後拾遺和歌集は八代集の一つ、4番目にあたる勅撰和歌集です。
後拾遺和歌集から有名な和歌とや教科書に掲載された作品を現代語訳付き、作者別に一覧にまとめます。
後拾遺和歌集とは
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後拾遺和歌集は、1086年に成立した八代集の中4番目にあたる歌集です。
八代集は平安時代中期から鎌倉時代初期にかけて撰集された8つの勅撰和歌集の総称をいいます。
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八代集の順番
名称 | 読み方 | 天皇 | 選者 | 成立年 | |
1 | 古今和歌集 | こきんわかしゅう | 醍醐天皇 | 紀貫之他 | 905年 |
2 | 後撰和歌集 | ごせんわかしゅう | 村上天皇 | 清原元輔 | 951年以降 |
3 | 拾遺和歌集 | しゅういわかしゅう | 花山天皇 | 花山天皇他 | 1006年 |
4 | 後拾遺和歌集 | ごしゅういわかしゅう | 白河天皇 | 藤原道俊 | 1086年 |
5 | 金葉和歌集 | きんようわかしゅう | 白河院 | 源俊頼 | 1124年 |
6 | 詞花和歌集 | しいかわかしゅう | 崇徳院 | 藤原顕輔 | 1151年 |
7 | 千載和歌集 | せんざいわかしゅう | 後白河院 | 藤原俊成 | 1188年 |
8 | 新古今和歌集 | しんこきんわかしゅう | 後鳥羽院 | 藤原定家他 | 1205 |
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後拾遺和歌集の読み
読み方は「ごしゅうい」和歌集です。
拾遺の意味は、「漏れ落ちている事柄・作品を拾い補うこと」であり、古今、後撰和歌集に入手しなかった、前代の勅撰集に漏れた秀歌を拾い集めるという意味でまとめられました。
「拾遺和歌集」に続くという意味で「後拾遺」と名づけられました。
後拾遺和歌集の撰者
白河天皇の命により、藤原道俊が編纂、選にあたりました。
藤原道俊は、平安時代の歌人ですが、それほど名が高かったわけでなく、撰者となった理由や次第は詳しくはわかっていません。
拾遺和歌集と天皇
和歌集の作成を命じたのは白河天皇とされています。
白河天皇はその後白河院となってから、源俊頼に命じて金葉和歌集も成立させました。
天皇の命によって作成された和歌集のことは勅撰和歌集といわれます。
後拾遺和歌集は平安後期の勅撰和歌集です。
後拾遺和歌集の成立と時代
後拾遺和歌集が成立したのは、応徳三年十月(1087年11月)です。
世紀は11世紀後半。
時代は平安時代後期にあたります。
後拾遺和歌集の特徴
後拾遺和歌集の歌の数は1200首。
和泉式部や清少納言などの女流歌人の歌が多いのが特徴です。
後拾遺和歌集の代表歌人
- 和泉式部(67首)
- 相模(39首)
- 赤染衛門(32首)
- 能因法師(31首)
- 伊勢大輔(26首)
が代表的な歌人です。
後拾遺和歌集の作品と現代語訳
後拾遺和歌集の和歌で主に教科書に取り上げられたり、有名でよく知られている作品は以下の作品です。
物おもへば沢の蛍も我が身よりあくがれ出づる魂かとぞみる
現代語の読み:ものおもえば さわのほたるも わがみより あくがれいづる たまかとぞみる
作者と出典
作者:和泉式部(いずみしきぶ)
出典:後拾遺集 雑六
現代語訳:
物思いをしていると、沢を飛び交っている蛍の火も、自分の身から離れ、さまよい出た魂ではないかと見えたことだ。
解説記事:
物おもへば沢の蛍も我が身よりあくがれ出づる魂かとぞみる 和泉式部
黒髪の乱れも知らずうち臥せばまづかきやりし人ぞ恋しき
現代語の読み:くろかみの みだれもしらず うちふせば まずかきやりし ひとぞこいしき
作者と出典
作者:和泉式部(いずみしきぶ)
出典:後拾遺和歌集恋三 755
現代語訳:
黒髪の乱れるのもかまわずにこうして横たわっていると、この髪を手でかきあげた人が恋しく思われる
解説記事:
黒髪の乱れも知らずうち臥せばまづかきやりし人ぞ恋しき 和泉式部
あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな
現代語の読み:あらざらん このよのほかの おもいでに いまひとたびの おうこともがな
作者と出典
作者:和泉式部(いずみしきぶ)
出典:百人一首56番 後拾遺和歌集
現代語訳:
もうすぐ死んでしまうこの世、あの世へ行く思い出に 今一度お会いしたいものです
解説記事:
あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな 和泉式部
都をば霞とともに立ちしかど秋風ぞ吹く白河の関
読み:みやこをば かすみとともに たちしかど あきかぜぞふく しらかわのせき
作者と出典
能因法師 後拾遺集 羇旅
現代語訳
都を春の霞が立つとともに出発したが 早くも秋風の吹く季節となってしまった、白河の関に着く頃には
解説記事:
都をば霞とともに立ちしかど秋風ぞ吹く白河の関 能因法師
心あらむ人に見せばや津の国の難波わたりの春のけしきを
読み:こころあらん ひとにみせばや つのくにの なにわわたりの はるのけしきを
作者と出典
能因法師 後拾遺集43
現代語訳
情趣を理解するような人に見せたいものだ。 この津の国の難波あたりの素晴しい春の景色を
意訳:あなたのようなもののあわれを深く感じる人だからこそお誘いしたい。難波の津の国の景色を一度見においでなさい
解説記事:
心あらむ人に見せばや津の国の難波わたりの春のけしきを 能因法師
嵐吹くみ室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり の意味
読み:あらしふく みむろのやまの もみじばは たつたのかわの にしきなりけり
作者と出典
能因法師
百人一首 69
後拾遺集(巻5・秋下・366)
現代語訳
嵐が吹き荒れて散る三室の山の紅葉は川を染める錦であるよ
解説記事:
嵐吹くみ室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり 能因法師
※能因法師の他の歌は
能因法師の代表作和歌作品
かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじなもゆる思ひを
現代語での読み:かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもひを
作者と出典
藤原実方朝臣
百人一首51 後拾遺和歌集
現代語訳と意味
声ほど言えないので、あなたはご存じないでしょう、伊吹山のさしも草のように燃える私の思いを。
解説記事:
かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじなもゆる思ひを 百人一首51
君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな
現代語での読み: きみがため おしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもいけるかな
作者と出典
藤原義孝
百人一首50 後拾遺和歌集
現代語訳と意味
あなたに逢えるなら命も惜しくないと思っていたこの命ですが、お逢いできた今は長く生きたいと思うのですよ
解説記事:
君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな 百人一首50
夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂の関はゆるさじ
読み:よをこめて とりのそらねは はかるとも よにあうさかの せきはゆるさじ
作者と出典
作者:清少納言 (せいしょうなごん)
出典:百人一首 62 後拾遺集
現代語訳:
まだ夜が明けないうちに、鶏の鳴き声をまねてだまそうとしても、逢坂の関が開くことはないですよ
解説記事:
夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂の関はゆるさじ 百人一首62番
見わたせば波のしがらみかけてけり卯の花さける玉川の里
読み:みわたせばなみのしがらみ かけてけり うのはなさける たまがわのさと
作者と出典
相模(さがみ)
後拾遺集175
現代語訳
見渡すといちめん白波の立つしがらみがかけ渡してあるように見える。卯の花が咲くこの玉川の里は
やすらはで 寝なましものを さ夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな
作者と出典
作者:赤染衛門
百人一首59 巻12・恋2・680
現代語訳
もしあなたが来ないことがわかっていたら、寝てしまってたでしょう。待っていたので西の空に沈んでいく月までも見てしまいました
いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな
作者と出典
作者:伊勢大輔 いせのだいふ
出典:百人一首61 後拾遺集 巻五 秋下 366
現代語訳
古代からある奈良の都の八重桜はきょうもいっそう色美しく咲きほこっている