冬の恋愛の短歌  現代短歌と万葉集の雪の和歌【日めくり短歌】  

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冬の恋愛の短歌  現代短歌と万葉集の雪の和歌【日めくり短歌】

2021年1月20日

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冬の恋愛の短歌、今日は大寒と言われる日、一年で最も寒い頃ですが、心があたたまるような恋愛の短歌をご紹介します。

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「大寒」とは

「大寒」というのは、二十四節気の1つ。1年のうちで最も寒さが厳しくなるころをいいます。

実際にも過去には、この頃の気温が最低気温となる年が多いのです。

きょうの日めくり短歌は、寒さに負けない、冬の恋愛の短歌をご紹介します。

 

冬の恋愛 現代短歌編

たっぷりと君に抱かれているようなグリンのセーター着て冬になる

作者:俵万智

寒い冬になるほど、恋人の暖かさが増すようです。

 

「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

作者:俵万智

教科書掲載の有名な歌。

恋愛の歌とは限りませんが、やはり、心の通じ合った男性とのやり取りが思い浮かびます。

この歌の解説記事:
「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ 俵万智 表現技法

 

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ

作者:穂村弘

主語は誰とも明示されていないわけですが、恋人だろうと思えるのは、相手の行動をつぶさに写し取っているから。

そして、「雪のことかよ」という語尾のそっけなさが男性の照れに思えるからです。

この歌の解説記事:
穂村弘の短歌代表作と作品の特徴 ニューウェーブ短歌の旗手

 

泣くおまえ抱けば髪に降る雪のこんこんと我が腕に眠れ

作者:佐佐木幸綱『夏の鏡』

「男歌」の代表的な歌人と言われる作者。「こんこんと」のやさしい擬音がここでは力強い響きとなって一首を支えています。

雪の短歌

 

両手(もろて)にて君冷えたる頤(おとがい)を 包みていしは冬の夕駅

作者:道浦母都子(みちうらもとこ)

頤というのは、あごのことです。「冷えたる」は具体的な体感を伝えるとともに、二人の間柄もわかります。

別れ際の駅で見つめ合う二人には、寒さは障壁にはならないのでしょう。

 

冬の恋愛の短歌 近代短歌編

昭和前後の短歌からもいくつか引きます。

君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ

作者:北原白秋『桐の花』

冬の恋愛の代表かのようになっている、白秋の短歌ですが、この「君」は人妻なのです。

帰っていく先も、なんと隣の家というシチュエーションなのです。

この歌の解説記事:
君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ/北原白秋

北原白秋の短歌代表作品 人妻との恋愛事件で官能から法悦へ

 

雪の夜の紅(あか)きゐろりにすり寄りつ人妻とわれと何とすべけむ

これも白秋の歌。

「なんとすべけむ」の「けむ」は過去の推量で、「どうするべきであったのだろう」ということ。

悔いるでもなく、しかし、やはり、そのように振り返らざるを得ない関係です。

 

しんしんと雪ふりし夜にその指(ゆび)のあな冷(つめ)たよと言ひて寄りしか

作者:斎藤茂吉

歌集『赤光』の「おひろ」より。

雪の冷たい夜の恋人との戯れのような会話を後に回顧するところです。

「おひろ」44首は、一部は官能的な一連ですが、きわめて周到に歌われているとの評価があります。

この歌の解説記事:
斎藤茂吉の恋愛相手「おひろ」44首短歌作品連作 別れの理由

 

冬の恋愛の短歌 万葉集編

万葉集の冬の恋愛の短歌は、雪が詠まれたものが多いのです。

一つには「恋心で身が細る」というのに「雪が消える」という表現があるためです。

 

一目見し人に恋ふらく天霧(あまぎらし)零(ふ)り来る雪の消(け)ぬべく念ほゆ

作者と出典:
万葉集巻12・2340

現代語訳:

一目見た人に恋をすると、空を曇らせて降ってくる雪が消え入りそうに思われるのだ

 

降る雪の空に消ぬべく恋ふれども逢ふよしなしに月ぞ経にける

作者と出典: 作者不詳 10.2333

現代語訳:

降る雪が空に消えてしまうように、わが身が消えるほど恋しく思い続けているのだが、逢う手立てがなく、日月が立ってしまった

 

わが背子と二人見ませば幾許(いくばく)かこの降る雪の嬉しからまし

作者:光明皇后

現代語訳:

夫と共にこの雪を見たら、どんなにか雪も喜ばしくうれしいことであろうに

この歌の解説記事:
わが背子と二人見ませば幾許かこの降る雪の嬉しからまし『万葉集』光明皇后

 

妹が家に雪かも降ると見るまでに幾許(ここだも)まがふ梅の花かも

作者と出典:柿本人麻呂 5.844

現代語訳:

愛しい人の家に雪が降っているのかと思うまでに、梅の花が散っている

 

道に逢ひて笑まししからに降る雪の消なば消ぬがに恋ふといふ我妹

作者と出典:聖武天皇 巻4.624

現代語訳:

道で逢って微笑みかけただけで降る雪が消えてしまうように恋しいと言う愛しい人よ

 

聖武天皇作。「妹」は妻のことなので、おそらく若妻になったばかりの相手でしょうか。

うれしい妻の言葉を書き留めたのは、表現こそ違え、現代の短歌とも心根に変わりはありません。

 

きょう大寒の日も、寒さに縮むことなく、のびのびと恋の歌を作ってみませんか。

きょうの日めくり短歌は、冬の恋愛の短歌をご紹介しました。

それではまた!

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