信濃なる千曲の川の細石も君し踏みてば玉と拾はむ 万葉集の作者不詳のこの歌は、恋愛の気持ちを詠っています。
万葉集でよく知られる相聞の和歌の現代語訳、解説と鑑賞を記します。
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信濃なる千曲の川の細石も君し踏みてば玉と拾はむ
読み しなぬなる ちぐまのかわの さざれしも きみしふみてば たまとひろわん
作者
不明 万葉集 14巻 3400
現代語訳
信濃の千曲の川の小石でも 君が踏んだら玉として拾おう
句切れと修辞
- 句切れなし
語と文法
- 信濃なる・・・信濃は今の長野県に当たる「なる」は「…にある」の意味。基本形「なり」
- 千曲の川の・・・信濃川の長野県域での呼び名
- 細石・・・「さざれいし」小さな石の別称。細かい石
- 君し・・・「し」は上の語を強調する意を表す副助詞
- 踏みてば・・・仮定法
- 玉・・・宝玉のこと
- 「と」・・・「とみなして」の意味
- 拾わむ・・・意志を表す助動詞「む」
「君し踏みてば」の品詞分解
- 「し」は強意「君」を強調する。「ほかならぬ君の踏んだものであれば」
- 「て」は完了の助動詞「つ」の未然形。事実の過程的表現
- 「ば」は仮定の接続助詞
解説と鑑賞
東歌の相聞歌十首のうちの一首。
4首ある信濃国の歌の3首目。
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一首の主題
恋人のゆかりと思えば、河原の石さえも懐かしく愛しく思うという意味で、恋愛の相手への気持ちを表す。
「君」は男性に対する敬称なので、読み手である作者は女性であろう。
東歌と方言
「拾う」の当時の標準語での発音は「ひりふ」で、東国での発音は訛りがあって、訛りの方が「ひろう」の発音であった。
「細石」は本来「さざれいし」だが、「さざれし」とするのも、方言の一種と考えられる。
信濃国の東歌
信濃国の東歌にはこの歌の前に
の有名な歌がある。