教科書の短歌

病める児はハモニカを吹き夜に入りぬもろこし畑の黄なる月の出 北原白秋

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病める児はハモニカを吹き夜に入りぬ もろこし畑の黄なる月の出

北原白秋の代表短歌作品の現代語訳と句切れ、表現技法について記し ます。

病める児はハモニカを吹き夜に入りぬ もろこし畑の黄なる月の出の解説

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読み:やめるこは はもにかをふき よにいりぬ もろこしはたの きなるつきので

作者と出典

北原白秋 『桐の花』

現代語訳と意味

病気の子どもがハーモニカを吹いているとあたりは夜になったる。トウモロコシの畑に黄色の月が出ているよ。

語句の意味と文法解説

・病める子は…基本形「病む」の連用形+り存続の助動詞

・ハモニカ…ハーモニカと同じ

・入りぬ…「ぬ」は完了の助動詞 「…した」

・もろこし…とうもろこしのこと。古くは、中国の国名を表した言葉「唐土(もろこし)に由来する

・黄なる…「黄+断定の助動詞「なり」の連体形

句切れと修辞・表現技法

・3句切れ

・体言止め

 

解説と鑑賞

北原白秋の処女歌集『桐の花』の 「夏 郷里柳河に帰りてうたへる歌」の中の一首。

柳河は北原白秋の福岡の故郷でそこで接した情景を詠んだものと思われる。

「病める児」とのメランコリックな始まりで物語性があり、情景を詩的で絵画的に提示することで哀感のあふれる一首となっている。

一首の背景

初期の歌を集めた『桐の花』は、白秋自ら「銀笛哀慕調」と記した通り、詩的な傾向の作品が多くみられる。

この一連を取り出すと

Gonshan, Gonshan, 何処へいた、
きのふ札所の巡礼に

馬鈴薯の花咲き穂麦あからみぬあひびきのごと岡をのぼれば

黒鶫の図

黒鶫野辺にさへづり唐辛子いまし花さく君はいづこに

燕つばさコツキリコ、畦道あぜみちやギリコ

病める児はハモニカを吹き夜に入りぬもろこし畑ばたの黄なる月の出

Gonshanの読みは「ごんしゃん」で北原白秋の故郷福岡県柳河における方言で「良家のお嬢さん」との意味がある。

詩文のような音の遊びを含む言葉の間に歌が挟まれており、白秋の自由な想念を表している。

いずれも色彩にあふれた歌であるがこの歌は中でも、絵画的な趣があるといえる。

 

一首の構成

31文字に多様な要素が見られるのが一首の特徴である。

「病める児」

「病める児」が「子」ではないのはおそらく小さい子どもなのであろう。

「ハモニカ」のカタカナは、当時としてはハイカラな言葉であり、いささかの異国情緒を加味している。

歌の中の時間性

時刻は「夜に入る」頃なので、夏ならば6時から7時頃の時間を指す。

「ハモニカを吹き夜に入りぬ」には、「子どもがハーモニカを吹いているうちに夜になった」との時間経過を見て取れる。

ハーモニカの音がしたのが一瞬ではなく、病気の子どもが夕方から夜にかけてのしばらくの間楽器を吹いていたと相続できるだろう。

空間の移動の工夫

歌には1点から広い情景へと、視点と空間の移動がある。

要素場所
病める児家の中
ハモニカの音家の外へ
夜に入りぬ屋外の風景
もろこし畑さらに広い空間
月の出大空の高いところ

狭いところから広いところへ情景を次第に広げている。

この視点の移動は順番に繰り出されるため無理なく効果を上げることができているといえる。

視覚と聴覚

聴覚に訴えるものが「ハモニカ」の音であり、視覚的に印象の強いのは「黄なる月の出」。

月の色を「黄なる」とすることで印象を強めている。

 

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草わかば色鉛筆の赤き粉のちるがいとしく寝て削るなり

昼ながら幽かに光る蛍一つ孟宗の藪を出でて消えたり

時計の針IとIとに来るときするどく君をおもひつめにき 

寂しさに海を覗けばあはれあはれ章魚(たこ)逃げてゆく真昼の光

大きなる手があらはれて昼深し上から卵をつかみけるかも

北原白秋について

北原白秋 1885-1942 詩人・歌人。名は隆吉。福岡県柳川市生まれ。早稲田大学中退。

象徴的あるいは心象的手法で、新鮮な感覚情緒をのべ、また多くの童謡を作った。

晩年は眼疾で失明したが、病を得てからも歌作や選歌を続けた。歌集「桐の花」「雲母集」他。

―出典:広辞苑他







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