
水原秋桜子 みずはらしゅうおうし 句集『霜林』
現代語訳
冬の菊はただみずからの放つ光だけをまとって咲いている
句切れと切れ字
句切れなし
切れ字なし
季語
季語は「冬菊」 冬の季語
形式
有季定型
解説
水原秋桜子の教科書掲載の俳句。
立ち枯れが目立つ冬の季節に咲く菊の美しさを表している。
冬菊とは
他の花は冬には咲くことはないが、菊は野辺においても、冬に花開く数少ない花である。
この句は、そのような数少ない稀な花に出逢って詠まれた。
「おのが光のみ」の意味と解説
「光」とはいっても、実際に光が当たっていたわけでも、菊が光るわけでもない。
秋を通り越して初冬の寂しい季節の風景中で、一人残ったように咲いている菊の花は地味ながら美しい。
内面からにじみ出るような花の美しさ、その美しさを形容するのが、「おのが光」である。
この部分は、「光のような」の暗喩ととらえることもできる。
「まとう」の擬人法
「まとうは」の「は」は、「まとうものは」の意味であって、「まとう」は、「身につける」の意味の動詞。
普通は人が、着物などを着る時に「晴着をまとう」などとして用いるが、ここではそれを「冬菊がまとう」として擬人法を用いている。
この俳句の主題
菊の花の美しさは、実際には作者が感じる美しさであるのだが、作者は、それを菊の自律的な働きであると擬人法を用いて強調するため、「おのが光をまとう」としているところが、この句でもっとも注目すべき主題である。
作者の思いと心情
上に述べた擬人法の表現からもわかるように、作者は菊の花を、ただの花としてだけではなく、「人」として、自分と対等な地位にまで高めて見ていることがわかる。
厳しさの予想される初冬の季節に、花に心を寄せる作者は、孤独で寄る辺なさを知る人物であることが思われる。
私自身の感想
野菊、とりわけ冬菊は地味な花で、立ち枯れた雑草の中に咲いていると何とも思わず見過ごすものですが、作者はそのような小さなものに心を寄せて、その美しさを見出しています。
菊の花の美しさを「おのが光」、また擬人法で花の自律性を強調するところが、作者独特の見方であり、この句の良いところだと思います。
水原秋桜子の他の俳句
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教科書の俳句一覧
各俳句の解説はリンク先の記事で読めます。
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冬菊のまとふはおのがひかりのみ 水原秋桜子
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