衾道を引手の山に妹を置きて山道を行けば生けりともなし
柿本人麻呂作の万葉集の和歌の代表作品の、現代語訳、句切れや語句、品詞分解を解説、鑑賞します。
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衾道を引手の山に妹を置きて山道を行けば生けりともなし
現代語の読み:ふすまじを ひきでのやまに いもをおきて やまじをゆけば いけりともなし
作者と出典
柿本人麻呂 万葉集 215
語句と文法の解説
- 衾道を…読みは「ふすまじを」 枕詞との説がある
- 引きでの山に…「引きで山」という名称の名前があったと思われるが確認されていない
- 置きて…この歌では「葬って」の意味
生けりともなし」の品詞分解
- 生けり…基本形「生く」に「けり」をつけた連用形
- 「と」「も」は助詞。「なし」は打ち消し
句切れと修辞について
- 句切れなし
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解説と鑑賞
柿本人麻呂が妻に死なれたときに詠んだ長歌の後の短歌2首の2首目。
長歌の内容からは、妻が里にあって急に亡くなり、人麻呂はその知らせを伝達で受け取ったことがわかる。
当時は、焼かないで遺体を放置することもあったが、その後、山に妻の遺体を火葬にしたのちに灰を葬った。
その妻を「山に残した」として、置いて帰ってくる、その時の気持ちを、「とても生きた心地がしない」と表している。
一連の最初の2首は距離感のある表現であったが、この葬りの歌は、強い慟哭を表している。
柿本人麻呂について
柿本人麻呂 (かきのもとのひとまろ)
飛鳥時代の歌人。生没年未詳。7世紀後半、持統天皇・文武天皇の両天皇に仕え、官位は低かったが宮廷詩人として活躍したと考えられる。日並皇子、高市皇子の舎人(とねり)ともいう。
「万葉集」に長歌16,短歌63首のほか「人麻呂歌集に出づ」として約370首の歌があるが、人麻呂作ではないものが含まれているものもある。長歌、短歌いずれにもすぐれた歌人として、紀貫之も古今集の仮名序にも取り上げられている。古来歌聖として仰がれている。
柿本人麻呂の代表作
万葉集解説のベストセラー
万葉集解説の本で、一番売れているのが、斎藤茂吉の「万葉秀歌」です。有名な歌、すぐれた歌の解説がコンパクトに記されています。